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第4話 素質
しおりを挟むグローリア王国では高位貴族ほど魔力総量が多く、アンドレアにはその頂点に立つ王家の血が入っている。魔法の素質の高さは、誕生してすぐに行われた魔術師による簡易検査でも分かっていた。
その為、物心がつく頃には既に魔力制御の教育が始まっており、誤って魔力を暴発させないよう、慎重に無理なく鍛えあげられていったのだ。
教師陣を通じて、日に日に魔力の質と量が上昇を続けていることは公爵夫妻にも報告されている。
普通の鑑定水晶では確実に壊れることが分かっているので、正確な魔力値を測るためにも、アーティファクトの鑑定水晶を持つ大神殿に来るしかなかったのである。
使用者の魔力を感知し、属性によって放つ色を変えるこの水晶は、遥か昔、高度な技術で作られたという強力な魔道具だ。
古代には今よりも大気中に魔素が満ち溢れていて、力のある素材や優秀な魔法使いも多く、強力な魔道具を作れる下地があった。
この大きさの鑑定水晶を作成するには術式が難しく、現代での再現はほぼ不可能だと言われている。
国に一つしかない、稀少で高価なアーティファクトの鑑定水晶が設置されている、鑑定の間。
そこへ両親と共に赴いたアンドレアは、設置されている水晶玉に近づく。
「神々の祝福」を受ける運命の瞬間だが、公爵令嬢として育てられてきたアンドレアだ。特に気負うこともなかった。
そのままソッと手を伸ばし、事前に教えられた通りゆっくりと魔力を流し始める。
こうして水晶に魔力を注ぐことで、魔力総量と適性属性が判明するのだ。濃く色づくほど魔力値が高く、重複属性持ちは複数の色に染まる。
アンドレアの場合、魔力総量の多さからすぐに反応がでた。
パアァァァッーー!!
彼女の魔力を感知した途端、水晶玉は眩いばかりに輝きだす。
部屋中に、溢れんばかりに放たれたその光……。
――色は、白一色。
これは聖属性魔法を示す色。一色のみということは他の属性魔法は使えないが、その分、聖魔法の純度が高いことを意味している……。
「おおっ、素晴らしい!」
「何という光量の多さ……。これ程純粋な能力の持ち主など、近年なかったのではないかっ?」
「その上、たった五歳でこれ程の魔力量をお持ちとは……信じられないっ」
「これはもしや、聖女様のご誕生ではないか!?」
「さすが、王家に近しい血筋のご令嬢じゃ。何とめでたい!」
授かることが少なく稀少な聖魔法の持ち主の上、聖女クラスの素質まであることが判明し、それまで固唾を呑んで成り行きを見守っていた周囲の神官達が沸き立った。
聖女となって守護聖獣に仕える役目には、何故かいつもアンドレアのように王家の血を濃く引く令嬢が選ばれる。その為、今回の鑑定結果に立ち会った彼らは、次代は当然、彼女が聖女として望まれるだろうと確信したのである。
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