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第一章 辺境の町

第141話 女将さんの新メニュー

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 少し待って出てきたのは、先程採ってきたばかりの茸と香草、それにお肉を細かくして入れた少量のスープに、パンの実を潰して混ぜ込み、リゾット風にした一品。それに、昨日の香草塩をお好みで振りかけていただくらしい。

「どうだい? 朝食の新メニューにしようかと思うんだけど。まずはそのままで、その後、香草塩を使って味の感想を教えてくれるかい?」

「「はいっ。では、いただきます!」」

 木のスプーンで掬って一口、口に含む。

 フワッとほのかに甘みが香り、食べ進めるとじんわりと優しい香草の風味が広がっていく。

 噛めば噛むほど旨味の増す茸といい、美味しくて無意識に食べる速度が速くなった。リノには及ばないものの、たっぷりあったリゾットをあっという間に完食してしまう。この間、お互いに無言で……。

 女将さんはそんな私たちを見てニコニコしていた。

「あ、香草塩を振りかけるの忘れてた……」

「――はっ!? しまったですね。私もすっかり食べるのに夢中になっちゃってて食べきっちゃいましたっ」

「あはははっ。いいよいいよ、それだけ美味しく食べてくれたってことだろ? 今、おかわりを持ってくるからね。それで確かめてくれたらいいさ!」

「すみません、女将さん」

「お願いします」

「あいよっ」



 ということで、もう一度、二人分をよそってきてくれた。今度こそ香草塩を振って食べてみる。

「おおっ、これはっ!? 元から美味しかったのに、更にめちゃくちゃ美味しくなりましたよ、女将さん! 特に茸がっ。茸ってこんなに美味しかったです? なんか旨味が増してるというか。いくらでも食べれそうです!」

「この香ばしさがいいですね。それにリノの言う通り、香草塩を使った方のが茸の風味がより引き立つと言うか……?」

「うんうんっ、そうかいそうかい。ありがとね! 『味覚強化』スキル持ちの二人からお褒めの言葉を貰ったんだ、新メニューは成功だね。どうだい、まだおかわりはあるけど、食べるかい?」

「いただきます!」

「あいよっ、リノちゃんの分だけでいいんだね?」

「ええ、十分いだだきました。ありがとうございます」

 私はもう満腹なんだけど、リノはそれから三回ほどおかわりをし、お鍋が空っぽになるまできっちりと食べきり、一時的にでもお腹が落ち着いて満足そうだった。ヨカッタネ。






 女将さんの美味しい料理を食べ、安全な宿屋の部屋で正午まで休憩して英気を養うことにした。

「金茶香茸、見つかりますかね?」

「どうだろ? 私も偶然、一度だけ見つけられたんだけど。群生する茸だから、一ヶ所見つかれば最低でも十個くらいまとめて手に入るはず。女将さんに納品する香草塩の分くらいの在庫はあっても、私達用のが足りないから欲しいなぁ」

「ですよね。買うと高いですし、頑張って探しましょう!」

「うん。でも、今日は二回目だし知らない内に疲労が溜まっているかもしれないから。無理せずいこうね」

「そうしましょう。安全第一に、ですから!」

 ということで、リノの体力と私の魔力が回復するのを待って再度、北の森へと出発することになった。




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