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第一章 辺境の町

第121話 宿屋で料理 後編

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 出来上がった香草塩を味見したら、予想以上に香り高くいいお味になってたので、今回使ってみることにした。

 前に狩ったウォークバードを調理した時には間に合わなくて使えなかったから、これが初挑戦になる。どんなお味になるのか楽しみ!



 でも料理スキルって、どうやって発動したらいいのか今だによく分からないんだよね。だから、「おいしくな~れ」って、心の中で念じながら作ってみているんだけど。効いてたらラッキーぐらいのつもりで……。

 い、いやだってほらっ、おまじないっぽいかもだけど魔法だってイメージ力が大事でしょ? だから料理もそうかなって、ね!?

 ……いや、私だってちょっとは子供っぽいかなぁとは思ったんだよ……でも私の想像力ではこれで精一杯と言うか、思い付くのがこれしかなかったんだよ……残念ながら。いいんだ、どうせこの世界基準ではエルフの十六才は幼女だし……開き直りも大切です、多分。



  しばらくすると炊事場に爽やかな風味が香りだし、ウォークバード一羽分の骨付き肉が次々と焼き上がっていく。
 お好み焼き屋さんにあるような熱した鉄板の上で焼いていくんだけど大きいので、一羽分くらいなら一度に並べて調理出来るのがいい。

 作りながら、切れ端をちょっと味見してみたら、シンプルな料理なのにこだわりの逸品みたくなってて、スパイスの効いたおいしいお肉になったと思う。

「この匂いは強烈に食欲を刺激しますねぇ、じゅるりっ。はぁ~いい匂い! 焼きたてが一番美味しいですからねっ、早く食べたいです!」

「そうだね。ここら辺はもう焼けたと思う。じゃあ私はこの小さいのひとつ貰おうかな。もうすぐ夕食だし。あ、リノはいっぱい食べていいよ。でも明日の昼食分は残してね」

「はいっ。ではいただきます!」

「いただきます」



 骨付き肉を熱々のまま齧りつく。表面が少し焦げちゃったのもあるけど、中までよく火は通っている。

「ふわぁぁっ、これはっ。前に頂いたのも美味しかったですけど、これはまたより一層、味に深みが出ていると言うか……いやぁ、美味しいですねぇ」

「確かにっ。香草塩の味付けだけで、こんなに変わるなんてすごい……」

「本当に。いっくらでも食べれそうです!」

「うん、分かるっ。それにしても、いっぱい出来たねぇ。これだけ量があると、リノが食べても余るよね。残ったらどうしよっか? 干し肉にでもしてみる?」

「あ、いえ大丈夫です。全部食べれますから」

「え……これを、今から全部?」

「はいっ」

 元気よく宣言すると、頬っぺたをリスの頬袋のようにパッツンパツンに膨らまして、モリモリと美味しそうに食べていく。

 決してがっついている訳ではないのに、お肉の山がみるみるうちに崩され、リノのお腹に収まっていった。いやぁ、気持ちのいい食べっぷりですねぇ。

 ……十五才にしては育ちすぎの一部分を除いて、ほっそりとした体型をしているのに一体どこに入ってくんだろ。不思議だ。

 ちょうど、干し肉の作り方をリノに教えて貰ったばかりで、思ってたより簡単に魔法で作れそうだから、挑戦してみたかったんだけど……この勢いだと本気で全部食べ尽くしてしまいそう!?




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