上 下
113 / 308
第一章 辺境の町

第113話 採れたては美味しい

しおりを挟む
  

 ――では早速、風魔法を使っていきますか。


 まだ覚えたてで、スライム討伐の時しか実戦で使ったことがないけど、でも威力こそ弱いものの、命中したら軽く吹っ飛ばせるくらいはある。

 前にスモール・ワームを倒した時は水魔法を使ったけど、今回とどめを刺すのはリノだから、そんなに強い魔法はいらないし。


 よし、じゃあ行くよ!


風弾ウィンドショット』!


 時間差で次々と魔法を放ち、木の上から吹き飛ばして行く。

 ボトボトとウルルの実と一緒に転がり落ちてきたスモール・ワームは、衝撃で死んでしまったのもあるけど、まだかなりの数が弱々しくウゴウゴと動いている。

 リノがすかさずコロコロと転がっていくやつを追いかけては、一体ずつ短剣で止めを刺してまわる。

 元々、先程討伐したポイズンラットよりも弱くて動きが遅い上に、風魔法でフラフラになってる今なら、急所を確実に倒す練習をするのにもちょうどいいからね。頑張って全部仕留めてもらおう。



「よし、これで終わりです!」

「お疲れ様。じゃあこれ、袋詰めして行こっか」

「ですね! それにしてもすごい数……こんなにいたんですねぇ」

 辺り一面、黄色とピンクのモコモコだらけになっているからね。

 ざっとみた感じ、三十体以上は軽くいたんじゃないかな?
 
 スモール・ワームとウルルの実を、二人で手分けして詰め込む。残念な事に、一緒に落としたウルルの実は大半が齧られてたり、痛みが激しかったりしたので、少ししか採取できなかったけどね。

 樹に残っているやつも、上の方とか枝先とか、結構慎重に登らないと危なそうな所にポツポツと残っているくらい。

 強制討伐依頼も達成できたことだし、次はリノの希望する、採取依頼を兼ねた果物狩りをする訳だけど、この樹はもう辞めといた方が安全かな?



 討伐の後始末をしていたら、またまた汚れちゃったので、聖魔法の『浄化』で二人ともきれいにしてから、ちょっと離れたところで休憩することにした。

 さっき採ってきた、売り物にはならない、少し痛みがあるウルルの実を、それぞれでナイフで剥いから、早速食べる。

 桃の果汁を搾ったものにレモン水を入れて薄めたような味で、喉が渇いているときには濃厚すぎず、ほどよい清涼感もあってちょうどいい。

「採れたてはこんなに瑞々しいんですねぇ、美味しいです。そういえば、今朝いただいたドライフルーツにはウルルの実の他にも色々入ってましたよね? この辺りで採れるんですか?」

「うん。この黄色いのがトゲトゲベリーの実、こっちのがポポの実だね。もう少し森の中に入った所にあるよ。このところあまり採取してなかったから、ドライフルーツ用のを二人分、集めようと思ってるけど」

「はい、私も頑張って採ります! それであの、さっき取ってきたウルルの実、ドライフルーツ用にするにはちょっと量が心もとなくないですか? もっとほしいなぁ、と。収穫してきたいんですけど……ダメですか?」

「いやでもあれ、残っている場所が結構採るの難しそうで危なくない? リノは木登り得意なほう?」

「どうでしょう? 村にはここまで高い木はなくて登ったことないから分かんないですけど、普通に木登りは出来てましたし、多分行けると思います! それにせっかくここまで来たので、もぎたてのキレイな実をその場ですぐ、まるごと食べてみたいんです!」


 さては最後のが本音だね!? ほんと食べ物が絡むとすぐやる気になっちゃうんだからっ。


 でもまあ初めての討伐でいっぱい頑張った後だし、身体の調子がいい時間が続くのも嬉しいっていうのもあるのかも……休んでても動きたくてウズウズしてるって感じだったし。


 息抜きに、それぐらいのご褒美があってもいいか。私も木登りなら慣れているし、何かあったときにも対応出来ると思うし。


「分かったよ。じゃあ私も一緒にやるね」

「はいっ」


 高い樹に登るの初めてだっていうし、テンションが変に上がってる気がして心配だから、二人で採取することにしたんだけど……。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

異世界でみんなに溺愛されています!

さつき
ファンタジー
ダンジョンの最下層で魂の傷を癒していたレティア ある日、最下層に初めての客が? その人達に久し振りの外へ連れて行ってもらい・・・ 表紙イラストは 花兎*さんの「Magicdoll*Maker」で作成してお借りしています。↓ https://picrew.me/image_maker/1555093

おばあちゃん(28)は自由ですヨ

七瀬美緒
ファンタジー
異世界召喚されちゃったあたし、梅木里子(28)。 その場には王子らしき人も居たけれど、その他大勢と共にもう一人の召喚者ばかりに話し掛け、あたしの事は無視。 どうしろっていうのよ……とか考えていたら、あたしに気付いた王子らしき人は、あたしの事を鼻で笑い。 「おまけのババアは引っ込んでろ」 そんな暴言と共に足蹴にされ、あたしは切れた。 その途端、響く悲鳴。 突然、年寄りになった王子らしき人。 そして気付く。 あれ、あたし……おばあちゃんになってない!? ちょっと待ってよ! あたし、28歳だよ!? 魔法というものがあり、魔力が最も充実している年齢で老化が一時的に止まるという、謎な法則のある世界。 召喚の魔法陣に、『最も力――魔力――が充実している年齢の姿』で召喚されるという呪が込められていた事から、おばあちゃんな姿で召喚されてしまった。 普通の人間は、年を取ると力が弱くなるのに、里子は逆。年を重ねれば重ねるほど力が強大になっていくチートだった――けど、本人は知らず。 自分を召喚した国が酷かったものだからとっとと出て行き(迷惑料をしっかり頂く) 元の姿に戻る為、元の世界に帰る為。 外見・おばあちゃんな性格のよろしくない最強主人公が自由気ままに旅をする。 ※気分で書いているので、1話1話の長短がバラバラです。 ※基本的に主人公、性格よくないです。言葉遣いも余りよろしくないです。(これ重要) ※いつか恋愛もさせたいけど、主人公が「え? 熟女萌え? というか、ババ專!?」とか考えちゃうので進まない様な気もします。 ※こちらは、小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

森に捨てられた俺、転生特典【重力】で世界最強~森を出て自由に世界を旅しよう! 貴族とか王族とか絡んでくるけど暴力、脅しで解決です!~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 事故で死んで異世界に転生した。 十年後に親によって俺、テオは奴隷商に売られた。  三年後、奴隷商で売れ残った俺は廃棄処分と称されて魔物がひしめく『魔の森』に捨てられてしまう。  強力な魔物が日夜縄張り争いをする中、俺も生き抜くために神様から貰った転生特典の【重力】を使って魔物を倒してレベルを上げる日々。  そして五年後、ラスボスらしき美女、エイシアスを仲間にして、レベルがカンスト俺たちは森を出ることに。  色々と不幸に遇った主人公が、自由気ままに世界を旅して貴族とか王族とか絡んでくるが暴力と脅しで解決してしまう! 「自由ってのは、力で手に入れるものだろ? だから俺は遠慮しない」  運命に裏切られた少年が、暴力と脅迫で世界をねじ伏せる! 不遇から始まる、最強無双の異世界冒険譚! ◇9/23 HOTランキング(男性向け)4位

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。

udonlevel2
ファンタジー
修学旅行中に異世界召喚された教師、中園アツシと中園の生徒の姫島カナエと他3名の生徒達。 他の三人には国が欲しがる力があったようだが、中園と姫島のスキルは文字化けして読めなかった。 その為、城を追い出されるように金貨一人50枚を渡され外の世界に放り出されてしまう。 教え子であるカナエを守りながら異世界を生き抜かねばならないが、まずは見た目をこの世界の物に替えて二人は慎重に話し合いをし、冒険者を雇うか、奴隷を買うか悩む。 まずはこの世界を知らねばならないとして、奴隷市場に行き、明日殺処分だった虎獣人のシュウと、妹のナノを購入。 シュウとナノを購入した二人は、国を出て別の国へと移動する事となる。 ★他サイトにも連載中です(カクヨム・なろう・ピクシブ) 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

処理中です...