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第一章 辺境の町

第107話 信頼

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 そう思って『鑑定』してみたんだけど……。

 ……あれ?

 付加価値が、ついてない……。勧められるままに一つ食べてみたけど甘味もそれほどでもない、ような?



「じゅるりっ。どうですか? やっぱりローザのが美味しいでしょ?」

「う、うん。そうだね。あ、これありがと」

 ハイハイすぐ返すからね、ヨダレ出てるよっ。君は人が食べてると我慢できなくなっちゃうのかい?

 返した小袋を受け取ると、すぐ食べ始めちゃった。

「やっぱりそうですよねっ。う~ん、これもいいんですけど、ローザから頂くより美味しいドライフルーツを知ってしまうと、ね。だから今日の果物狩り、とっても楽しみにしてたんです! いつも貰ってばかりじゃ申し訳ないし、自分でも作ってお返ししたくて。どうやって作ってるんですか?」

 ううぅっ、そんなに目をキラキラさせて期待されると、とっても答えにくいんだけど……。

「う、う~ん、あのね、教えるのはいいんだけど……これ全部、魔法を使って乾燥させてる、から、さ。完成までにたくさん魔力を使うんだよね」

「ええっ、これを全て魔法で!? そ、それはちょっと予想外でした……。エルフならではの贅沢な魔力の使い道、ですねぇ。じゃあ、私には作れないや。残念です……」

 ああっ、しゅんっとしちゃった。



 まあ確かに、普通はこんなことに魔法を使わないかもしれないけど……。

 私の場合、この世界に突然ほっぽり出されて以来、魔法しか頼れるものがなかったからね。止むに止まれずって感じで、何でも魔法で無理矢理解決してきたからさ。

 保存食作りも、荷物を軽く小さくするために仕方なくやったんだけど、それが思いの外いい結果になっただけで……。



「ドライフルーツは、魔法の練習の為に作っているっていうのもあるから。それにこれはリノの体質を改善出来るかもしれないという、治療の一環でもある訳だし…… そんな落ち込まないで?」

「でも…… 本当にいいんでしょうか。魔法を教えていただく事もそうですし、こうして食べ物の差し入れも毎日のようにしていただいていますし……。私、お金とか対価を一度も支払ってないです……」

「まあ、これからはパーティー組むんだし、リノが強くなれば私も助かるんだから、ね? 気にしないでっ」

「はい……ありがとうございます。あの、今すぐは無理ですけど、私もいっぱい修行してローザを守れるくらい強くなるように頑張りますからっ。それまでは身の回りのお世話とか、私が出来る事なら何でもしますから言ってくださいね」

「ありがとう。でも干し肉の作り方とか教えてもらったし、何にもしてないってことはないから。よかったらまた、村での暮らしぶりとか、人族の習慣とかを色々話してくれるとうれしいな。よく知らないからさ」

 信頼できる現地の人の生の声って、目立たず生きていきたい私としてはとっても大切。身の安全を計る為にも、小さなことでも教えてもらいたい。

「そんなのでよければいくらでも話しますっ」

「うん、よろしくね」




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