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第一章 辺境の町
第57話 貧乏って嫌いだ……
しおりを挟むリノも無事、新規登録できたようで、今日泊まれる宿もしっかりと聞いてきたみたい。
予算内に収まるところがあってよかったと、ほっとしながら話してくれてた。
「そういえばローザはどこに泊まってるんですか?」
「ギルドから近くて、とっても美味しい料理を作ってくれる女将さんがいるところだよ」
その話にたちまちリノが食いついてきた。
まあ君なら絶対、興味を持つと思ったよね。
「じゅるりっ、お、美味しい手料理付きのお宿……ち、ちなみにそこってお値段は!?」
「一泊朝夕食事付きで銅貨七枚。ちょっと高いよね」
「で、ですね。銅貨七枚ですかぁ……。とてもそんなお金持ってないです。でも夕食だけならなんとかいけるかも!? 私もそこに泊まれるように頑張って稼ぎますね! そしたら、今日のお礼にその女将さんの美味しい料理、おごらせてください!」
「うん、一緒に食べようね」
「はい、必ず!」
なんか、食べ物に散財しそうで心配だけど、気長に待っとこう。
ちなみにリノも数日後に行われるスライムの講習会を受けることにしたらしいので、そこでまた会う約束をして彼女は宿へと向かって行った。
ちなみに先程の虫根コブ草の買取価格は64シクルになった。
午前中に稼いだ中からさっきのお昼代を差し引くと……201シクル。日本円だと二万円ちょっと。
少ないけど、これで何とか装備を買いたい。
服だけという紙装備を、早く何とか卒業しないと、安心して依頼を受けれないからね。
――というわけで早速、鍛冶屋さんへやって来た。
防御力があって私でも買えるやつをと、親父さん……ブルボさんに相談してみたら……。
「200シクルだって? 又しても予算が厳しいなっ、嬢ちゃん!」
「はい、是非これで買える、目一杯いいやつを何とかお願いします!」
「しょうがねえなぁ……ちょっと待ってろ。探して来るからっ」
そう言って奥に引っ込み、何やらゴソゴソしていたブルボさんは、肌着のように見えるものを手に持って戻ってきた。
「え……それ、防具なんですか?」
「ああ、そうだ。革鎧は到底、無理だったからな。その下に着る鎧下を見繕ってきたんだ。嬢ちゃんは魔法での戦闘が多いんだろ? 前衛じゃなければこれで十分、当座の防具代わりに出来ると思うぞ。どうだ?」
「鎧下……ですか」
やっぱり革鎧は、有り金全部叩いても買えないっぽい。
なので、苦肉の策として、鎧下を先に購入してはどうかと提案してくれたようだ。
今後、革鎧を買う際、その下に着る丈夫な布と皮でできた鎧下は必要になってくるので無駄にならないし、これを着ていれば少しは防御力が上がるから、と。
「値段的にこれしかないというのもあるがな。中古だが、いい魔物素材を使っているから同じ値段新品のものより性能はいいぞ」
試しに私も『鑑定』してみたら、確かに耐久性がありそうだった。
「分かりました。それにします!」
「おうっ、じゃあ200シクルな」
「はいっ」
きっちり支払って購入し、鍛冶屋を出た。
いやぁ、買えるものがあって良かったなぁ。
でも、またまた有り金がちょっぴりになってしまって、現在、明日の宿代も払えない状態です……。
かろうじてお昼代くらいは残ったけど、でも1シクルだよ、百円分だけしかないって、悲しい……。またしても女将さんの美味しい昼食が買えない、あと半額足りないよ!
絶対、小学生のお小遣いより少ないよね、これ……。
……おかしい、どうしてお金ってこうすぐ出て行っちゃうのかな、全然無駄遣いしてないのにっ。
頑張って稼がないと、明日、また野宿することになるよ!?
はあ、貧乏って嫌いだ……。
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