気づいたら異世界ライフ、始まっちゃってました！？

第一章 辺境の町

第５３話 レアな薬草

　東の草原をゆっくりと歩きながら、片っ端から『鑑定』していく。

　へえ、背の高い草に埋もれちゃってるのもあるけど、野草も薬草もいっぱい種類があるんだ。

　ただ、採取する部位が花や種など今の季節では無いものや、葉っぱが採れるものでもすでに冒険者が来てるみたいで、採取済の状態で無理なのとかも結構ある。中々いいのがないなぁ。

　あとは……根っ子を採取するものとかかな？

　これなんか掘り返した跡はないし、採取されずに残っているみたいね。
　地上部を見分けるのが難しいから分からなかったのかもしれない。私も『鑑定』がないと他の草と全然区別つかなかったし。
　掘らなきゃいけないから時間がかかり過ぎて数をこなせないっていうのも理由としてあるかもしれないけどね。採取は単価が安いから、量を集めないとだし。



　その中から、何と虫根コブ草という、割りと高めの買取価格でレアな薬草を『鑑定』で見つけることが出来たよっ、やったね！

『鑑定』結果は……。


【 虫根コブ草：薬草

　効能：ＨＰ回復効果

　可食：可能　生食は不可

　採取：地上部分に特徴がないため採取困難
　　　　コブような白い根っこを採るが、次の採取の為
　　　　に一コブ根を残して埋め戻しておく。
　　　　一ヶ月程で回復して採れる 】


　……なんかまともだった。

　採取って困ったやつばっかりだったから、これもそうかと思っていたけど違った。

　普通の薬草で、とってもまともなやつだった。

　そうだよ、採取ってこういうやつが普通なんだよっ。今まで常識のナナメ上のばっかり相手してたから普通が何か忘れそうになってたけど！



　これを採取する時間くらいはある。周りに誰もいない内にさっさと採っちゃおうと、万能ナイフを取り出した。

　万能とついてるだけあって、スコップ代わりにもなる便利なやつなんだと鍛冶屋のおじさんもお薦めの品だから。

　さあ掘ろうっ、としたけど……。

　うわっ、なにこれめちゃくちゃ土が固いっ。ナイフが刺さりにくい！

　う～ん……これが取り残されているのはこのせいなのかもね？　 見つけにくい上に、採りにくいから敬遠されているのかも。

　でもその考えが当たっているなら、他の人と競合しなさそうだ。

　土魔法を使える人なら簡単な採取だろうけど、そんな人はわざわざ安い採取依頼とか受けなさそうだし。

　私も土魔法は使えないけど、『魔力操作』を覚えてから少しだけ土にも干渉出来るようになったし、水も出せるから組み合わせればいけると思うんだよね。



　ちょっと土を柔らかくするイメージで、魔力を根元に注ぐと……。

　モコモコっと微妙に土が動く。

　効果は微妙だけど確実にナイフで掘るより早い。後は、水魔法もつかって土を柔らかくしてっと。


　――これでナイフが通るかな？


　……うんっ、大丈夫。掘れるよ！

　根っこもそこまで深く張ってない感じで……あ、見えてきた！

　白くて太い５ｃｍ程の根っこがポコポコくっついてる。確かにこれはコブみたいに膨れてる。

　見ようによっては丸まった虫みたいにも見える。

　この見た目からあの名がついたのか……。