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第一章 辺境の町
第43話 宝火樹・後編
しおりを挟む下の方の葉は熱くなかったんだよね……。
……と言うことは、多分だけど。
熱を帯びてる、と思われる葉っぱが上に行くほどあって、それが暑さの原因になっているんじゃない?
まあ、全部の葉がそうじゃないだろうけど、ある程度の数がないと、こんなに汗をダラダラかくほどの温度にはならないんじゃないかなっ。
もしかしたらそれが名前の由来になっているのかもね? 放火したように熱くなるからホウカジュというとかそういう感じで……何か当たっている気がする。
ーー今度は葉っぱを直接、『鑑定』してみようか。
【 宝火樹の葉:薬樹葉
効能:熱冷まし
可食:可能
採取:よく陽に当たって魔素をいっぱい溜め込んだ、
厚みがある赤黒い葉っぱを採る
採取可能な葉は熱を持っているので注意
一度、採ってしまえば素手でも触れる
採る瞬間さえ注意すればいい比較的簡単な採取 】
……ちょっとなにこの説明文。
いやいや待って? 簡単じゃないって、これ!
採ってしまえば素手でも触れるっていうけど、それって採る瞬間までは熱くて無理ってことでしょ!?
それに、例のマジックなキノコは地面の上だったけどそれでも最初は採るのに苦労したのに、こっちのは大樹の上にあるんだよ!?
陽によく当たる場所っていうのは、必然的に枝の先端とか頂点近くとかの足場の悪い危険地帯だよ!?
そんなとこにあるアツアツの葉っぱを採るとか、耐熱服とか着ないとその葉っぱ達が凶器となって採取どころじゃなくなっちゃうってば~!
……なんかこの世界の採取って、難易度高くないですか?
まだ三つぐらいしか体験してないけど、普通じゃないっていうか、初心者にやたらと厳しい仕様になってるっていうか……?
本物のエルフなら、こんな巨木の上の採取なんて得意中の得意だろうけど(多分)、こっちはにわか仕立ての偽物のなんちゃってエルフだから!
この体になってまだ五日目の、例えるなら生まれたての赤ちゃんみたいなもんなんだよ?
種族特性で出来るって頭では分かってても、実際にやるには経験とか技量とかそういうのが全然足りてないって!
木登りは余裕にできるとしてもですね、本物の森の妖精さんたちのように、風をまとったみたいに身軽にヒラリヒラリと枝先から枝先へ採取しながら飛び移ったりとか、そんなのまではとっても出来る気がしないってば――!
はあぁ、どうしようかな……このままスルーする?
でも折角、ここまで来て見つけたことだし……迷うなぁ。
失敗しても少しの怪我なら聖魔法で治せるし……今、お金ないし、これって依頼料が虹色の樹の葉っぱよりちょっとだけ報酬も良いみたいだし……。
……あぁ、もうっ、仕方ない!
美味しいご飯のため!
一回だけっ……一回だけ挑戦してみよう!
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