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第一章 辺境の町
第193話 魔法薬
しおりを挟む「成る程、魔力の節約にもなるんだね」
「ああ。これひとつあると便利だぞ。それにもうひとつ、利点がある」
「そうなの?」
「うん。魔法薬だと、使用回数にほぼ制限がないんだ」
「……っ! それいいね!」
「だろ?」
聖魔法やポーションの治療は、効果範囲も即効性も非常に高いのだが、使用頻度が一定数を越えると効かなるという弊害がある。
しかし、魔法薬にはそれがほぼないという。使用者の内包魔力に働きかけて、自己回復を促進する為だといわれている。
必然的に、個人の魔力量によっても効き目が変わってくるということになり、それは種族によっても使える薬が違うということになる。
本来なら薬師にカウンセリングを受けて、体質にあったものを調剤して貰うのが一番いいというけれど……。
「まあ、既製品に比べると高くなるな」
「……やっぱり。そうだと思った」
いいものを買おうと思ったら、高額になるのは何処の世界でも一緒だよねっ。
今回は時間もお金もないし、既製品を買っていくことに決めた。
「人族の大人用のだと効き過ぎるから、俺達のは人族の子供用のやつだな」
「子供用のお薬かぁ……」
「過ぎれば毒だからな」
「そっか。うん、分かった」
エルフ族や獣人族は、魔力と肉体の親和性が高いから、人族の町で売られている魔法薬は強すぎる。そのため、既製品を買うなら子供用のになるらしい。
ラグナードが選んだのは二つ。経皮吸収タイプの魔法薬で、それぞれ傷と打撲に効くという軟膏だった。
万能薬のような聖魔法の「治療」やポーションと違い、魔法薬は一つひとつの薬効範囲が狭く特化しているので、いくつも買うことになるのが大変。
だけど、これも安全に冒険をするためだからねっ。ポーションよりは安いからよしとしよう、うん。ラグナードへの借金は嵩むけど、今は目を瞑ろう。
リノ用と私とラグナード用ので、計四個を購入して店を出た。
「さて、他に行きたいところはあるか?」
「出来ればあと二軒ほど、挨拶しておきたいところがあるんだけど……」
本屋のシルエラさんのところへ貸本を返しに行きたいのと、スライムスーツを作っている工房にも行きたい。しばらく来れなくなりますって。
「ああ、そういやローザは、スライム工房の方にも手伝いに行ってたんだったな……分かった。じゃあ、順番に行こうか」
「うん、お願いしますっ」
ここから近い順……本屋さんから先に済ませることにしたんだけど……。
残念ながらお店はもう閉まっていた。
「どうしよう」
「大丈夫、こっちだ」
ラグナードには分かっているらしく、横道に逸れて一つの扉の前まで連れて来てくれた。どうやらここが店舗の奥にある住居の方の入口らしい。知らなかった。
ノッカーを叩いて暫く待っていると……。
ガチャリッ、と音がして扉が開いた。
「あら、いらっしゃい。二人揃ってくるなんて初めてね」
開けた扉の外に立っていた二人を見て、優しく微笑んだ。
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