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第一章 辺境の町

第175話 ロカの店

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 ロカの店はこの町の人気店らしく、メイン通りに店舗を構えていた。レンガ造りになっていて、女の子が好きそうな可愛らしい外観だ。

 店に近づくにつれて、通りにまで甘くて香ばしいが漂ってきている。う~ん、いい匂いっ。
 リノもニコニコしてるし、ラグナードの耳と尻尾も期待でソワソワと揺れ動いているっ。甘味でこんなにご機嫌になっちゃうなんて、二人とも可愛いなぁもうっ。



 女性のお客さんで賑わっているのがお店の外まで聞こえてくる。店内は思ったより狭そうで、長居出来るような雰囲気じゃなさそう。
 入ってすぐ商品の並んでいるカウンターがあって、そこには残り少なくなったお菓子がポツポツと置いてある感じみたい。

 よかった、何とか売り切れ前に間に合ってっ。でも、ラグナードがあの中に入っていくのは勇気がいるっていってた意味が分かったかも。店内には男性客がいないから。
 甘味が女性を虜にするのは異世界でも一緒なんだね。皆さん怖いくらいにエネルギッシュです!

 リノが代表して買って来てくれるというのでお任せして、私とラグナードは大人しく外で待つことにした。



 あの喧騒の中、可愛らしい店員さん達が次々とお客さんを捌いていっているので、回転率が早い。
 リノもすぐ注文することができたらしく、商品の入った小袋を持って出てきた。

「お待たせしました。さすがに新作は売り切れてたみたいです……」

「お疲れ様。まあ、この時間ならしょうがないよ」

「うん、買えただけもよかったんじゃないか?」

「そうですね。買えたのは、定番の商品と季節限定のものです。まだ食べたことがなかったのでそれにしてみました」

「それは食べるのが楽しみだなっ」

「本当だね」

 確か、前にリノが買ってきてくれたのは木の実入りのクッキーだったはず。あれも香ばしくて美味しかった。

 見せて貰ったところ、今回のは定番だというジンジャークッキーとドライフルーツ入りのクッキーの二種類。
 ドライフルーツのは季節毎に中身が変わるみたいで、今回はトゲトゲベリーの実が入っているみたい。これも美味しそうだねっ。買えてよかった。



 屋台で三人分の果実酒を手に入れた後には、香辛料のお店にも寄って行くことに……。
 リノに教えてもらったんだけど、どうやらこの世界にも魚醤があるらしくて、この町でも売っているんだってっ。知らなかったよ! 
 ここら辺で扱っているのは川魚から作ったやつみたいなんだけど、それがあまりクセも無くて色んな料理と相性がいいらしいんだよね。

 これはもう買うしかないでしょって思ったんだけど、どうやら地域や種族によっては好みが別れる調味料みたい……。ドキドキしながら確認したところ、二人とも大丈夫だって! やったね!



 基本は量り売りなので、先に雑貨屋さんで入れ物を見繕うことにした。

 いつこの町を出ていくか分からないし、常に身軽でいるためにも少量だけ入るものが欲しい。
 値段とも相談して、ちょうどいい大きさの小壺があったので、それを一つ買うことにした。

 さっそく香辛料のお店に戻って、入るだけの魚醤を買ってきましたよっ。ふふっ、これで味付けのバリエーションが広がりますね! お料理するのが今から楽しみです。



 色々仕入れて宿泊先に戻ると、私だけ先に宿泊客なら無料で使用できる一階の炊事場へと直行した。火の準備をしておく為だ。
 昼食と夕食の間の中途半端な時間のせいか、他に利用している宿泊客はいないみたいね。気兼ねなく調理出来そう。

 燃料は、炊事場の端の方に積み上げられている薪と焚き付け用の細木。これを取ってきて、鉄板の下にある焚き口に井桁を組んで入れてから、生活魔法の「着火」で火を起こすだけ。魔法が使えると楽チンでいいですねっ。

 この薪の樹から作る薪は火持ちがよく、煙は燻煙チップを燃やした時のようないい香りがするんだ。その上、ちょっとした殺菌・防腐作用もあるから料理用によく使われる。

 徐々に鉄板も温まってきたころ、リノとラグナードが両手にいっぱいの荷物を持って入ってきた。
 二人には、二階にある私達の宿泊部屋からスモールボアのお肉を含めた大量の食材を運んで来て貰ったんだけど……改めて並べて見ると凄い量だ。

 余ったら女将さんにも差し入れしようかな。今回も大鍋をお借りているしね。うん、そうしよう。




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