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第一章 辺境の町

第172話 明日が楽しみです

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 炭化している部分を含め、周囲に散らばった迷いの魔樹を二人でかき集める。

 冒険者ギルドの資料室で得た知識によると、生きている魔樹には火属性の魔法が付与された武器の攻撃が通るらしいけど、倒した後なら普通の武器でも刃が通るとあった。
 なので邪魔な枝はナイフで切り取って、一回の魔法で燃やし尽くせるようにとコンパクトにまとめていく。

 そうして出来た残骸の山に向かって、もう一度火魔法の『火炎噴射』と『消火』を放ち、最後に聖魔法の『浄化』を掛けて手早く後始末を終えた。



 今回、初めて対峙してみて分かったのは、魔物にしては魔樹って好戦的じゃないのかもっていうこと。
 こちらの幻術耐性が強ければ、刺激しない限り、逃げる事も可能だと感じた。

 後は、迷いの魔樹の若木だと、気を付けなきゃいけない固有スキルの幻術は認識妨害だけみたいで、人族のリノにはよく効いていた。
 上手く周りの森に溶け込んだり、場合によっては動いている事も見逃してもしまうくらいの効果があった。

 まるでステルス機能のような幻術だね。一人だと危ないけど、一緒にいたら実害がなさそうだし良かった。
 若木の迷いの魔樹なら、幻術耐性の魔道具がなくても大丈夫かもしれない。


 静かな森の中に魔樹の倒れた音は案外よく響いたので、他の魔物が寄ってくる前にとその場を離れた。






 魔道具屋さんで念願の懐中時計を手に入れたので、薄暗くて太陽が見えない森の中でも正確な時間が分かるようになったのはうれしい。
 お昼は果樹園近くの比較的安全な場所まで戻って食べれたし定期的に休憩も入れたので、二人共それほど疲労はなくここまで来れている。

 離れた場所から町の方へと向かって捜索をして来た訳だけど、足場も悪く出てくる魔物も多くて移動が制限される為、思うように進めなかった。

 結局、エドさんから聞いていた町近くの生息場所まで辿り着けずに、迷いの魔樹も最初に一体討伐しただけでそれ以降は発見出来なかったよ。期待していたマジックキノコにも出会えなかったし。

 でも焦っても見つからないからね、まずは二人共無事に生還することが大切だから、余力があるうちに切り上げることにした。






 果樹園で果物をいくつか採取した後、町に戻って冒険者ギルドにいく。

 昨日の結果がどうなったか気になるんだよね。一日では分からないかもしれないけど、大事な事だし聞いてみよう。

 少し待つとエドさんの前が空いたので、買取を依頼するついでに例の件を尋ねてみた。

 するともうすでに、ラグナードへ伝言を伝えてくれていたみたい。さすがエドさん、仕事が早いっ。
 ここ数日はずっと町にいたらしいけど、ソロで南の森を拠点にしていた為今まで会わなかったみたいです。

 いつも閉門時間後にギルドに来る事が多くて、今日はまだ早いから来ていないとの事だった。
 ただ彼も、こちらが初心者だと知った上でパーティー結成に前向きだったそうなので、セッティングはいつでも出来ると言われた。

 こういうのは早い方がいいから、さっそく明日会うことにして、ラグナードがギルドに来る時間帯に二階にある小会議室を一部屋借りられるか聞いてみた。
 大丈夫、空いているとの返事を貰ったので、そこで会えるように伝言をお願いしておいた。



「いよいよ明日ですか。どんな人かちょっとドキドキしますっ」

「私も助けて貰った時以来だし等級とかも分からないけど、すごく強い人だったよ。パーティー、組んで貰えるといいけど……」

「そうですね。でも、私達が初心者で足手まといになるって分かった上で会ってくれる訳ですから、期待しときましょう!」

「そうだね。まぁ再会できるだけでもうれしいし。楽しみだなぁ」

 ラグナードは狼の獣人族だし、素の身体能力がもの凄く高そう。その上ベテランの冒険者さんだから迷いの魔樹の討伐も捗るだろうし、学べることも多いはず。


 ――再会まであと一日。

 引き続き明日も北の森で魔物狩りをして、少しでも自己強化を図ろう。




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