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第一章 辺境の町

第170話 十五日目

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 ◇ ◇ ◇



 ――この世界に来てから十五日目。

 今日も爽やかな晴天で、絶好の冒険日和です。

 主に北の森で、ギルドから依頼された迷いの魔樹捜索を中心に活動する予定だけど、同時に魔物討伐とほんの少しの採取もするつもり。

「えっとつまり、一番の目的は迷いの魔樹ですけど、パーソナルレベルを上げて強くなるためにも、魔物が出たら積極的に討伐していく……身軽でいるために、採取は出来るだけしないってことでいいんですよね?」

「そうそう。今までより少し奥の方に行くから、ちょっとでも危ないと思ったらすぐ逃げられるようにね。軽くて嵩張らないマジックキノコとかなら採取していくけど」

「茸は今日も期待出来ますもんね。高額買取になるものを見落とさないように頑張りましょうっ」

「うん。それでもし、稼ぎがよかったら、魔道具屋さんか鍛冶屋さんに行って強化できるものを探したいな」

「ええ。その為にも、水玉茸以外のマジックキノコも見つかるとうれしいんですが……こればっかりは運ですもんねぇ」

「でも運だけは、私達ってすっごくいいはずでしょ?」

 何といっても、パーティーメンバーが二人共、『幸運』スキル持ちなんだ……期待するなと言う方が無理だと思う。

「ですねっ、めちゃくちゃ期待しときます!」




 昨日どうするか相談してた時、紙装備も卒業してようやく冒険者らしい装備も整って来たので、出来れば今までより少しだけ森の奥に入ろうって事になったんだよね……迷いの魔樹を探す為にもマジックキノコを見つける為にも。奥に行くほど魔力が濃くて、出会う確率が上がるから。

 リノとパーティーを組んでからは、まだ一度も迷いの魔樹に遭遇したことがなかったのは、今日まで彼女の装備が全く揃ってなくて、私が一人で行動していた範囲よりも更に安全な森の浅い場所で活動していた事が大きい。

 ただしこれからの事を考えると、いつまでも安全地帯に留まっているわけにはいかない。金欠からも抜け出せないしねっ。

 この世界では、年間を通して結構頻繁に幻術系の魔樹が森外周付近まで出てくる。
 それに対抗するためにも、魔道具は重要になってくるんだよね。幻術対策がどのレベルまで必要かを確かめる為にも、リノには一度、実体験してもらいたいっていうのがあった。命大事に……だから絶対無理はしないけどね。



 革鎧を着込み、武器をベルトに差してから懐中時計と物理耐性強化のブレスレットを装着して背負子を背負う。

「じゃあ、出発しようか」

「はいっ、行きましょう」






 北の森の外周付近から少し奥に入っただけなのに森の緑は濃く、暗さが増して来た気がする。

 町から10Kmは離れているので、魔物や野生動物の獣道が辛うじてあるだけで人の出入りはほとんどなく、足場は悪い。ワサワサと生い茂る下草で、藪払いが必要なほどだ。

 巨木群ほどではないにしろ、人ひとりでは腕が回らないほどの太い幹をした大きな樹がところ狭しと立ち並び、周りを駆逐する勢いで成長し、凌ぎを削っているようにみえた。

 そんな生命力の溢れる木々だらけの森の中から迷いの魔樹を見つけるには、森歩きに慣れていない私達だとスキルに頼るしかない。

 今日も途中からは初めてのルートを通るので、『索敵』『鑑定』『マップ作成』の三つのスキルが大活躍している。
 草藪だらけの場所でも魔物の居場所が分かるから安全に進めるし、迷う事がないので捜索に集中出来るから、あってよかったよ。
 どれかひとつでも掛けていたら、もっと不安だっただろうし、新人二人でここまで来れなかっただろう。



 遠目だと普通の樹木そのものな樹の魔物は若木の内はよく歩き回るけど、成長すると根を下ろした場所からほとんど動かなくなり、スキルがないと判別することは難しいから。
 周りの木々に擬態するから見た目も一体一体違うし、これといった特徴もなくて余計に厄介なんだよね。




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