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第一章 辺境の町
第167話 やっぱり金欠に……
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ふうぅ……借り物の部屋だけど、ここに帰って来ると安心するなぁ。
宿の部屋で、お土産にもらったジャムの瓶と借りてきた本をサイドテーブルの上に置いて、ベッドの上に寝っ転がる。
もうそろそろ、リノも帰って来るかな? 今日は別行動だったけど、初めての休日だし楽しめてるといいな。
甘いものが食べたいって言ってたし、この町の甘味を嬉々として買いあさってたりして……。
そう、辺境にあるこの町にも割とあるんだよね、甘味。庶民が砂糖代わりに使える物が周辺の森から色々採れるからっていうのが大きいと思うんだけど。
――ここは人族の国、ロータス王国の辺境の地なので、森が特に近い。
それは、脅威でもあるけど上手く付き合えれば豊かな恵みももたらしてくれるって事でもある。
例えば、様々な樹から採れる甘い樹液や、甘草や花など草花からの蜜、ハニー・アントの蟻蜜やハニー・ビーの蜂蜜などの魔物の蜜など、本当に多種多様な甘味料が手に入るんだよね。
白砂糖もあるけど庶民にはお高くて手が届かないので、代替品として使われるみたい。
屋台でもこれらを使ったお菓子が売られているのを見かけるし、お肉や惣菜に比べると少しだけ高めの値段設定だけど、甘くて美味しいからとリノがよく買って食べてるので、それほど高額ってわけでもない。
甘味専門店とかも探せばありそうだけど、今日は思ったより狭い範囲しか町を散策してなくて、私は新鮮な果物で作る果実水やジャムを売ってるような、いつものお店しか見つけられなかったんだよね。
でも、また今度お休み取れたら、探しに行きたいと思う。異世界ではどんなスイーツ売られているのか、興味があるし。
ベッドの上でゴロゴロしながら、借りてきた「森の魔物辞典」をパラパラとめくって時間をつぶしていると……。
「ただいま帰りました!」
リノが両手いっぱいの荷物と共に帰宅した。部屋の中にお菓子屋さんの店内にいる時のような、優しくて甘い香りがふわんっと広がった。
「お帰りなさい。何かとっても美味しそうな匂いがする……」
「ふふふっ、色々売ってたんですよっ。もう、どれを買おうか迷っちゃったくらい! 中でも私お薦めはこれです」
「どれどれ? あ、これはクッキーだね」
「そうですそうです。試食させて貰ったんですけれど、この香ばしい木の実入りのクッキーが絶品だったんですよっ。何種類か買って来ましたから、後で食べましょうねっ」
「う、うん」
「他にはレッドシロップの樹の樹液を固めて作った飴玉とか、珍しい果物とか、変わった形のパンの実なんかもいくつかお試しに買ってきちゃいました。特にパンの実は種類が多いですねっ。この町に来て初めて見たものばかりで、どんな味がするのか分からないですけど楽しみです!」
「へぇ、こんなに色々売ってるんだ。他のはどうだった、甘味以外にも美味しいものはあった?」
「はいっ。いっぱい食べ歩きして来ましたよ! 昼食の時間にギリギリ間に合ったので、ちょっとお高い魔物肉をいただけるお店にも行って来ましたし! いつも堪らない臭いをさせていたお店だったのでいつか行こうと目をつけていたんですが、当たりでしたっ。いいお肉って、シンプルに塩と胡椒を振って焼くだけでもう絶品なんですよねっ、あぁ……美味しかったなぁ。あれなら50シクル出しても惜しくないです、うん。また今度ローザも一緒に行きましょうね」
「う、うん、そうだね。ちょっと高いけど、私も食べてみたいかな」
リノの懐事情が気になるところだけど、散財したのは私も一緒だしね。二人揃ってまたまた金欠になってしまっちゃったけど、明日からまた稼げばいいんだしたまにはいっか。食べ歩きを満喫出来て、リフレッシュ出来たようだし。
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