上 下
160 / 308
第一章 辺境の町

第160話 魔道具屋・後編

しおりを挟む
  

 その後は『鑑定』スキルを使いながらいっぱい質問してしまった。世話好きらしい店主のマールさんが何でも答えてくれるから、ついつい甘えちゃって……。

 楽しくおしゃべりしてたんだけど、最後の方では魔道具の知識をやたらと褒められてしまった。


 ――いやほら、当然ながら知らないものばかりだったんだけどね?


『鑑定』さんが優秀で割りとどの魔道具を見ても簡易表示くらいはしてくれるし、その上、マールさんの注釈を聞いていると、私の『鑑定』結果にどんどんと反映されていくのが面白くて……。お得感に負けてつい、調子に乗っちゃったといいますか……。

 何と言うかその、マールさんのお人柄もあると思うけど、初めて見る異世界の不思議道具にも興奮してたし、変なテンションになってたんだと思う。

 ダンジョンでしか手に入れられない貴重なスキルオーブとか、軽量化の付与魔法が掛かったバッグとか、迷いの魔樹対策に良さそうな幻術耐性の魔道具とか。
 当分手が届きそうにない高価なものから、お手軽価格のものまでたくさん見せてもらえて、本当に有意義な時間だったよ。思った以上に長居してしまったけどね。


 でも初対面の人と、こんなにたくさん話したのってこの世界に来てからは、シルエラさん以来かも。
 リノとは危険と隣り合わせの仕事仲間でお金もない者同士、どう生き残るかみたいな話になりがちだったし……。



 ただ、今日は買わないつもりだったのに、いつの間にか懐中時計をあっさり購入する気にさせられていたっていうのがね。さすが一筋縄ではいかないというか……老獪な商売人らしいよね……。

 最初に一目惚れした懐中時計をチラチラ見てしまっていたようなんだ。目敏く気づいたマールさんが、すかさず割引してくれると言う魔法の言葉をかけてくれて、一瞬で誘惑に負けちゃいました。
 一部が白銀製になっているから本当はもっと高い品らしいけど、中古で贈答品だったらしく名前入りという事もあり、売れ残っていたらしい。

 気がついた時にはベテラン店主の営業トークに乗せられて、「物理攻撃耐性+2上昇」のブレスレット型魔道具と共に合計で4000シクルもの大金をお支払いしていました……おぅ。

 い、いやだって、まとめ買いしたら更に値引きしてくれるって言われたんだもん。
 実際、300シクルもお得に買えたんだしいい買い物だったでしょ、ね!?

 個人的にはとっても満足してるけど、でもこれで残金が390シクルに……。ううぅっ、一気にお財布が軽くなっちゃったっ。

 このあと、シルエラさんの本屋に行って、支援魔法書か土属性魔法書を貸りたいと思ってたけど、魔法書の貸し出しには確か200シクルはするから、それを借りると心許ない金額になっちゃう。
 何かあった時のために少しは手元に残しておきたいし、今日は安く借りられるものにするか。


 早速、買ったばかりの懐中時計とブレスレットを装着し、今度はパーティーメンバーと来る約束をしてから魔道具店を出た。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)

土岡太郎
ファンタジー
 自分の先祖の立派な生き方に憧れていた高校生の少女が、ある日子供助けて死んでしまう。 死んだ先で出会った別の世界の女神はなぜか彼女を気に入っていて、自分の世界で立派な女性として活躍ができるようにしてくれるという。ただし、女神は努力してこそ認められるという考え方なので最初から無双できるほどの能力を与えてくれなかった。少女は憧れの先祖のような立派な人になれるように異世界で愉快で頼れる仲間達と頑張る物語。 でも女神のお気に入りなので無双します。 *10/17  第一話から修正と改訂を初めています。よければ、読み直してみてください。 *R-15としていますが、読む人によってはそう感じるかもしないと思いそうしています。  あと少しパロディもあります。  小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様でも投稿しています。 YouTubeで、ゆっくりを使った音読を始めました。 良ければ、視聴してみてください。 【ゆっくり音読自作小説】女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮) https://youtu.be/cWCv2HSzbgU それに伴って、プロローグから修正をはじめました。 ツイッター始めました。 https://twitter.com/tero_oo

契約師としてクランに尽くしましたが追い出されたので復讐をしようと思います

やなぎ納屋
ファンタジー
 ヤマトは異世界に召喚された。たまたま出会った冒険者ハヤテ連れられて冒険者ギルドに行くと、召喚師のクラスを持っていることがわかった。その能力はヴァルキリーと契約し、力を使えるというものだ。  ヤマトはハヤテたちと冒険を続け、クランを立ち上げた。クランはすぐに大きくなり、知らないものはいないほどになった。それはすべて、ヤマトがヴァルキリーと契約していたおかげだった。それに気づかないハヤテたちにヤマトは追放され…。

退屈な人生を歩んでいたおっさんが異世界に飛ばされるも無自覚チートで無双しながらネットショッピングしたり奴隷を買ったりする話

菊池 快晴
ファンタジー
無難に生きて、真面目に勉強して、最悪なブラック企業に就職した男、君内志賀(45歳)。 そんな人生を歩んできたおっさんだったが、異世界に転生してチートを授かる。 超成熟、四大魔法、召喚術、剣術、魔力、どれをとっても異世界最高峰。 極めつけは異世界にいながら元の世界の『ネットショッピング』まで。 生真面目で不器用、そんなおっさんが、奴隷幼女を即購入!? これは、無自覚チートで無双する真面目なおっさんが、元の世界のネットショッピングを楽しみつつ、奴隷少女と異世界をマイペースに旅するほんわか物語です。

転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!

小川悟
ファンタジー
いじめやパワハラなどの理不尽な人生から、現実逃避するように寝る間を惜しんでゲーム三昧に明け暮れた33歳の男がある日死んでしまう。 しかし異世界転生の候補に選ばれたが、チートはくれないと転生の案内女性に言われる。 チートの代わりに異世界転生の為の研修施設で3ヶ月の研修が受けられるという。 研修施設はスキルの取得が比較的簡単に取得できると言われるが、3ヶ月という短期間で何が出来るのか……。 ボーナススキルで鑑定とアイテムボックスを貰い、適性の設定を始めると時間がないと、研修施設に放り込まれてしまう。 新たな人生を生き残るため、3ヶ月必死に研修施設で訓練に明け暮れる。 しかし3ヶ月を過ぎても、1年が過ぎても、10年過ぎても転生されない。 もしかしてゲームやりすぎで死んだ為の無間地獄かもと不安になりながらも、必死に訓練に励んでいた。 実は案内女性の手違いで、転生手続きがされていないとは思いもしなかった。 結局、研修が15年過ぎた頃、不意に転生の案内が来る。 すでにエンシェントドラゴンを倒すほどのチート野郎になっていた男は、異世界を普通に楽しむことに全力を尽くす。 主人公は優柔不断で出て来るキャラは問題児が多いです。

異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!

アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。 ->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました! ーーーー ヤンキーが勇者として召喚された。 社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。 巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。 そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。 ほのぼのライフを目指してます。 設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。 6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。

気がついたら異世界に転生していた。

みみっく
ファンタジー
社畜として会社に愛されこき使われ日々のストレスとムリが原因で深夜の休憩中に死んでしまい。 気がついたら異世界に転生していた。 普通に愛情を受けて育てられ、普通に育ち屋敷を抜け出して子供達が集まる広場へ遊びに行くと自分の異常な身体能力に気が付き始めた・・・ 冒険がメインでは無く、冒険とほのぼのとした感じの日常と恋愛を書いていけたらと思って書いています。 戦闘もありますが少しだけです。

知識を従え異世界へ

式田レイ
ファンタジー
何の取り柄もない嵐山コルトが本と出会い、なんの因果か事故に遭い死んでしまった。これが幸運なのか異世界に転生し、冒険の旅をしていろいろな人に合い成長する。

転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜

家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。 そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?! しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...? ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...? 不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。 拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。 小説家になろう様でも公開しております。

処理中です...