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第一章 辺境の町
第126話 考察
しおりを挟む――例えば、なんだけど……。
リノが五才の時、食糧難で食べ物がなかった時期があった事から考えて、小さな子が飢餓感に抗えずに、親の目を盗んで何かを食べたのかもしれない。そう、兄弟が食べなかった何かを。
そして、その何かが体に寄生して、魔力を吸収する性質がある、魔物まではいかなくとも悪い魔素を持ったものが入り込んだのかもしれない。『治療』よりも『浄化』の方が効いているみたいだし。
で、体に入り込んだ時期が、元々魔力の少ない幼少期で、食糧難によって免疫力が落ちている時と重なってしまったこともあり寄生を排除できず、活動魔力まで持って行かれてしまう結果に。
焦った身体が魔力を補填しようと活動魔力の奪い合いをし、足りない魔力を食べ物で補おうとして食欲が暴走。止まらなくなってしまったんじゃないかなぁ?
と、いうようなことを推察してリノに話してみた。
「確かにっ。今までで一番、その仮説が可能性あると思います」
村でも出来る範囲で治療はしていた。人より魔力総量が少ないのが原因ではといわれてからは、魔力が多い食べ物をたくさん食べるようにしたけどあまり効果がなく、今回一番効果があると実感できた聖魔法の『浄化』は、村には使い手がいなくて試したことはなかったから。
空腹感はいままで通りっぽいけど、食べ物をみると見境が無くなるというか、理性でコントロール出来ないような飢餓感が消えつつある。
この強迫観念のような強い飢えが常にあって、すごく苦しかったらしい。確かに一緒に食事をしていると、そっちのも欲しいっていうギラギラした視線を感じたよね。あれは自分でもどうしようもなかったのか……それは辛いね。想像以上に深刻だった。
今は、食べる事を純粋に楽しめるようになってきた事がうれしいと、すっごく喜んでくれたんだ。これまでと違って、美味しく味わって食事が出来るようになったって。それが新鮮でつい食べ過ぎちゃうらしい。
うん……最後の方でそこはかとなく食費とかが不安になる言葉を聞いたけど、それを除けばこれはもう完治に向かっていると言っていいんじゃないかなっ?
このまま続ければきっと、魔力も少しずつ増やしていけるし魔法も使える様になるはず!
そのためにも効率的な基本魔法の使い方を勉強して身につけなきゃね。
基本魔法教本が理解出来ると、『魔力感知』『魔力操作』『魔力強化』『身体強化』の四つのスキルが取れる。
リノにすでに『魔力感知』を習得済で、町に来る前から『魔力操作』スキルも練習してきている。
念願だった魔力も今日で増えたと思われるし、あと一歩で習得出来るところまで来たんじゃないかなっ。
「じゃあリノはこのままいつも通り練習してみてね。私はドライフルーツを作るから」
「はいっ、頑張って覚えます!」
二人とも魔力を使う事になるので、先にいつもと同じように支援魔法の重ね掛けしておいた。
と言うわけで、私は今日採ってきたウルルの実とトゲトゲベリーをドライフルーツにしていこうと思う。
まずはウルルの実から。
机の上に、北の森で採ってきた殺菌作用のある大葉を隙間なく並べ、その上に聖魔法の『聖火』を浮かべて作業する。
皮剥きはリノがしてくれてあるし、魔法で下処理済みなので水分も少し抜けて軽くなっているのですぐ出来そう。食べやすい大きさにカットしてから、仕上げの乾燥作業を魔法でパッパとやってしまう。
続けてトゲトゲベリーの方も作っていく。こちらは一つ一つの実が小さいので、ウルルの実よりも簡単だった。
今回は乾燥に風魔法を意識して使ってみたけど、美味しそうに出来あがったよ!
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