123 / 308
第一章 辺境の町
第123話 新たな仕事
しおりを挟むお客さんもまだ来ないことだし、せっかくなので女将さんにも同じテーブルで食べてもらう事にした。
「こりゃまた美味しいねぇ。丁寧に下処理もされてるし、味付けも絶妙じゃないか。特にこの清涼感のある香りがいいよ。ローザちゃんがこんなに料理がうまかったとはっ。うちにスカウトしたいぐらいだよ!」
「ですよねっ。美味しすぎて夢中で食べちゃいましたよ! 私、本当にローザと一緒のパーティー組めてよかったです!」
「そ、そう? 良かった」
でもなんか二人とも褒めすぎじゃないですか? ちょっと照れるんですけどっ、エヘヘヘッ。
……って、まあ私が上手なんじゃなくって、全面的に『料理』スキルのおかげっていうのはわかってますけどね!?
なんか適当にやっててもプロ級の仕上がりになってる気はしてたんだ、うん。美味しいから文句なんか全然ないけれどもっ。
「……ねぇローザちゃん。レシピを教えてくれとは言わないからさ、この香草塩、売ってくれないかい? 値段は……そうだね、この容器一個分で銀貨一枚までなら出すよ、どうだい?」
「え、そんなに!?」
おおっ、結構いいお値段じゃないですか! それに初回だという事で、技術料込みでおまけして今回の香草塩も同額支払ってくれるという。試作品だから少ししか入っていないのに。さすが女将さん、太っ腹ですねっ、素敵!
――そういえば塩単体は比較的安く手に入るけど、ブレンドされたものは香辛料のお店でも結構高価格で売ってたね。ドライフルーツも高かったとリノが言ってたし、加工されて長期保存できるものは割高になるのかな?
しかしこの量で100シクルになるのかぁ、すごくいいねっ。塩以外は原材料費タダだしこれは売るしかない!
「分かりましたっ。それで手を打ちましょう!」
「よしっ、商談成立だね! それでさ、この香草塩、これからも定期的に作って売ってくれないかい? 今回と同じ値段で買い取るからさっ」
「定期的に……ですか」
香草塩に使用する香草は、北の森の比較的浅い場所や、東の草原で安全に手に入れることができるからリノと一緒の活動範囲内で全て揃うし、配合は覚えているので材料さえ揃えればすぐに再現できる。もう一度作ることは可能なんだよね。
お金は何故か二人揃っていつも不足気味だし、いくらあっても困らないから稼げるならやってみたい。
彼女と相談した上で、女将さんの依頼を受けることにした。
「よろしくお願いします! 後で必要な量を教えてくださいね」
「はいよっ。じゃあこれ、今回の香草塩の代金、渡しとくよ」
女将さんから銀貨一枚を受け取る。これはリノの売り込みのおかげで稼げたので、折半することにした。
彼女は遠慮してたけど、私だけだと思い付かなかった稼ぎ方だし、営業って大事だから! 彼女のおかげで一つ、安全で継続的な町中の仕事が手に入った訳だしね。
その上、他にも何かいいのが出来たらそれも一度持ってきてほしいと言ってくれたんだ。お眼鏡に適えば買い取ってくれるんだって!
女将さんの『料理Lv3』のスキルには及ばないけど、私の『料理Lv1』と、リノの『味覚強化Lv2』、『嗅覚強化Lv2』があれば、相乗効果で絶対いいものが出来そうじゃない? なに作ろうかなぁ、今から楽しみ!
それに、もし売り物には微妙なものが出来上がっちゃったとしても、リノが全部平らげてくれるっていうから、安心して挑戦出来るしっ。
ともかく、このお金があればリノも今日からこの宿に泊まれる。パーティーを組んだからには一緒にいた方が都合がいいから、女将さんの申し出は丁度よかったよ。これは二人分の『幸運』スキルがいい仕事してくれたのかも!?
0
お気に入りに追加
923
あなたにおすすめの小説
女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)
土岡太郎
ファンタジー
自分の先祖の立派な生き方に憧れていた高校生の少女が、ある日子供助けて死んでしまう。
死んだ先で出会った別の世界の女神はなぜか彼女を気に入っていて、自分の世界で立派な女性として活躍ができるようにしてくれるという。ただし、女神は努力してこそ認められるという考え方なので最初から無双できるほどの能力を与えてくれなかった。少女は憧れの先祖のような立派な人になれるように異世界で愉快で頼れる仲間達と頑張る物語。 でも女神のお気に入りなので無双します。
*10/17 第一話から修正と改訂を初めています。よければ、読み直してみてください。
*R-15としていますが、読む人によってはそう感じるかもしないと思いそうしています。
あと少しパロディもあります。
小説家になろう様、カクヨム様、ノベルアップ+様でも投稿しています。
YouTubeで、ゆっくりを使った音読を始めました。
良ければ、視聴してみてください。
【ゆっくり音読自作小説】女神のお気に入り少女、異世界で奮闘する。(仮)
https://youtu.be/cWCv2HSzbgU
それに伴って、プロローグから修正をはじめました。
ツイッター始めました。 https://twitter.com/tero_oo
契約師としてクランに尽くしましたが追い出されたので復讐をしようと思います
やなぎ納屋
ファンタジー
ヤマトは異世界に召喚された。たまたま出会った冒険者ハヤテ連れられて冒険者ギルドに行くと、召喚師のクラスを持っていることがわかった。その能力はヴァルキリーと契約し、力を使えるというものだ。
ヤマトはハヤテたちと冒険を続け、クランを立ち上げた。クランはすぐに大きくなり、知らないものはいないほどになった。それはすべて、ヤマトがヴァルキリーと契約していたおかげだった。それに気づかないハヤテたちにヤマトは追放され…。
退屈な人生を歩んでいたおっさんが異世界に飛ばされるも無自覚チートで無双しながらネットショッピングしたり奴隷を買ったりする話
菊池 快晴
ファンタジー
無難に生きて、真面目に勉強して、最悪なブラック企業に就職した男、君内志賀(45歳)。
そんな人生を歩んできたおっさんだったが、異世界に転生してチートを授かる。
超成熟、四大魔法、召喚術、剣術、魔力、どれをとっても異世界最高峰。
極めつけは異世界にいながら元の世界の『ネットショッピング』まで。
生真面目で不器用、そんなおっさんが、奴隷幼女を即購入!?
これは、無自覚チートで無双する真面目なおっさんが、元の世界のネットショッピングを楽しみつつ、奴隷少女と異世界をマイペースに旅するほんわか物語です。
転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!
小川悟
ファンタジー
いじめやパワハラなどの理不尽な人生から、現実逃避するように寝る間を惜しんでゲーム三昧に明け暮れた33歳の男がある日死んでしまう。
しかし異世界転生の候補に選ばれたが、チートはくれないと転生の案内女性に言われる。
チートの代わりに異世界転生の為の研修施設で3ヶ月の研修が受けられるという。
研修施設はスキルの取得が比較的簡単に取得できると言われるが、3ヶ月という短期間で何が出来るのか……。
ボーナススキルで鑑定とアイテムボックスを貰い、適性の設定を始めると時間がないと、研修施設に放り込まれてしまう。
新たな人生を生き残るため、3ヶ月必死に研修施設で訓練に明け暮れる。
しかし3ヶ月を過ぎても、1年が過ぎても、10年過ぎても転生されない。
もしかしてゲームやりすぎで死んだ為の無間地獄かもと不安になりながらも、必死に訓練に励んでいた。
実は案内女性の手違いで、転生手続きがされていないとは思いもしなかった。
結局、研修が15年過ぎた頃、不意に転生の案内が来る。
すでにエンシェントドラゴンを倒すほどのチート野郎になっていた男は、異世界を普通に楽しむことに全力を尽くす。
主人公は優柔不断で出て来るキャラは問題児が多いです。
異世界召喚?やっと社畜から抜け出せる!
アルテミス
ファンタジー
第13回ファンタジー大賞に応募しました。応援してもらえると嬉しいです。
->最終選考まで残ったようですが、奨励賞止まりだったようです。応援ありがとうございました!
ーーーー
ヤンキーが勇者として召喚された。
社畜歴十五年のベテラン社畜の俺は、世界に巻き込まれてしまう。
巻き込まれたので女神様の加護はないし、チートもらった訳でもない。幸い召喚の担当をした公爵様が俺の生活の面倒を見てくれるらしいけどね。
そんな俺が異世界で女神様と崇められている”下級神”より上位の"創造神"から加護を与えられる話。
ほのぼのライフを目指してます。
設定も決めずに書き始めたのでブレブレです。気楽〜に読んでください。
6/20-22HOT1位、ファンタジー1位頂きました。有難うございます。
気がついたら異世界に転生していた。
みみっく
ファンタジー
社畜として会社に愛されこき使われ日々のストレスとムリが原因で深夜の休憩中に死んでしまい。
気がついたら異世界に転生していた。
普通に愛情を受けて育てられ、普通に育ち屋敷を抜け出して子供達が集まる広場へ遊びに行くと自分の異常な身体能力に気が付き始めた・・・
冒険がメインでは無く、冒険とほのぼのとした感じの日常と恋愛を書いていけたらと思って書いています。
戦闘もありますが少しだけです。
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる