上 下
39 / 308
第一章 辺境の町

第39話 挑戦中

しおりを挟む


 ――衝撃の夕食後、宿屋で借りた一人部屋へ向かう。

 そこは、三階の階段近くにある部屋だった。二階は長期の宿泊客用なんだそう。

 ベッドの他にサイドテーブルとクローゼットがあるだけの、少し手狭まなワンルーム。
 でも壁掛け時計もあり、鏡の前には簡単な洗面台に水差しとコップが木の桶に入れて置いてあって最低限のものは揃っている。

 全体的に居心地良く清潔に整えられた部屋で、あまり日本と変わらない文化水準にほっとした。 これならあまり戸惑わずに済みそうです。
 
 違うところといえば時計や水差しなどが全て、魔道具なところだろうか。『 異世界知識』によると、電気の代わりに魔石を主な動力源として使っているようだから。

 このワンタッチでいくらでも飲み水が出てくる水差し……便利でいいなぁ、欲しい。魔石に魔法を付与しているみたいだけど、どうやってるんだろ? う~ん、不思議だ。



 夕飯にカルチャーショックを受けたことで精神的に疲れてまだ立ち直れていないけど、今夜はまだまだやることがあるんだよね。その為に、高くても安全な宿を取ったんだから。

 ずっと確かめたかった事……それは、効率の良い強化の方法があるのかどうかということ。



 ――ゴブリン集団との戦闘で痛感した。

 私は弱い。

 エルフの得意な魔法のスキルを複数取っているから、すぐ戦闘で使えたけれど、一つ一つの威力はまだ弱い。
 ゴブリンより強い魔物と遭遇したら、通用しないんじゃないかと思えて怖いんだよね。

 この世界に来てから四日目だけど、未だに一つの新スキルも取れず、既存のスキルも、全くレベルアップしてないのも、不安に拍車をかけている。
 あれだけ毎日戦闘し、魔物を倒していたのに微動だにしないんだよ……生き残る為に少しでも早く強くなりたいのに。

 という訳で、元々この世界の住民じゃない私が、白い部屋以外で新たにスキルが取れるのかということや、魔物を倒した経験値がないとスキルアップしないのかということの検証を一度、安全な所で試したかった。



 経験値については今のところどう調べればいいか解らないから放置して、まずは……。


 ――新スキルを獲得出来るかの検証からしてみようと思う。


『魔力操作』スキルなら比較的簡単にいけるんじゃないかな、と考えたんだ。

 例の白い部屋にいた時、スキル一覧表にあって選ばなかったものだけど、実際ここ数日、ずっと魔法を使って色々している訳だし。

 袋を作ったり保存食作りをしたりと、魔力を操作しないと出来ない事、毎日いっぱいしてると思うし?

 何よりあの、結構高度な茸狩りとか果物狩りとかもした訳だしね……いや高度な茸狩りってなんだよ。
 魔法で果物狩り……う~ん、いや深く考えないでおこう、混乱するし今考えるのはそこじゃないから。


 ――ま、まあそれはともかく、『魔力操作』なら成功する可能性が一番高いと考えたんだ。挑戦してみようと思う。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界召喚に巻き込まれた一般人、馬鹿にされたので勇者より先に悪者を倒します

カタナヅキ
ファンタジー
高校の受験を間近に迫った少年「霧崎レア」彼は学校の帰宅の最中、トラックの衝突事故に巻き込まれそうになる。すると偶然にも傍に居た四人の高校生の足元に「魔法陣」が誕生し、彼等と一緒に謎の光に飲み込まれてしまう。 気付いたときには五人は見知らぬ中世風の城の中に存在し、彼等の目の前には老人の集団が居た。話を聞くと現在の彼等が存在する場所は「異世界」であり、元の世界に戻るためには自分達に協力し、世界征服を狙う「魔人族」と呼ばれる存在を倒すように協力を願われる。 だが、世界を救う勇者として召喚されたはずの人間には特別な能力が授かっているはずなのだが、伝承では勇者の人数は「四人」のはずであり、召喚された状況から考えてレアは召喚に巻き込まれただけの一般人だと判断されて城から追放されてしまう―― ――しかし、追放された後にレアは勇者にも匹敵する能力があると発覚し、彼は異世界を自由気ままに暮らすことに決めた。

連帯責任なんて聞いてないっ! 淫魔の呪いを解くためにムカつくあいつと関係を持つことになってしまった

雪之
恋愛
魔術研究学園の生徒であるアリシアは、精霊の召喚実習で失敗してしまった。気付けば身体に精霊の紋章が刻まれ、それは深夜になると赤紫色の燐光を放ち始める。一緒に実習をした男子生徒・ロシュに助けを求めると、それは淫魔の紋章だと言われてしまい……。いつも揉めている二人が不可抗力で関係を持ってしまう、異世界学園モノ。

【完結】真実の愛だと称賛され、二人は別れられなくなりました

紫崎 藍華
恋愛
ヘレンは婚約者のティルソンから、面白みのない女だと言われて婚約解消を告げられた。 ティルソンは幼馴染のカトリーナが本命だったのだ。 ティルソンとカトリーナの愛は真実の愛だと貴族たちは賞賛した。 貴族たちにとって二人が真実の愛を貫くのか、それとも破滅へ向かうのか、面白ければどちらでも良かった。

ソーダの魔法〜ヘタレな溺愛初彼氏は炭酸飲んだら人格変わってドSになっちゃうやつでした〜

緒形 海
BL
真野深月(まの・みつき)20歳、最近自分がゲイであることを自覚し始めた大学生。 ある日のバイト帰り、深月は居酒屋ホールスタッフ仲間・篠原蒼太(しのはら・そうた)から突然の愛の告白を受けてしまう。 デカい図体に似合わず気弱で優しすぎるヘタレ気味な蒼太。はっきり言ってあまり好みのタイプではなく……考えた末、深月はお試しとして1週間の期間限定で交際okの返事をすることに。 ただ、実は…蒼太にはある秘密があった。 彼は炭酸の飲み物がめちゃくちゃ苦手で、一口でも飲んでしまうと人格がチェンジしてしまうという謎体質の持ち主だったのである…。 受け⚪︎真野 深月 まの みつき MM 攻め⚫︎篠原 蒼太 しのはら そうた SS 人格豹変もの&ソフトSMチックな話が書きたくて生まれた作品です。 R18指定。過激描写のシーンがあるエピソードには▽マークが入ります。背後にご注意くださいませ。 いろんな炭酸が出てくる予定…です。 ヘタレでドSでヤンデレ気味な溺愛攻めに愛されるといういろいろてんこもりのよくばりセット☺︎ハピエン保証♡

【猫画像あり】島猫たちのエピソード

BIRD
エッセイ・ノンフィクション
【保護猫リンネの物語】連載中! 2024.4.15~ シャーパン猫の子育てと御世話の日々を、画像を添えて綴っています。 2024年4月15日午前4時。 1匹の老猫が、その命を終えました。 5匹の仔猫が、新たに生を受けました。 同じ時刻に死を迎えた老猫と、生を受けた仔猫。 島猫たちのエピソード、保護猫リンネと子供たちのお話をどうぞ。 石垣島は野良猫がとても多い島。 2021年2月22日に設立した保護団体【Cat nursery Larimar(通称ラリマー)】は、自宅では出来ない保護活動を、施設にスペースを借りて頑張るボランティアの集まりです。 「保護して下さい」と言うだけなら、誰にでも出来ます。 でもそれは丸投げで、猫のために何かした内には入りません。 もっと踏み込んで、その猫の医療費やゴハン代などを負担出来る人、譲渡会を手伝える人からの依頼のみ受け付けています。 本作は、ラリマーの保護活動や、石垣島の猫ボランティアについて書いた作品です。 スコア収益は、保護猫たちのゴハンやオヤツの購入に使っています。

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

転生王子はダラけたい

朝比奈 和
ファンタジー
 大学生の俺、一ノ瀬陽翔(いちのせ はると)が転生したのは、小さな王国グレスハートの末っ子王子、フィル・グレスハートだった。  束縛だらけだった前世、今世では好きなペットをモフモフしながら、ダラけて自由に生きるんだ!  と思ったのだが……召喚獣に精霊に鉱石に魔獣に、この世界のことを知れば知るほどトラブル発生で悪目立ち!  ぐーたら生活したいのに、全然出来ないんだけどっ!  ダラけたいのにダラけられない、フィルの物語は始まったばかり! ※2016年11月。第1巻  2017年 4月。第2巻  2017年 9月。第3巻  2017年12月。第4巻  2018年 3月。第5巻  2018年 8月。第6巻  2018年12月。第7巻  2019年 5月。第8巻  2019年10月。第9巻  2020年 6月。第10巻  2020年12月。第11巻 出版しました。  PNもエリン改め、朝比奈 和(あさひな なごむ)となります。  投稿継続中です。よろしくお願いします!

【完結】騎士団をクビになった俺、美形魔術師に雇われました。運が良いのか? 悪いのか?

ゆらり
BL
 ――田舎出身の騎士ハス・ブレッデは、やってもいない横領の罪で騎士団をクビにされた。  お先真っ暗な気分でヤケ酒を飲んでいたら、超美形な魔術師が声を掛けてきた。間違いなく初対面のはずなのに親切なその魔術師に、ハスは愚痴を聞いてもらうことに。  ……そして、気付いたら家政夫として雇われていた。  意味が分からないね!  何かとブチ飛でいる甘党な超魔術師様と、地味顔で料理男子な騎士のお話です。どういう展開になっても許せる方向け。ハッピーエンドです。本編完結済み。     ※R18禁描写の場合には※R18がつきます。ご注意を。  お気に入り・エールありがとうございます。思いのほかしおりの数が多くてびっくりしています。珍しく軽い文体で、単語縛りも少なめのノリで小説を書いてみました。設定なども超ふわふわですが、お楽しみ頂ければ幸いです。

処理中です...