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第一章 辺境の町
第25話 初めての共闘・後編
しおりを挟む「あんたエルフか。いや大変だったな。怪我はないか?」
大剣を収めてこっちに来た彼が、チラリと私の尖った耳を見て言った。
ーーあ、そうでした。
先ほどの戦闘で、フードなんかもうすっかり取れちゃってましたよ。でもバレた相手が狼人族さんなのでまあいいとする。
「ええ、大丈夫です。もうダメかもと思いましたが……助けていただき、本当にありがとうございました」
「いやこっちもちょうど行く道筋だったからな。間に合ってよかったよ。これから向こうの村に知り合いを訪ねて行く途中だったんだ」
それってさっきまでいた村の事?
「……もしかして狼人族の冒険者さんがいる村ですか?」
「そうだけど、あんた知ってんのか?」
あの時見た獣人さんのことだよね多分、ジーンさんが村専属の冒険者だと言ってた人。
「先程立ち寄ったばかりですが、出張所で少し聞いたんです」
「ああ、ジーンさんからか。そうだよそいつに会いに行く途中でな。それよりこれどうする? 山分けでいいか」
二人とも周囲を警戒しつつも、魔石を取る手を止めずに話していたのだが、彼はこちらに有利すぎるそんな提案をしてきてくれた。いい人。
「いやいやそれは悪いです。危ないところを助けて頂いた上に、ほとんど貴方に倒してもらったのに」
「でもあんたも魔法で援護してくれただろ。あれ助かったよ。それに俺が加勢する前、あんた一人で倒してたのも随分あるだろ? だからあんたにも権利が……って名前がないと呼びにくいな、俺は狼人族のラグナードだ。あんたの名も聞いてもいいか?」
この人名前も格好いいんだ……とっても似合ってる。
それに比べて私のって、ベタで派手な偽名だよね。名乗るの恥ずかしいなぁ、もう。
だ、だって、私は薔薇ですって自己紹介するようなもんじゃない!?
……安易に決め過ぎたかなぁ。人に名乗る時の事まで考えてなかったや。自意識過剰なのは分かっているけど、やっぱり恥ずかしいです!
でも他に名乗る名もないしね……はあぁ、仕方ない。
「エルフのローザです」
「ローザさんか。ともかくローザさんにも権利があるから魔石を集めて早くここを離れよう。さっきの奴らが戻ってこないとも限らないしな」
「確かにそうですね。急ぎましょう。あ、名前、呼び捨てでいいです」
「分かった。俺も呼び捨てでいいし敬語もいらない。……そういえば村から来る時、ここ以外で魔物に遭遇したか?」
「いえ、一度もなかったけどラグナードは?」
「そうだな、俺も町からここまではなにも遭遇しなかった。元々ここらは伐採が追い付いてない場所で、たまに街道まで魔物が出ることもあるんだよ。今回はローザがいたから楽に倒せたけどな」
「私もちょうどよくラグナードが通りかかってくれなかったら危なかった。ありがとう」
「いいってことさ。冒険者同士、助け合わないとな」
それから魔石を均等割りし、その後、死骸を一か所に集めた。ラグナードが土魔法で掘ってくれた穴に奴らを捨ててから焼却し、手早く後始末を終える。
二人ですると、時間もかからずあっという間だったよ。よかった。
「じゃあ俺は予定通り村に行くよ。こっから町までだと森もどんどん拓けていくし、あれだけ魔法が使えるなら一人でも大丈夫だと思うぞ。ボトルゴードの町を拠点にするなら会うこともあるだろ。またな」
「うん、色々ありがと。またね」
お互い進む方向が逆なので、ここであっさりと別れることになった。
なんか私、今日はこの世界の人達に助けられてばかりだ。
欲しい情報をこうやって教えてくれるのって、とっても助かる。本当ありがたいよね。
ーー町まであと半分ちょっと、気をつけていこう。
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