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第一章 辺境の町
第22話 村の酒場で
しおりを挟む――ここが冒険者ギルドの委託を受けてるという酒場かぁ。
まだ朝早いからか、閑散としていて誰も居なかったけど、ドアベルが聞こえたのか、カウンターの奥から色っぽいお姉さんがすぐに出てきてくれた。
「おはようございます! ジーンさんですか?」
「あら、おはよう。よく知ってたねぇ、私がジーンだと。初めて見る顔だよね? こんなに朝早く、どうしたんだい?」
「さっき外の畑で村の人にここの事を聞いてきたんです、ジーンさんのことも。旅をしてるんですが、これを買い取ってくれるとこを探してて……」
ホーンラビット二体まるごとと、角と魔石を別に2体分、カウンターに置いて見せる。
「ああそうだったの、ここで買い取れるよ。ギルド証はあるかい?」
「ないです。登録できますか?」
「いいや、隣町に行かないと駄目だねぇ。やってあげたいけどここは新しい出張所だからね。まだ実績がないし、そういうのは出来ないんだよ。買い取ってもいいけど解体料と手数料が別額かかるから、少し安くなる。それでもいいかい?」
やっぱり安くなるんだ、残念。でも今は、少し換金しておきたい。
この村にはなかったけど町に入るための通行税とか、ギルドの登録料だけでも稼ぎたいから。何しろ、手持ちのお金が全然ない状況だからね!
聞いてみるとやっぱり隣町は通行税として大銅貨1枚、ギルド登録料は大銅貨5枚かかるらしい。
だとすると、併せて最低でも大銅貨6枚は欲しいな。後は隣町でギルド証を作ってからのがお得になるかもしれないし。
――ちなみに通貨価値は日本円と比較すると……。
銅貨1枚=百円
大銅貨1枚=千円
銀貨1枚=一万円
大銀貨1枚=十万円
金貨1枚=百万円
ぐらいになっている。もっと上の通貨もあるらしいけど、流通しているのは大体こんな感じ。
お金の単位はシクルというらしく、銅貨1枚で1シクルなんだとか。
これも『異世界知識』からなんだよね。あの時、取っておいて本当よかったよ。
ただ素材の価値は、地域や時期によって割りと変動するらしく、これで足りるかどうかはっきりとしない。
ひとまず査定して貰う事にした。
「おや、あんたエルフかい? 珍しいね。ここらじゃなかなか見ないよ」
――あ、バレた。
間近で見られたせいで分かっちゃったらしい。ギルド関係者ならいろんな種族を相手に慣れてるだろうしまあ問題ないだろう……たぶん。
「この村にはいないんですか」
「ああ、いないね。獣人族なら一人いるんだけど。この村の専属冒険者さ」
あの時見えていた人は冒険者さんだったのか。
「町中よりこっちの方が暮らしやすいって言って専属になってくれたんだよ。すごく強くてね、村の皆が助かってるのさ」
森の近くが落ち着くっていうのはなんか分かるな。私もエルフになったからか、森の中って危険なのになんか落ち着けてたし、高い樹の上でも割りと快適に寝れてたし。
エルフって森の妖精さんだし本能みたいなものかもしれない。
ちなみにその人は、狼の獣人族さんらしいよ。
「お待たせ、全部で75シクルになるよ。どうする、全部買い取るかい?」
「はい、それでお願いします」
大銅貨7枚と銅貨5枚を渡された。
よかった。足りなければ追加しようと思っていたけど、ギリギリなんとかなった。
「隣町のボトルゴードならこの街道を半日も歩けば着くからね。あそこならギルド登録も出来るし、冒険者の仕事もここよりずっと多い。町中の治安も比較的いいし」
「そうなんですね。ありがとうございます、行ってみます」
「ああ、気をつけて行っておいで」
親切に教えてくれたジーンさんにお礼を言って酒場を出る。
――いい村だったな。
心配してた長寿種族に対する偏見や害意もなかったし、次の町の情報まで色々教えてくれたし。
歩いて半日なら走って行ったらお昼までに着けるかもしれない。
後ちょっとだけ頑張ろう。今日こそは宿を取ってベッドで寝るんだ!
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