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第一章 辺境の町
第7話 出来ることと、できないことと
しおりを挟む――さて、これで今使える魔法の確認はできた。
ただ、飲み水や火起こしなんかも期待して火魔法と水魔法を取ったんだけど、思ったより攻撃に特化してて生活に使用できるようなやさしい魔法じゃなかったのが誤算だったかも。
一応、『水弾』と『火弾』でどっちも代用出来ないことはない……かもしれないけれど、今は無理。
まだまだコントロール不足で、出力調整とか出来ないし、勢いが良すぎてあっち向いて飛んでっちゃうからさ。
でも、水飲めないと死んじゃうよね……。
最悪、危険を覚悟で自分の口の中に『水弾』を打つしかないのか?
いや、そんなことしたら本当に死んじゃうか。
……う~ん。
いやいや落ち着け私!
バカなの!?
そんな生きるか死ぬかみたいな博打を打たなくても、もっと何かいい手はあるはずだからっ。他の方法を考えてみよう!
えっと、魔法の威力が弱ければいいだけなんだから……あ、そうだっ。例えば着火とか水作成とかそういう感じのやつを想像して試してみるとか。ど、どうかなっ!?
魔法を使うのは今日が初めてだし、魔力操作は難しそうだし、イメージだけで上手くいくかどうか分からないけれど。
でも、私の勘違いじゃなければ、魔法の発動にはイメージが結構大事だって、さっき練習してて思ったから。
失敗してもいい、一度やってみよう。
挑戦しないと始まらないしねっ。
レベルが高い火魔法の方が、成功しやすい……かも知れないからまずはそっちから。
ライターに火を着けるみたいに、シュバっとこう指先に意識を集中させて着火を想像して細く弱く魔力を絞る感じで、こぅ……『着火』。
――シュポッ。
……アレ?
指先に、ちっちゃな火が灯った。
……。
ナンカデキマシタネ。カンタンダッタ。
ふぅ、なんてことなかったですね。
――じ、じゃあ次。
コップに入った水のように両掌の上に水作成することを想像して……優しく魔力を流して……『水作成』。
コポコポコッポッ。
おおっ、これはこれは。掌の上に透明な水がっ。
コクコク、ゴクリ。
……ミズサクセイ、デキタ。オイシカッタデス。
本当、簡単でしたね――。
ま、まあどうなる事かと思ったけど上手くいって良かったと言うことでっ。 呪文は適当だったのに、なぜ成功したのか……分かんないや。イマジネーションの方が大事だってことなのかなぁ……う~ん?
で、でもまぁこれで火を起こす為に枯れ枝を探したり、飲み水を求めて森の中をさ迷わなくても良くなったんだし……深く考えないでおこう、うん。出来たんだから何でもいいや。
さて、問題も解決したし、聖魔法の『浄化』で体の汚れも落とそう。うん、いいね、さっぱりする。これならかなり快適に野宿出来るはず。臭いも消せるから、魔物とかにも見つかりにくくなるだろうし。
やっぱりサバイバルを想定してスキル構成したの正解だったね。あの時、現実だと考えてスキル構成した自分を誉めてあげたい! 過去の自分、ナイスです!
それからもう一つ、朗報あるんだ。
今回、結構たくさん魔法を使ったんだけど、全然減ってる気がしないんだよね。『魔力強化Lv2』があるからか、魔力に余裕があるみたい。
エルフの種族特性が魔法に強いことも関係してるのかな? 思ったより魔力総量が多いのかも。
それに加えて、支援魔法の『HP回復』『MP回復』もあるし、上手く使えば生存率が少し上がりそう。
この情報が、最初期に得られたのは大きいよね。
じゃあ早速、『鑑定』と『採取』スキルを使って食べられるものを探そうか。時間ないし。
すぐ食べられる木の実とか果物とかがあるといいなあ……じゅるり。
あ、魔物さんは出てこなくていいです。まだちょっと直接命を奪う、心の準備は出来ていないので……。『異世界知識』によれば魔物肉って食べれるみたいだし、美味しいらしいから食べてみたくはあるけど……。
あ、明日! 明日から頑張るから、ねっ!?
というわけで『索敵』スキルを展開して警戒しつつ、静かに林の中を進む。
『マップ作成』で街道からの距離も見つつ迷わないように進んで行くと、何とか日が暮れるまでに食べられそうなものを幾つか見つけられた。
よかったよもうお腹ペコペコだよ~!
本当は火を起こしたかったけど、その匂いで魔物とか肉食動物的な何かが寄って来たら怖いし、聖魔法で『浄化』だけして食べた。
『鑑定』スキルでは生のままで食べても毒じゃないとなってたけど、美味しさを求めてはいけない味だったよね……渋くて苦かった記憶しか残ってない。せめて果物とかが採れてたらなぁ。
こんな短時間では都合よく調味料的なものも見つからなかったし、『料理』スキルの活躍の場はおあずけでした……残念。明日に期待しとこ。
でも安全第一だから!
最初期が一番生存率が低くて危ない気がするし!
命大事に! 慎重に頑張るよ――。
――こうして到着一日目の夜は、無事に終了。
木の上で枝と自分とを蔦でぐるぐるに巻いて、落っこちないようにしてから寝ることにしたのでした。お休みなさい。
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