上 下
7 / 10

第7話 モフモフの魅力を語りました

しおりを挟む
 

 祈りの時間以外は自由にしていいと言われているので、紫音は長年の夢を叶えることにした。

 それは、日本の住宅事情では叶えられなかった切なる願い……。

「庭で犬を飼いたい!」

 ということ。幸い、広すぎる庭を持つ魔王城はその点を楽々とクリアしている。

「うん、飼うのはいいけど……その、イヌっていうのは何かな? 魔導師長知ってる?」

「はて? 私も聞いたことがないですね。異世界のペットですか?」

「嘘やん……も、もしかしてここにはおらへんとか、そうゆうオチかいな!?」

「まあまあ、落ち着いてください」

「う~ん……そうだ! ちょっとそれの特徴とか、教えてくれないかな?」

「わ、分かったっ」



 犬とはかくかくしかじかで、めっちゃモフモフしてて可愛らしい生き物なんだと二人に力説したところ、納得したように魔導師長が言った。

「成る程、つまりフェンリルの仔の小型版ってとこですか」

「フ、フェンリルやて? そんな幻獣がホンマにおるんかいな。何それめっちゃ見てみたいねんけど!!」

 想像上の幻獣が普通に存在しているという状況に、さすが異世界、現実がファンタジーしていると興奮しきりの紫音である。

「うん、いいよぉ。でもここには今いないから後でね! そっかぁ、シオンもモフモフ好きなんだっ、気が合うね!」

「ちゅうことは魔王さんもかいな」

「シ・オ・ン。違うでしょ。魔王さんじゃなくて名前で呼んで? って」

 迫力のある笑顔を張り付けた魔王陛下が、麗しいご尊顔をグイグイと近づけながら不満そうに囁く。

「ぬおぉぉっ、近い近い近い! 耳元で喋らんといてんかっ」

「あはははっ、ごめんごめん」

「全くもう、私の目の前でイチャイチャするなら相談に乗りませんよ」

「誰がイチャついとんねんっ」

「そうだよねっ。真面目に大切な事を話していただけだよね!」

「ハイハイ、そうゆうのいいですから。陛下、例のアレなら条件を満たしているかと思われますが……。貰い手を探されていましたし、シオンにちょうどいいのでは?」

「……っ! それだっ。ちょっと宰相のところに行ってくる!」

 こうして、同じモフモフ好きの家主(?)のおかげで、彼女の願いはすぐに叶えらる事になった。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

追放された薬師は騎士と王子に溺愛される 薬を作るしか能がないのに、騎士団の皆さんが離してくれません!

沙寺絃
ファンタジー
唯一の肉親の母と死に別れ、田舎から王都にやってきて2年半。これまで薬師としてパーティーに尽くしてきた16歳の少女リゼットは、ある日突然追放を言い渡される。 「リゼット、お前はクビだ。お前がいるせいで俺たちはSランクパーティーになれないんだ。明日から俺たちに近付くんじゃないぞ、このお荷物が!」 Sランクパーティーを目指す仲間から、薬作りしかできないリゼットは疫病神扱いされ追放されてしまう。 さらにタイミングの悪いことに、下宿先の宿代が値上がりする。節約の為ダンジョンへ採取に出ると、魔物討伐任務中の王国騎士団と出くわした。 毒を受けた騎士団はリゼットの作る解毒薬に助けられる。そして最新の解析装置によると、リゼットは冒険者としてはFランクだが【調合師】としてはSSSランクだったと判明。騎士団はリゼットに感謝して、専属薬師として雇うことに決める。 騎士団で認められ、才能を開花させていくリゼット。一方でリゼットを追放したパーティーでは、クエストが失敗続き。連携も取りにくくなり、雲行きが怪しくなり始めていた――。

ぽっちゃり女子の異世界人生

猫目 しの
ファンタジー
大抵のトリップ&転生小説は……。 最強主人公はイケメンでハーレム。 脇役&巻き込まれ主人公はフツメンフツメン言いながらも実はイケメンでモテる。 落ちこぼれ主人公は可愛い系が多い。 =主人公は男でも女でも顔が良い。 そして、ハンパなく強い。 そんな常識いりませんっ。 私はぽっちゃりだけど普通に生きていたい。   【エブリスタや小説家になろうにも掲載してます】

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろうにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

死霊王は異世界を蹂躙する~転移したあと処刑された俺、アンデッドとなり全てに復讐する~

未来人A
ファンタジー
主人公、田宮シンジは妹のアカネ、弟のアオバと共に異世界に転移した。 待っていたのは皇帝の命令で即刻処刑されるという、理不尽な仕打ち。 シンジはアンデッドを自分の配下にし、従わせることの出来る『死霊王』というスキルを死後開花させる。 アンデッドとなったシンジは自分とアカネ、アオバを殺した帝国へ復讐を誓う。 死霊王のスキルを駆使して徐々に配下を増やし、アンデッドの軍団を作り上げていく。

最恐魔女の姉に溺愛されている追放令嬢はどん底から成り上がる

盛平
ファンタジー
幼い頃に、貴族である両親から、魔力が少ないとう理由で捨てられたプリシラ。召喚士養成学校を卒業し、霊獣と契約して晴れて召喚士になった。学業を終えたプリシラにはやらなければいけない事があった。それはひとり立ちだ。自分の手で仕事をし、働かなければいけない。さもないと、プリシラの事を溺愛してやまない姉のエスメラルダが現れてしまうからだ。エスメラルダは優秀な魔女だが、重度のシスコンで、プリシラの周りの人々に多大なる迷惑をかけてしまうのだ。姉のエスメラルダは美しい笑顔でプリシラに言うのだ。「プリシラ、誰かにいじめられたら、お姉ちゃんに言いなさい?そいつを攻撃魔法でギッタギッタにしてあげるから」プリシラは冷や汗をかきながら、決して危険な目にあってはいけないと心に誓うのだ。だがなぜかプリシラの行く先々で厄介ごとがふりかかる。プリシラは平穏な生活を送るため、唯一使える風魔法を駆使して、就職活動に奮闘する。ざまぁもあります。

転生ドラゴンの魔法使い~魔法はガチでプログラムだった~

喰寝丸太
ファンタジー
ブラック企業のプログラマーだった俺はある日倒れて帰らぬ人となったらしい。 神様に会う事も無く何故かドラゴンとして転生。 ドラゴンは産まれた時から最強だった。 やる事も無く食っちゃ寝する日々。 そして、ある日人間の集団に出会い、その一人が使った魔法に俺は魅せられた。 使いたい、魔法が使いたい、使いたいったら、使いたい。 それからは人間をこっそり観察して呪文を集める日々。 そしてある日、気づいた呪文の法則に。 それはプログラムだった。 それから俺は言葉が喋れない壁を乗り越え、呪文の製作者となった。 そんな俺がドラゴンの賢者と褒め称えられ、守護竜となるまで。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

チートがん積みで転生したけど、英雄とか興味ないので異世界をゆるっと旅行して楽しみます!~ところで《放浪の勇者》って誰のことですか?~

メルメア
ファンタジー
チートがん積みで異世界に転生した元社畜のクロは、冒険者協会で働くエリスと出会う。 元の世界では叶えられなかった世界を旅してまわるという夢をエリスに語ったクロは、ちょうど各地の冒険者協会を視察しに行こうとしていたエリスの旅に用心棒として同行することに。 いろいろな観光名所を楽しんだり、その土地のグルメを楽しんだり、正体を隠して各地の問題をチート活かし解決したり……。 遊び半分、仕事半分の旅を楽しみながら、2人の関係もどんどん深まっていく。 そしていつしか、ピンチの時に現れるチート級に強い《放浪の勇者》がいるなんて噂が出始めて……? でも英雄とか興味ないです。有名になっちゃったら、落ち着いて旅ができないから。 そんなマインドでクロは、エリスと一緒に異世界をゆるっと旅してまわるのだった。

気配消し令嬢の失敗

かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。 15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。 ※王子は曾祖母コンです。 ※ユリアは悪役令嬢ではありません。 ※タグを少し修正しました。 初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン

処理中です...