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勘違いの配慮
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コトリ、とローテーブルに水が置かれる。
「桜、飲んだみたいだから水でいいかな」
「うん……、ありがとう」
ソファーの隣に檸檬くんが腰掛け、ヨシヨシと撫でてくる。
「腕と手首、痕になっちゃうね」
「うん……、油断しちゃった」
そっと触れるか触れないかのところに添えられる手に、少しドキドキしつつ……
苦々しい気持ちを抑えるように微笑むと、聞いてくれる?と前置きし、事の経緯を話す。
「そっかぁ……怖かったろうな、桜」
「檸檬くんがきてくれて、本当に助かった。ありがとう」
「また行き違いがあるといけないから、会社の友達にはちゃんと話しておいた方が良いと思う」
「うん。私もそう思う」
ソファーに脱力しもたれかかると、なんだか一気に疲れが襲ってくる気がした。
「そういえば、よくお店の場所わかったね?」
「あの会社の通り沿いのバー、そんなに多くないからね。桜の会社に近いところから回っていったから、遅くなった」
もう少し早く着いてれば……なんて、酷く悔いるような表情で話す。
そういえばあの時、汗だくになっていたっけ。
走って探し回ったのかな。
心配かけちゃったな。
檸檬くんの口が何やら言葉を紡いでいるが、急激に眠気が。
争いようのない大波に攫われるように、ソファーに身を委ねたまま意識を手放した。
◇◇◇
お昼休み、翠ちゃんと一緒にランチをとる。
「ーーっと、そんなことがありましてーー。今後、池田 将さんに声をかけられても、私は関わらないようにさせて欲しいんだーー」
膝に乗せたコンビニのお弁当をいじりながら話した。
折角気を遣ってくれたのに、それに面倒に巻き込んでごめんね、と伝えると、真っ青な顔をして固まった翠ちゃんは、ポロリとお弁当の箸を落とし。
その口が突如ワナワナと震え出す。
「さ、さ、さ、桜!! け、怪我は!? それで今日長袖!? ほ、本当に何もされてないの!?」
「大丈夫だよ! 掴まれたところがちょっと痕になっちゃったけどーーそのうち消えるし、さっきも話した通り、今居候させてもらってる男の子が助けに来てくれたら」
ちょっと恥ずかしくなって、視線を逸らし誤魔化すように頬をかく。あの時ーー咄嗟に脳裏に浮かんだのは廉くんだった。本当に彼が助けに来てくれるなんてーー。
「うわーーん、ごめんねぇ桜ぁーー! 私てっきり、将さんと桜がいい感じなんだと思っちゃってーー。桜が居候させてもらってるって男より、爽やかハキハキしてそうな将さんの方が全然良いと思っちゃったんだぁあーー。勘違いして、本当にごめんーー!」
「翠ちゃん! お弁当落ちるって!」
ごめんを連発する翠ちゃんを宥めて、再びお弁当を食べ始める。
「その同居させてもらってるの、実は檸檬くんなんだ。ほら、ゲームの相方で、オフ会で会ったって話したーー」
「あぁ! カフェで、あの派手頭の男の子と一緒にいた彼かぁ。ほほぅ?」
「帰りが遅くなるとドアの開閉音とか迷惑だと思って、最初の飲み屋で、ゴールドさんのことと、二次会で通り沿いのバー行くこと連絡しておいたら……心配して探しに来てくれて」
「え? 何々? めちゃくちゃかっこいいじゃん? “檸檬くん“」
かっこよかった……小声で言うと、思わず顔が熱くなる。絶対赤くなってるこれ。
「おやおや? 桜も満更でもないっと?」
「や、なんかよくわかんない。けど……昨日からいつも以上にドキドキしちゃって」
「今週だけなんでしょ? お世話になるの。告ってみたら?」
「告っ!?」
しかしそこで、13時になろうとしていることに気づいた。
「あ、お昼休憩終わっちゃう! 戻らなきゃ!」
慌てて片付けると、デスクへと戻っていった。
「桜、飲んだみたいだから水でいいかな」
「うん……、ありがとう」
ソファーの隣に檸檬くんが腰掛け、ヨシヨシと撫でてくる。
「腕と手首、痕になっちゃうね」
「うん……、油断しちゃった」
そっと触れるか触れないかのところに添えられる手に、少しドキドキしつつ……
苦々しい気持ちを抑えるように微笑むと、聞いてくれる?と前置きし、事の経緯を話す。
「そっかぁ……怖かったろうな、桜」
「檸檬くんがきてくれて、本当に助かった。ありがとう」
「また行き違いがあるといけないから、会社の友達にはちゃんと話しておいた方が良いと思う」
「うん。私もそう思う」
ソファーに脱力しもたれかかると、なんだか一気に疲れが襲ってくる気がした。
「そういえば、よくお店の場所わかったね?」
「あの会社の通り沿いのバー、そんなに多くないからね。桜の会社に近いところから回っていったから、遅くなった」
もう少し早く着いてれば……なんて、酷く悔いるような表情で話す。
そういえばあの時、汗だくになっていたっけ。
走って探し回ったのかな。
心配かけちゃったな。
檸檬くんの口が何やら言葉を紡いでいるが、急激に眠気が。
争いようのない大波に攫われるように、ソファーに身を委ねたまま意識を手放した。
◇◇◇
お昼休み、翠ちゃんと一緒にランチをとる。
「ーーっと、そんなことがありましてーー。今後、池田 将さんに声をかけられても、私は関わらないようにさせて欲しいんだーー」
膝に乗せたコンビニのお弁当をいじりながら話した。
折角気を遣ってくれたのに、それに面倒に巻き込んでごめんね、と伝えると、真っ青な顔をして固まった翠ちゃんは、ポロリとお弁当の箸を落とし。
その口が突如ワナワナと震え出す。
「さ、さ、さ、桜!! け、怪我は!? それで今日長袖!? ほ、本当に何もされてないの!?」
「大丈夫だよ! 掴まれたところがちょっと痕になっちゃったけどーーそのうち消えるし、さっきも話した通り、今居候させてもらってる男の子が助けに来てくれたら」
ちょっと恥ずかしくなって、視線を逸らし誤魔化すように頬をかく。あの時ーー咄嗟に脳裏に浮かんだのは廉くんだった。本当に彼が助けに来てくれるなんてーー。
「うわーーん、ごめんねぇ桜ぁーー! 私てっきり、将さんと桜がいい感じなんだと思っちゃってーー。桜が居候させてもらってるって男より、爽やかハキハキしてそうな将さんの方が全然良いと思っちゃったんだぁあーー。勘違いして、本当にごめんーー!」
「翠ちゃん! お弁当落ちるって!」
ごめんを連発する翠ちゃんを宥めて、再びお弁当を食べ始める。
「その同居させてもらってるの、実は檸檬くんなんだ。ほら、ゲームの相方で、オフ会で会ったって話したーー」
「あぁ! カフェで、あの派手頭の男の子と一緒にいた彼かぁ。ほほぅ?」
「帰りが遅くなるとドアの開閉音とか迷惑だと思って、最初の飲み屋で、ゴールドさんのことと、二次会で通り沿いのバー行くこと連絡しておいたら……心配して探しに来てくれて」
「え? 何々? めちゃくちゃかっこいいじゃん? “檸檬くん“」
かっこよかった……小声で言うと、思わず顔が熱くなる。絶対赤くなってるこれ。
「おやおや? 桜も満更でもないっと?」
「や、なんかよくわかんない。けど……昨日からいつも以上にドキドキしちゃって」
「今週だけなんでしょ? お世話になるの。告ってみたら?」
「告っ!?」
しかしそこで、13時になろうとしていることに気づいた。
「あ、お昼休憩終わっちゃう! 戻らなきゃ!」
慌てて片付けると、デスクへと戻っていった。
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