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ドジっ娘(死語)は嗜虐心と庇護欲を掻き立てる?

ないったらないんです

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     😳

 そう、私にはヽヽヽ、現実世界のアーベントシュティアン様を攻略する気はない。ないったらない。

 勿論、当のアーベントシュティアン様にも、子猿令嬢を娶るつもりなんかないだろう。

 でも、お兄さまと友人だし、妹御のグラディオーレ様と私は共に学ぶ学友で私にとって唯一のお友だちだ。(ルシーファ殿下も自称  • •  『友』だけど、畏れ多くて「友人です」だなんて気楽に口外できない)
 自然、近くに居ることが少なくない。今は特に、学校の長期休暇中で寄宿舎ボーディングから領地に戻られていて、尚且つ、おば様とグラディオーレ様と共に我が家に滞在なさっているから特に、たまに会う領地内の下位貴族の令嬢に、どのような関係かと訊かれたりするのだ。

 兄の友人という立ち位置はとても都合のいいもので、アーベントシュティアン様にイジられている姿を誰かに見られても、「兄の友人ですから、ちょっと揶揄からかわれているだけです」と言い訳が出来る。
 それで、相手も「ああ、そういう⋯⋯」と納得なさるのだから、実に便利である。

 ルシーファ殿下は元より、アーベントシュティアン様も王弟殿下の嫡男で、ルシーファ殿下に続く、次代の王に近いお方だ。
 この、王家の王子に拘らず、王族の若手が次の王というシステムは、王の子だから次の王になると油断?慢心?して、為政者として学んだり義務を怠ったりしないように定められたもので、おかげで施行以降、愚王が立つことはないという。

 ただ、咲子の記憶が戻ってしまった事で、最推しだったという気まずさが抜けなくなってしまった。

 どうしよう。でも、グッドルッキング(死語?)だし、声もゲームの中の大好きな声優のものそのままなのだ。ってことは、もう声変わりは済んでるのかな?

 そう。咲子の記憶がハッキリしてから気づいたけれど、攻略対象達の声は、不思議とゲームの中のあてられた声優のそれなのだ。

 だから、ルシーファ殿下の少年から青年になってもあまり低くならなかった柔らかい声も、アーベントシュティアン様の聴き取りにくくない程度に低めの良い声も、お兄さまのいかにもお兄ちゃんって声も、聴いてて嬉しくなるし、ずっと聴いていたくなる。
 まあ、ルシーファ殿下はまだ十三歳だから、これからも変わるかもしれないけど。

 そして、実写というか現実になっても違和感のない、中性的な美形やアニメからそのまま飛び出したようなイケメンも、鑑賞に堪えうる美丈夫ぶり。あの造形美は、芸術品のよう。

 髪や瞳の色の取り合わせや、ゲームの中で培われた咲子の中でのイメージが、現実世界のアーベントシュティアン様を憧れのオウジサマにする。

 ハッキリ思い出してなかった頃、間近で眺めてた自分が信じられないくらい、恥ずかしくて居たたまれない。

 でも、グラディオーレ様もおば様も、アーベントシュティアン様と、王族の嫡男だと壁を作らず素で話したりするのが嬉しいと言っていたので、人前じゃなきゃいいやと思っていた私。過去の私の後頭部をはたいてやりたい。



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