38 / 39
ドジっ娘(死語)は嗜虐心と庇護欲を掻き立てる?
元日本人令嬢は、変人令嬢
しおりを挟む
😒
お父さまとお兄さま達を見送って、私達は淑女の教養の時間である。
日本人としての記憶を幾らか思い出し、十三歳伯爵令嬢フロリスとほぼ融合と言うか、忘れていたものを思い出した感覚で、フロリスである私と日本人女子の咲子は、違和感なく私の中に存在していて、令嬢らしくない行動力とか、時々出て来る謎単語が何だったのか、などの不思議が一気に合点がいって、落ち着いた。
そりゃあ、他のご令嬢達から見れば、田舎者で変わり者だろう。
フロリスとしての十三年があるがゆえに貴族令嬢としての礼儀作法がないとは言わないが、そこここ、咲子だからこその貴族の常識から外れた動きを突然するのである。
変人令嬢として、莫迦にされたり遠巻きにされるのも、咲子としては「えー、普通にしてるだけなのに」となるし、フロリスからしてみれば「まあ、仕方ないわよね」となる。
「え? 別に、気になりませんけど⋯⋯」
「そうね、フロリスちゃんはとても可愛い子だと思うわ。本当に、うちの子にならない?」
ヴェスペリ公爵夫人マリアベルさまのご生家の所領、東の海の玄関口と呼ばれ穀倉地でもあるオゥシーアヌス公爵領についての資料を広げながら(地理のお勉強なのだ)、グラディオーレ様は不思議そうに、おば様はにこやかに、答えた。
お二人からすれば、私の変人ぶりは、許容範囲内らしい。ありがたいことである。
「あら、素敵。アーベントシュティアン小公爵が、義理の息子になるのね?」
お母さまも頰を染めて嬉しそうに両手を合わせる。
王弟エグレイジェ殿下は、母方の親戚であるヴェスペリ公爵家に養子に入って臣籍降下され、そのまま当主を継がれたので、アーベントシュティアン様は、次期公爵さまである。敬意を表して、小公爵と呼ばれることもある。
ヴェスペリ公爵令息──アーベントシュティアン・ルークス・オゥシーアヌス・ド・ラ・ヴェスペリ
実は、前世のスマホゲームでの、最推しだった。
少女時代って、ちょい悪とか不良っぽいけど優しい人とか、ギャップ萌えと、背徳的な翳りやアウトローに憧れたりする時期があるわよね?
とにかく、どのストーリーを選んでも、ルシーファ殿下とアーベントシュティアン様は出て来る。お兄さまも。メインキャラなのだ。
そして、アーベントシュティアン様の意地悪だけど、常にイジってくるけど優しい所と、黒髪と深海や大宇宙をイメージした星の散らばる深い青の瞳の取り合わせ、何より充てられた声優が好みで、一番ハッピーエンド攻略に近かったのは、アーベントシュティアン様だったと思う。
でも、攻略サイトを見ながらやっても、好感度がマックスにならなくて、何かが足りないまま、最終話までクリアも出来ていない。
まあ、攻略サイトとは言っても運営の公式なものではなく、各キャラのファンや熱心なプレイヤー達が、自分達のプレイした結果からの数値とルート分岐やフラグなどの推察の書き込みの集大成的なものだから、完璧ではない。
途中でノーマルエンドに向かってしまい、最終話まで辿り着けないのだ。
そして、だんだんムキになってサイトのフローチャート通りに進むだけになって、結局、楽しんでいた初期の、ストーリーとしては序盤しか内容は記憶にない。
ちょっと悔しい。過去のプレイデータを憶えていれば、スチルやカットではなく、美青年や美少年のあれやこれやが生で楽しめたのにぃ。
まあ、だからと言って、この世界で彼を狙うつもりは毛頭ないのだけど。
お父さまとお兄さま達を見送って、私達は淑女の教養の時間である。
日本人としての記憶を幾らか思い出し、十三歳伯爵令嬢フロリスとほぼ融合と言うか、忘れていたものを思い出した感覚で、フロリスである私と日本人女子の咲子は、違和感なく私の中に存在していて、令嬢らしくない行動力とか、時々出て来る謎単語が何だったのか、などの不思議が一気に合点がいって、落ち着いた。
そりゃあ、他のご令嬢達から見れば、田舎者で変わり者だろう。
フロリスとしての十三年があるがゆえに貴族令嬢としての礼儀作法がないとは言わないが、そこここ、咲子だからこその貴族の常識から外れた動きを突然するのである。
変人令嬢として、莫迦にされたり遠巻きにされるのも、咲子としては「えー、普通にしてるだけなのに」となるし、フロリスからしてみれば「まあ、仕方ないわよね」となる。
「え? 別に、気になりませんけど⋯⋯」
「そうね、フロリスちゃんはとても可愛い子だと思うわ。本当に、うちの子にならない?」
ヴェスペリ公爵夫人マリアベルさまのご生家の所領、東の海の玄関口と呼ばれ穀倉地でもあるオゥシーアヌス公爵領についての資料を広げながら(地理のお勉強なのだ)、グラディオーレ様は不思議そうに、おば様はにこやかに、答えた。
お二人からすれば、私の変人ぶりは、許容範囲内らしい。ありがたいことである。
「あら、素敵。アーベントシュティアン小公爵が、義理の息子になるのね?」
お母さまも頰を染めて嬉しそうに両手を合わせる。
王弟エグレイジェ殿下は、母方の親戚であるヴェスペリ公爵家に養子に入って臣籍降下され、そのまま当主を継がれたので、アーベントシュティアン様は、次期公爵さまである。敬意を表して、小公爵と呼ばれることもある。
ヴェスペリ公爵令息──アーベントシュティアン・ルークス・オゥシーアヌス・ド・ラ・ヴェスペリ
実は、前世のスマホゲームでの、最推しだった。
少女時代って、ちょい悪とか不良っぽいけど優しい人とか、ギャップ萌えと、背徳的な翳りやアウトローに憧れたりする時期があるわよね?
とにかく、どのストーリーを選んでも、ルシーファ殿下とアーベントシュティアン様は出て来る。お兄さまも。メインキャラなのだ。
そして、アーベントシュティアン様の意地悪だけど、常にイジってくるけど優しい所と、黒髪と深海や大宇宙をイメージした星の散らばる深い青の瞳の取り合わせ、何より充てられた声優が好みで、一番ハッピーエンド攻略に近かったのは、アーベントシュティアン様だったと思う。
でも、攻略サイトを見ながらやっても、好感度がマックスにならなくて、何かが足りないまま、最終話までクリアも出来ていない。
まあ、攻略サイトとは言っても運営の公式なものではなく、各キャラのファンや熱心なプレイヤー達が、自分達のプレイした結果からの数値とルート分岐やフラグなどの推察の書き込みの集大成的なものだから、完璧ではない。
途中でノーマルエンドに向かってしまい、最終話まで辿り着けないのだ。
そして、だんだんムキになってサイトのフローチャート通りに進むだけになって、結局、楽しんでいた初期の、ストーリーとしては序盤しか内容は記憶にない。
ちょっと悔しい。過去のプレイデータを憶えていれば、スチルやカットではなく、美青年や美少年のあれやこれやが生で楽しめたのにぃ。
まあ、だからと言って、この世界で彼を狙うつもりは毛頭ないのだけど。
0
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説
嫁ぎ先は悪役令嬢推しの転生者一家でした〜攻略対象者のはずの夫がヒロインそっちのけで溺愛してくるのですが、私が悪役令嬢って本当ですか?〜
As-me.com
恋愛
事業の失敗により借金で没落寸前のルーゼルク侯爵家。その侯爵家の一人娘であるエトランゼは侯爵家を救うお金の為に格下のセノーデン伯爵家に嫁入りすることになってしまった。
金で買われた花嫁。政略結婚は貴族の常とはいえ、侯爵令嬢が伯爵家に買われた事実はすぐに社交界にも知れ渡ってしまう。
「きっと、辛い生活が待っているわ」
これまでルーゼルク侯爵家は周りの下位貴族にかなりの尊大な態度をとってきた。もちろん、自分たちより下であるセノーデン伯爵にもだ。そんな伯爵家がわざわざ借金の肩代わりを申し出てまでエトランゼの嫁入りを望むなんて、裏があるに決まっている。エトランゼは、覚悟を決めて伯爵家にやってきたのだがーーーー。
義母「まぁぁあ!やっぱり本物は違うわぁ!」
義妹「素敵、素敵、素敵!!最推しが生きて動いてるなんてぇっ!美しすぎて眼福ものですわぁ!」
義父「アクスタを集めるためにコンビニをはしごしたのが昨日のことのようだ……!(感涙)」
なぜか私を大歓喜で迎え入れてくれる伯爵家の面々。混乱する私に優しく微笑んだのは夫となる人物だった。
「うちの家族、みんな君の大ファンなんです。悪役令嬢エトランゼのねーーーー」
実はこの世界が乙女ゲームの世界で、私が悪役令嬢ですって?!
えーと、まず、悪役令嬢ってなんなんですか……?!
夫に離縁が切り出せません
えんどう
恋愛
初めて会った時から無口で無愛想な上に、夫婦となってからもまともな会話は無く身体を重ねてもそれは変わらない。挙げ句の果てに外に女までいるらしい。
妊娠した日にお腹の子供が産まれたら離縁して好きなことをしようと思っていたのだが──。
トラック事故で消えた幼なじみが騎士団長になっていた
氷雨そら
恋愛
「伝えたいことがある」
高校卒業を控えたある日、電話でその言葉を残し、幼なじみは消えてしまった。
トラックに轢かれたという目撃証言はあるのに、現場には携帯電話が落ちていただけという謎を残して。
七瀬は、彼氏いない歴29年の看護師。そんな七瀬にも、好きな人が全くいなかったわけではない。それは、幼なじみへのほのかな恋心。
「あんな言葉を残して消えるなんて絶対おかしいよ……」
学業や仕事に打ち込み、11年が過ぎたある日。七瀬は異世界転生し、リリアという少女に生まれ変わる。光魔法を身につけて騎士団に入団したその場で出会ったのは。
消えたはずの幼なじみとやり直す異世界ラブストーリー。
幼馴染はハッピーエンドが好きな方に贈ります♪小説家になろうにも掲載しています。
本編完結しました。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
盲目のラスボス令嬢に転生しましたが幼馴染のヤンデレに溺愛されてるので幸せです
斎藤樹
恋愛
事故で盲目となってしまったローナだったが、その時の衝撃によって自分の前世を思い出した。
思い出してみてわかったのは、自分が転生してしまったここが乙女ゲームの世界だということ。
さらに転生した人物は、"ラスボス令嬢"と呼ばれた性悪な登場人物、ローナ・リーヴェ。
彼女に待ち受けるのは、嫉妬に狂った末に起こる"断罪劇"。
そんなの絶対に嫌!
というかそもそも私は、ローナが性悪になる原因の王太子との婚約破棄なんかどうだっていい!
私が好きなのは、幼馴染の彼なのだから。
ということで、どうやら既にローナの事を悪く思ってない幼馴染と甘酸っぱい青春を始めようと思ったのだけどーー
あ、あれ?なんでまだ王子様との婚約が破棄されてないの?
ゲームじゃ兄との関係って最悪じゃなかったっけ?
この年下男子が出てくるのだいぶ先じゃなかった?
なんかやけにこの人、私に構ってくるような……というか。
なんか……幼馴染、ヤンデる…………?
「カクヨム」様にて同名義で投稿しております。
転生したら避けてきた攻略対象にすでにロックオンされていました
みなみ抄花
恋愛
睦見 香桜(むつみ かお)は今年で19歳。
日本で普通に生まれ日本で育った少し田舎の町の娘であったが、都内の大学に無事合格し春からは学生寮で新生活がスタートするはず、だった。
引越しの前日、生まれ育った町を離れることに、少し名残惜しさを感じた香桜は、子どもの頃によく遊んだ川まで一人で歩いていた。
そこで子犬が溺れているのが目に入り、助けるためいきなり川に飛び込んでしまう。
香桜は必死の力で子犬を岸にあげるも、そこで力尽きてしまい……
乙女ゲーのモブデブ令嬢に転生したので平和に過ごしたい
ゆの
恋愛
私は日比谷夏那、18歳。特に優れた所もなく平々凡々で、波風立てずに過ごしたかった私は、特に興味のない乙女ゲームを友人に強引に薦められるがままにプレイした。
だが、その乙女ゲームの各ルートをクリアした翌日に事故にあって亡くなってしまった。
気がつくと、乙女ゲームに1度だけ登場したモブデブ令嬢に転生していた!!特にゲームの影響がない人に転生したことに安堵した私は、ヒロインや攻略対象に関わらず平和に過ごしたいと思います。
だけど、肉やお菓子より断然大好きなフルーツばっかりを食べていたらいつの間にか痩せて、絶世の美女に…?!
平和に過ごしたい令嬢とそれを放って置かない攻略対象達の平和だったり平和じゃなかったりする日々が始まる。
私、異世界で獣人になりました!
星宮歌
恋愛
昔から、人とは違うことを自覚していた。
人としておかしいと思えるほどの身体能力。
視力も聴力も嗅覚も、人間とは思えないほどのもの。
早く、早くといつだって体を動かしたくて仕方のない日々。
ただ、だからこそ、私は異端として、家族からも、他の人達からも嫌われていた。
『化け物』という言葉だけが、私を指す呼び名。本当の名前なんて、一度だって呼ばれた記憶はない。
妹が居て、弟が居て……しかし、彼らと私が、まともに話したことは一度もない。
父親や母親という存在は、衣食住さえ与えておけば、後は何もしないで無視すれば良いとでも思ったのか、昔、罵られた記憶以外で話した記憶はない。
どこに行っても、異端を見る目、目、目。孤独で、安らぎなどどこにもないその世界で、私は、ある日、原因不明の病に陥った。
『動きたい、走りたい』
それなのに、皆、安静にするようにとしか言わない。それが、私を拘束する口実でもあったから。
『外に、出たい……』
病院という名の牢獄。どんなにもがいても、そこから抜け出すことは許されない。
私が苦しんでいても、誰も手を差し伸べてはくれない。
『助、けて……』
救いを求めながら、病に侵された体は衰弱して、そのまま……………。
「ほぎゃあ、おぎゃあっ」
目が覚めると、私は、赤子になっていた。しかも……。
「まぁ、可愛らしい豹の獣人ですわねぇ」
聞いたことのないはずの言葉で告げられた内容。
どうやら私は、異世界に転生したらしかった。
以前、片翼シリーズとして書いていたその設定を、ある程度取り入れながら、ちょっと違う世界を書いております。
言うなれば、『新片翼シリーズ』です。
それでは、どうぞ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる