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ドジっ娘(死語)は嗜虐心と庇護欲を掻き立てる?
生まれて初めての衝撃(笑劇?)
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初めは、単に場を収めるためと、残していくと周りの好奇と悪意の標的にされそうだったから、後についてくるのを許した。
それと、ちょっぴり、彼女に興味が湧いたのもある。
貴族令嬢なのに、自分に対して改まった態度や言葉づかいをしない、まるで身近な友人や兄弟にするような態度。と言っても、僕の弟妹は一歩引いた位置でしか関わらないし、他人のきょうだいの様子も、書物の知識や伝聞でしかないのだけど。
何より、驚いた。
あれは、確かウォンティング侯爵令嬢マリアンヌだったと思うのだけど、上位貴族家のご令嬢とは思えない、フィクションの中にしか居ないと思っていた、目下の者を虐げる高慢な少女の差し出した足に引っかけられ、自分に向かって盛大に、紅茶を浴びせ掛けてしまった。
転がる茶器と、茫然とした表情で両手を地に突いている少女。突然の出来事に固まってはいたけど、視線だけはキョロキョロと、自分のズボンと転がる茶器と、周りとを見まわす様子は、申し訳ないけど笑みを誘う可愛らしさだった。
だが、ハッと気がつくと、テーブルに用意されていたナプキンを引っ摑み、フィンガーボウルの水を染ませて、僕のズボンに掛かった紅茶を拭おうとした。
先ほどまでの茫然とした、ともすればトロそうな少女の、驚くほどの行動力に、何も反応できなかった。
内心、驚愕と僅かの恐怖とに震えていたのだけど。
さて──
ディフィシル侯爵令嬢プラチェーレ。彼女の家はマリアンヌ嬢と親が同派閥で、爵位こそ同位なものの、力関係からウォンティング侯爵家に阿る家門の一つで、そのまま子供達への力関係にも影響している。
つまり、プラチェーレ嬢は、マリアンヌ嬢の幇間とも言える立場で、尻馬に乗るように、転ばされた少女を田舎の子猿呼ばわりしていた。
安直な嫌がらせ──足を差し出して転ばせたり、本人にはどうしようもない生まれた土地を揶揄したり──を自分を含め、見ている子供達は勿論、使用人や保護者などの大人達にバレていないと思っているのだろうか?
あの性質のままに大人になるようなら、二人とも、自分の側近くに置くことはないと思った。例え、側近の妻や縁者としても、だ。
その後、着替えてから二人で茶席の場に戻った後、その二人はアーベントシュティアンに泣かされて逃げ帰ったようだったが。
「いや、だって、あのまま高慢なご令嬢に育ったら、周りが迷惑するだろ? あれくらいの内に、一度鼻を折っておかないと」
友人フォオリウムに黒いと称される笑みを浮かべて、従兄のアーベントシュティアンが嘯く。
「トラウマにならなければいいが」
「なってもいいだろ、他人様に迷惑掛けようという気も起きないさ。トラウマなら、お前の方がショック受けてただろ?」
「⋯⋯まあ、それなりに」
頰に熱が上るのを感じる。すぐにアーベントシュティアンのからかう視線も感じたので、視線を反らした。
「あれは、笑った。どこの令嬢が、最も王太子に近いとされる第一王子の股間を押さえるんだってね」
そう。紅茶がかかったのは、ブーツの先でもあるが、大半は股間を染めたのだ。
そこを濡れた布巾で押し染み抜きをしようとしたのには、驚きすぎて第一王子の顔を面に出すことも間に合わず、やんわりとでも拒絶するのも、そんな事しなくてもいいと気づかってやることも出来ずに、素で固まってしまった。
正に、生まれて初めての衝撃である。
初めは、単に場を収めるためと、残していくと周りの好奇と悪意の標的にされそうだったから、後についてくるのを許した。
それと、ちょっぴり、彼女に興味が湧いたのもある。
貴族令嬢なのに、自分に対して改まった態度や言葉づかいをしない、まるで身近な友人や兄弟にするような態度。と言っても、僕の弟妹は一歩引いた位置でしか関わらないし、他人のきょうだいの様子も、書物の知識や伝聞でしかないのだけど。
何より、驚いた。
あれは、確かウォンティング侯爵令嬢マリアンヌだったと思うのだけど、上位貴族家のご令嬢とは思えない、フィクションの中にしか居ないと思っていた、目下の者を虐げる高慢な少女の差し出した足に引っかけられ、自分に向かって盛大に、紅茶を浴びせ掛けてしまった。
転がる茶器と、茫然とした表情で両手を地に突いている少女。突然の出来事に固まってはいたけど、視線だけはキョロキョロと、自分のズボンと転がる茶器と、周りとを見まわす様子は、申し訳ないけど笑みを誘う可愛らしさだった。
だが、ハッと気がつくと、テーブルに用意されていたナプキンを引っ摑み、フィンガーボウルの水を染ませて、僕のズボンに掛かった紅茶を拭おうとした。
先ほどまでの茫然とした、ともすればトロそうな少女の、驚くほどの行動力に、何も反応できなかった。
内心、驚愕と僅かの恐怖とに震えていたのだけど。
さて──
ディフィシル侯爵令嬢プラチェーレ。彼女の家はマリアンヌ嬢と親が同派閥で、爵位こそ同位なものの、力関係からウォンティング侯爵家に阿る家門の一つで、そのまま子供達への力関係にも影響している。
つまり、プラチェーレ嬢は、マリアンヌ嬢の幇間とも言える立場で、尻馬に乗るように、転ばされた少女を田舎の子猿呼ばわりしていた。
安直な嫌がらせ──足を差し出して転ばせたり、本人にはどうしようもない生まれた土地を揶揄したり──を自分を含め、見ている子供達は勿論、使用人や保護者などの大人達にバレていないと思っているのだろうか?
あの性質のままに大人になるようなら、二人とも、自分の側近くに置くことはないと思った。例え、側近の妻や縁者としても、だ。
その後、着替えてから二人で茶席の場に戻った後、その二人はアーベントシュティアンに泣かされて逃げ帰ったようだったが。
「いや、だって、あのまま高慢なご令嬢に育ったら、周りが迷惑するだろ? あれくらいの内に、一度鼻を折っておかないと」
友人フォオリウムに黒いと称される笑みを浮かべて、従兄のアーベントシュティアンが嘯く。
「トラウマにならなければいいが」
「なってもいいだろ、他人様に迷惑掛けようという気も起きないさ。トラウマなら、お前の方がショック受けてただろ?」
「⋯⋯まあ、それなりに」
頰に熱が上るのを感じる。すぐにアーベントシュティアンのからかう視線も感じたので、視線を反らした。
「あれは、笑った。どこの令嬢が、最も王太子に近いとされる第一王子の股間を押さえるんだってね」
そう。紅茶がかかったのは、ブーツの先でもあるが、大半は股間を染めたのだ。
そこを濡れた布巾で押し染み抜きをしようとしたのには、驚きすぎて第一王子の顔を面に出すことも間に合わず、やんわりとでも拒絶するのも、そんな事しなくてもいいと気づかってやることも出来ずに、素で固まってしまった。
正に、生まれて初めての衝撃である。
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