28 / 39
ドジっ娘(死語)は嗜虐心と庇護欲を掻き立てる?
男の子だってお友達になれるよね?
しおりを挟む
🍰
サラダやメインを一口づつ交換っこして、周りを困惑させても気にしてないのか気づかないのか、ルシーファ殿下はあの日と同じ柔らかな笑みを浮かべていた。
デザートは、ルシーファ殿下は梨のスライスゼリー寄せを、私は、ベリーたっぷりのタルトを選んだ。
ちなみに、グラディオーレ様もベリータルトを、アーベントシュティアン様はベリーソースかけのフローズンヨーグルトを。
いつもはさっぱり系のスイーツを食べるのに、今日のお父さまは無し。
お父様のデザートが無しなのは、今は甘いものを食べる心の余裕がないからなのだそう。
毎日、災害に喘ぐ民の為に気苦労が耐えないのね⋯⋯ 領主って大変なのね。
お兄さまとお母さまは林檎のコンポのートアイス添え、おば様は梨のシャルロット、といった皆バラバラのものを選んだ。
これだけ用意するのは厨房の人達も大変だっただろうに。
あとで聞いたら、デザートは専用の職人がいて、日保ちのする焼き菓子、フローズンヨーグルトやアイスなど冷凍保存するものは、作り置きがあって、その日のメニューに合わせて、デザートに添えたりおやつやお茶の時間に出したり、元々取り揃えてあるものなのだとか。
なにそれ、毎日自宅で喫茶店が出来るって事?
マドレーヌやバターケーキなんかも焼いたすぐよりバターが馴染んでからの方が美味しいとかで、明日の分もたくさんあるらしいし、パイ生地やクッキー生地なども、すぐにつくれるよう保存してあるそうだ。
なによ、それを借りたら、私だってすぐに作れるんじゃない。と思ったけど、文句は言わなかった。
話は戻るけど、殿下のゼリー寄せはぷるぷるしてて美味しそうで、笑みに目を細めた殿下が「これも味見する?」と言って匙に掬い、私の口に運んだ。
「ひんやりしてて、甘くて美味しい~」
給餌待ちの殿下に、ちょっとみんなに観られているのが恥ずかしいけれど、ベリータルトを小さく切ってフォークに乗せ、殿下にお裾分けする。
「ベリーの甘酸っぱさとタルトのカスタードクリームが程よく合ってるね」
「ですよね! うちの料理人達はみんな、いい仕事しますよねっ」
握りこぶしを振って同意すると、壁際に待機していたデザート部門のチーフがはにかんで、頰を染めて頭を下げた。
ちなみに、アラサー女性だ。
アラサー? また、変な単語出て来たけど、たぶん、身分とか地位とかじゃなくて、性格や人柄でもなく、二十代後半のアミリーナの年代のことだと思う。頭の中で、三十前だったよねと確認したから。
とにかく、デザートは美味しいし、職人は殿下に誉められて喜んでたし、いい気分で休めそう。
殿下も楽しそうで、私の頭を撫でたり、もう一口食べる?と訊いたりしてくる。
そんな私達をジッと見つめるお兄さま。ちなみに、グラディオーレ様は私達を気にするのは止めてデザートに集中し、お母さまとおば様は、微笑ましい子供を見守る母の表情。お父さまは⋯⋯色を失くして肩を落として呆然と座っていた。
お兄さまは、ネットで噂のチベットスナギツネのような目でこちらを見ている。
ネット? チベットスナギツネ? チベットは解らないけど、砂狐って、あれだよね? 残念なものを見る目のような、殺気の抜けたデューク東郷みたいな目のキツネさん。
デューク東郷って誰? わからないものはスルーして、お兄さまに向き直る。
「お兄さまも、食べます?」
驚くほど晴れやかでキラッキラの笑顔で、お兄様は私のタルトを一口食べた。
サラダやメインを一口づつ交換っこして、周りを困惑させても気にしてないのか気づかないのか、ルシーファ殿下はあの日と同じ柔らかな笑みを浮かべていた。
デザートは、ルシーファ殿下は梨のスライスゼリー寄せを、私は、ベリーたっぷりのタルトを選んだ。
ちなみに、グラディオーレ様もベリータルトを、アーベントシュティアン様はベリーソースかけのフローズンヨーグルトを。
いつもはさっぱり系のスイーツを食べるのに、今日のお父さまは無し。
お父様のデザートが無しなのは、今は甘いものを食べる心の余裕がないからなのだそう。
毎日、災害に喘ぐ民の為に気苦労が耐えないのね⋯⋯ 領主って大変なのね。
お兄さまとお母さまは林檎のコンポのートアイス添え、おば様は梨のシャルロット、といった皆バラバラのものを選んだ。
これだけ用意するのは厨房の人達も大変だっただろうに。
あとで聞いたら、デザートは専用の職人がいて、日保ちのする焼き菓子、フローズンヨーグルトやアイスなど冷凍保存するものは、作り置きがあって、その日のメニューに合わせて、デザートに添えたりおやつやお茶の時間に出したり、元々取り揃えてあるものなのだとか。
なにそれ、毎日自宅で喫茶店が出来るって事?
マドレーヌやバターケーキなんかも焼いたすぐよりバターが馴染んでからの方が美味しいとかで、明日の分もたくさんあるらしいし、パイ生地やクッキー生地なども、すぐにつくれるよう保存してあるそうだ。
なによ、それを借りたら、私だってすぐに作れるんじゃない。と思ったけど、文句は言わなかった。
話は戻るけど、殿下のゼリー寄せはぷるぷるしてて美味しそうで、笑みに目を細めた殿下が「これも味見する?」と言って匙に掬い、私の口に運んだ。
「ひんやりしてて、甘くて美味しい~」
給餌待ちの殿下に、ちょっとみんなに観られているのが恥ずかしいけれど、ベリータルトを小さく切ってフォークに乗せ、殿下にお裾分けする。
「ベリーの甘酸っぱさとタルトのカスタードクリームが程よく合ってるね」
「ですよね! うちの料理人達はみんな、いい仕事しますよねっ」
握りこぶしを振って同意すると、壁際に待機していたデザート部門のチーフがはにかんで、頰を染めて頭を下げた。
ちなみに、アラサー女性だ。
アラサー? また、変な単語出て来たけど、たぶん、身分とか地位とかじゃなくて、性格や人柄でもなく、二十代後半のアミリーナの年代のことだと思う。頭の中で、三十前だったよねと確認したから。
とにかく、デザートは美味しいし、職人は殿下に誉められて喜んでたし、いい気分で休めそう。
殿下も楽しそうで、私の頭を撫でたり、もう一口食べる?と訊いたりしてくる。
そんな私達をジッと見つめるお兄さま。ちなみに、グラディオーレ様は私達を気にするのは止めてデザートに集中し、お母さまとおば様は、微笑ましい子供を見守る母の表情。お父さまは⋯⋯色を失くして肩を落として呆然と座っていた。
お兄さまは、ネットで噂のチベットスナギツネのような目でこちらを見ている。
ネット? チベットスナギツネ? チベットは解らないけど、砂狐って、あれだよね? 残念なものを見る目のような、殺気の抜けたデューク東郷みたいな目のキツネさん。
デューク東郷って誰? わからないものはスルーして、お兄さまに向き直る。
「お兄さまも、食べます?」
驚くほど晴れやかでキラッキラの笑顔で、お兄様は私のタルトを一口食べた。
0
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説
さよなら、英雄になった旦那様~ただ祈るだけの役立たずの妻のはずでしたが…~
遠雷
恋愛
「フローラ、すまない……。エミリーは戦地でずっと俺を支えてくれたんだ。俺はそんな彼女を愛してしまった......」
戦地から戻り、聖騎士として英雄になった夫エリオットから、帰還早々に妻であるフローラに突き付けられた離縁状。エリオットの傍らには、可憐な容姿の女性が立っている。
周囲の者達も一様に、エリオットと共に数多の死地を抜け聖女と呼ばれるようになった女性エミリーを称え、安全な王都に暮らし日々祈るばかりだったフローラを庇う者はごく僅かだった。
「……わかりました、旦那様」
反論も無く粛々と離縁を受け入れ、フローラは王都から姿を消した。
その日を境に、エリオットの周囲では異変が起こり始める。
王女殿下に婚約破棄された、捨てられ悪役令息を拾ったら溺愛されまして。
Rohdea
恋愛
伯爵令嬢のフルールは、最近婚約者との仲に悩んでいた。
そんなある日、この国の王女シルヴェーヌの誕生日パーティーが行われることに。
「リシャール! もう、我慢出来ませんわ! あなたとは本日限りで婚約破棄よ!」
突然、主役であるはずの王女殿下が、自分の婚約者に向かって声を張り上げて婚約破棄を突き付けた。
フルールはその光景を人混みの中で他人事のように聞いていたが、
興味本位でよくよく見てみると、
婚約破棄を叫ぶ王女殿下の傍らに寄り添っている男性が
まさかの自分の婚約者だと気付く。
(───え? 王女殿下と浮気していたの!?)
一方、王女殿下に“悪役令息”呼ばわりされた公爵子息のリシャールは、
婚約破棄にだけでなく家からも勘当されて捨てられることに。
婚約者の浮気を知ってショックを受けていたフルールは、
パーティーの帰りに偶然、捨てられ行き場をなくしたリシャールと出会う。
また、真実の愛で結ばれるはずの王女殿下とフルールの婚約者は───
お幸せに、婚約者様。私も私で、幸せになりますので。
ごろごろみかん。
恋愛
仕事と私、どっちが大切なの?
……なんて、本気で思う日が来るとは思わなかった。
彼は、王族に仕える近衛騎士だ。そして、婚約者の私より護衛対象である王女を優先する。彼は、「王女殿下とは何も無い」と言うけれど、彼女の方はそうでもないみたいですよ?
婚約を解消しろ、と王女殿下にあまりに迫られるので──全て、手放すことにしました。
お幸せに、婚約者様。
私も私で、幸せになりますので。
今さら、私に構わないでください
ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。
彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。
愛し合う二人の前では私は悪役。
幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。
しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……?
タイトル変更しました。
今日で都合の良い嫁は辞めます!後は家族で仲良くしてください!
ユウ
恋愛
三年前、夫の願いにより義両親との同居を求められた私はは悩みながらも同意した。
苦労すると周りから止められながらも受け入れたけれど、待っていたのは我慢を強いられる日々だった。
それでもなんとななれ始めたのだが、
目下の悩みは子供がなかなか授からない事だった。
そんなある日、義姉が里帰りをするようになり、生活は一変した。
義姉は子供を私に預け、育児を丸投げをするようになった。
仕事と家事と育児すべてをこなすのが困難になった夫に助けを求めるも。
「子供一人ぐらい楽勝だろ」
夫はリサに残酷な事を言葉を投げ。
「家族なんだから助けてあげないと」
「家族なんだから助けあうべきだ」
夫のみならず、義両親までもリサの味方をすることなく行動はエスカレートする。
「仕事を少し休んでくれる?娘が旅行にいきたいそうだから」
「あの子は大変なんだ」
「母親ならできて当然よ」
シンパシー家は私が黙っていることをいいことに育児をすべて丸投げさせ、義姉を大事にするあまり家族の団欒から外され、我慢できなくなり夫と口論となる。
その末に。
「母性がなさすぎるよ!家族なんだから協力すべきだろ」
この言葉でもう無理だと思った私は決断をした。
公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!
りーさん
ファンタジー
ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。
でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。
こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね!
のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!
追放された調香師の私、ワケあって冷徹な次期魔導士団長のもとで毎日楽しく美味しく働いています。
柳葉うら
恋愛
【第一章完結済です】
「お前はクビだ! 荷物をまとめてさっさと出て行け!」
調香師のフレイヤはモラハラ気味の工房長に妬まれ、クビにされてしまった。他の工房を訪ねてみたけれど、前職をクビにされた彼女を雇ってくれる工房はない。
諦めて故郷に帰ることにしたフレイヤは、行きつけのレストランの店主に最後の挨拶をしに行くと、シルと呼ばれる美形でぶっきらぼうな魔導士の青年シルヴェリオと出会い、成り行きで彼に愚痴を吐露した。
その後、故郷に帰って実家が営む薬草雑貨店で働いていたフレイヤのもとにシルヴェリオが再び現れた。伯爵家の令息の――巷では冷徹と噂されている次期魔導士団長として。シルヴェリオはフレイヤが作る香水には不思議な力が宿るという話をレストランの店主から聞いて、彼女を自分の専属調香師としてスカウトしに来たのだった。
「眠ったまま目を覚まさない友人を助けるために力を貸してほしい。たとえ君の作った香水が奇跡を起こさなくても責任を問わない」
元上司によって調香師を追放されたせいで権力者を信用できないでいるフレイヤのために、シルヴェリオは誓約魔法を交わすのも厭わないと言う。冷徹と噂されている彼の熱意に感銘を受けたものの承諾を躊躇うフレイヤ。シルヴェリオはそんな彼女を誘い込むために、好物と聞いていたお菓子で釣った。そしてフレイヤは見事に釣られた。こうしてシルヴェリオの専属調香師となったフレイヤは、再び王都へと向かう。初めはお互いに仕事仲間としか見ていなかったフレイヤとシルヴェリオは、いつしかお互いに惹かれて意識するようになる。
これは、不器用な二人が力を合わせて周りの人たちが抱える問題を解決して、そんな二人をくっつけるために周囲があれこれと応援するお話です。
じれじれな恋と魔法と香りの世界と美味しい料理をご堪能ください。
※小説家になろう様にも掲載しております
※本作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。また、香りや薬草の効能につきましては諸説や個人差があることをご留意ください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる