上 下
23 / 39
ドジっ娘(死語)は嗜虐心と庇護欲を掻き立てる?

友だちゆえに⋯⋯

しおりを挟む
     🧁

 一応、領地内の他の下位貴族のご令嬢は、お父さまのご機嫌伺いに来る親と共に我が家を訪問するし、その際、私とお茶会もする。けど、文通や向こうの開くお茶会に招待はされたことがない。
 高位貴族のご令嬢達からは、声をかけられるなんてこともないし招待状も届かないし、こちらから声をかけるなんてルール違反も出来ない。
 お母さまと企画して、私がお茶会を開こうと招待状を送っても、出席の返事が来たのは、グラディオーレ様と、領地内の下位貴族の令嬢達だけだった。

 ゆえに、友達は限りなくゼロに近い。唯一親しくしてくださるのが、グラディオーレ様なのだ。
 お兄さまとアーベントシュティアン様がご学友同士で、その兄上さまに紹介されたから仲よくしてくださるだけ、ではないと思いたい。

 第一、みんなが私を疎む理由の一端、殿下にお茶をぶっ掛けて恥をかかせたのだって、ウォンティング侯爵令嬢マリアンヌ嬢が、私に足を差し出して転ばせたからだし、彼女の取り巻きのディフィシル侯爵令嬢プラチェーレ様が、私を田舎の子猿扱いをして殿下に叱られたのも、私のせいではない。
 それなのに疎まれてるのはリフジンだと思う。


 アーベントシュティアン様が、マカダミアナッツをショコラーデで包んだものを摘まみ上げ、私の口元に持って来る。テーブルを乗り越えるように上半身と腕を伸ばして。
 殿下が無表情ながら強めの眼力を込めてアーベントシュティアン様を見るし、お兄さまは眉を顰める。
 私が困惑していると、眼だけで「さあ食え、俺の手ずからは食えないのか」と脅してきている気がして、圧に負けて仕方なくパクッと口に入れる。
 少し、ショコラーデを摘まむ指を唇で食むようにしごいてしまったけど、歯は立ってないからいいよね?

 チラッとアーベントシュティアン様を見たけど、怒ったり不快に思った様子はなかった。

 でも、殿下もアーベントシュティアン様も、私はもう直ぐ誕生日を迎えて十三歳になるんだって、解ってないのかな? 小さな子供じゃないんだから、自分で食べられるんだけど。

 あ⋯⋯

 アーベントシュティアン様の、私の唇が当たった親指と人差し指で、アーモンドが乗ったショコラーデを摘まみ上げ、口に入れた。指先ごと。私の唇が当たったところもお口の中。

 私が頰に熱が上るのを感じた瞬間、お兄さまがアーベントシュティアン様の後頭部を平手打ちし、ルシーファ殿下が絹の手巾を出して水を含ませ、私の唇を拭いだした。

「消毒⋯⋯にはならないかもしれないけれど、一応、綺麗にしておこう」

 私が恥ずかしがるのを楽しむために、イジワルしたのかしら。

「アウローラだってやっただろう」
「セカンドネームで呼ぶな。私は、直接フロリス嬢の唇には触れていない」

 後から聞いた話だけど、ルシーファ殿下のセカンドネームは、なぜかゴージャス美人に多い女性名なので、ルシーファ殿下にとってはコンプレックスなのだそう。

 五歳になるまで熱を出したり咳ごんだり、少し身体が弱かったので、身体的により強いとされる女児の命名をしたのは、今、健康に育っているのだから、私はいいと思うのだけどね。
 
 まあ、オーロラ姫とか、定番よね。

 んん? オーロラ姫って誰? 王族に、そんな人いたっけ?



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる

けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ  俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる  だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った

私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?

新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。 ※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!

【完結】似て非なる双子の結婚

野村にれ
恋愛
ウェーブ王国のグラーフ伯爵家のメルベールとユーリ、トスター侯爵家のキリアムとオーランド兄弟は共に双子だった。メルベールとユーリは一卵性で、キリアムとオーランドは二卵性で、兄弟という程度に似ていた。 隣り合った領地で、伯爵家と侯爵家爵位ということもあり、親同士も仲が良かった。幼い頃から、親たちはよく集まっては、双子同士が結婚すれば面白い、どちらが継いでもいいななどと、集まっては話していた。 そして、図らずも両家の願いは叶い、メルベールとキリアムは婚約をした。 ユーリもオーランドとの婚約を迫られるが、二組の双子は幸せになれるのだろうか。

完)嫁いだつもりでしたがメイドに間違われています

オリハルコン陸
恋愛
嫁いだはずなのに、格好のせいか本気でメイドと勘違いされた貧乏令嬢。そのままうっかりメイドとして馴染んで、その生活を楽しみ始めてしまいます。 ◇◇◇◇◇◇◇ 「オマケのようでオマケじゃない〜」では、本編の小話や後日談というかたちでまだ語られてない部分を補完しています。 14回恋愛大賞奨励賞受賞しました! これも読んでくださったり投票してくださった皆様のおかげです。 ありがとうございました! ざっくりと見直し終わりました。完璧じゃないけど、とりあえずこれで。 この後本格的に手直し予定。(多分時間がかかります)

侯爵様と婚約したと自慢する幼馴染にうんざりしていたら、幸せが舞い込んできた。

和泉鷹央
恋愛
「私、ロアン侯爵様と婚約したのよ。貴方のような無能で下賤な女にはこんな良縁来ないわよね、残念ー!」  同じ十七歳。もう、結婚をしていい年齢だった。  幼馴染のユーリアはそう言ってアグネスのことを蔑み、憐れみを込めた目で見下して自分の婚約を報告してきた。  外見の良さにプロポーションの対比も、それぞれの実家の爵位も天と地ほどの差があってユーリアには、いくつもの高得点が挙げられる。  しかし、中身の汚さ、性格の悪さときたらそれは正反対になるかもしれない。  人間、似た物同士が夫婦になるという。   その通り、ユーリアとオランは似た物同士だった。その家族や親せきも。  ただ一つ違うところといえば、彼の従兄弟になるレスターは外見よりも中身を愛する人だったということだ。  そして、外見にばかりこだわるユーリアたちは転落人生を迎えることになる。  一方、アグネスにはレスターとの婚約という幸せが舞い込んでくるのだった。  他の投稿サイトにも掲載しています。

死んだ王妃は二度目の人生を楽しみます お飾りの王妃は必要ないのでしょう?

なか
恋愛
「お飾りの王妃らしく、邪魔にならぬようにしておけ」  かつて、愛を誓い合ったこの国の王。アドルフ・グラナートから言われた言葉。   『お飾りの王妃』    彼に振り向いてもらうため、  政務の全てうけおっていた私––カーティアに付けられた烙印だ。  アドルフは側妃を寵愛しており、最早見向きもされなくなった私は使用人達にさえ冷遇された扱いを受けた。  そして二十五の歳。  病気を患ったが、医者にも診てもらえず看病もない。  苦しむ死の間際、私の死をアドルフが望んでいる事を知り、人生に絶望して孤独な死を迎えた。  しかし、私は二十二の歳に記憶を保ったまま戻った。  何故か手に入れた二度目の人生、もはやアドルフに尽くすつもりなどあるはずもない。  だから私は、後悔ない程に自由に生きていく。  もう二度と、誰かのために捧げる人生も……利用される人生もごめんだ。  自由に、好き勝手に……私は生きていきます。  戻ってこいと何度も言ってきますけど、戻る気はありませんから。

石女を理由に離縁されましたが、実家に出戻って幸せになりました

お好み焼き
恋愛
ゼネラル侯爵家に嫁いで三年、私は子が出来ないことを理由に冷遇されていて、とうとう離縁されてしまいました。なのにその後、ゼネラル家に嫁として戻って来いと手紙と書類が届きました。息子は種無しだったと、だから石女として私に叩き付けた離縁状は無効だと。 その他にも色々ありましたが、今となっては心は落ち着いています。私には優しい弟がいて、頼れるお祖父様がいて、可愛い妹もいるのですから。

悪女の指南〜媚びるのをやめたら周囲の態度が変わりました

結城芙由奈 
恋愛
【何故我慢しなければならないのかしら?】 20歳の子爵家令嬢オリビエは母親の死と引き換えに生まれてきた。そのため父からは疎まれ、実の兄から憎まれている。義母からは無視され、異母妹からは馬鹿にされる日々。頼みの綱である婚約者も冷たい態度を取り、異母妹と惹かれ合っている。オリビエは少しでも受け入れてもらえるように媚を売っていたそんなある日悪女として名高い侯爵令嬢とふとしたことで知りあう。交流を深めていくうちに侯爵令嬢から諭され、自分の置かれた環境に疑問を抱くようになる。そこでオリビエは媚びるのをやめることにした。するとに周囲の環境が変化しはじめ―― ※他サイトでも投稿中

処理中です...