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ドジっ娘(死語)は嗜虐心と庇護欲を掻き立てる?
酔わない宝石
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💎
アーベントシュティアン様に酔ってもいい?
意味わかんない。
でも、本当は、公爵家──それも王弟殿下の嫡男の、正面から眼を見つめるなんて、伯爵家の小猿令嬢がやっていいことじゃない。
好きなだけ観ていいと言われたから、馬車の中で他人がいないのをいいことに、お言葉に甘えることにした。
どれだけ観ても厭きない。つやつやサラサラの漆黒の髪も指通りも手触りも良さそうで触ってみたくなるし、窓からの光が差して、深い青紫の瞳にいろんな色を反射するのが、本当に、綺麗。キラキラ万華鏡のよう⋯⋯
? マンゲキョーって何? ホント、アーベントシュティアン様といると、頭の中に知らない言葉がよく浮かぶ。
とにかく、その満天の星の真ん中に私が映るのを間近で見られるのが、とても贅沢に思える。
「フロリスは、乗り物酔いには強いのか?」
「そうですねぇ⋯⋯ 辻馬車や乗り合い馬車は結構揺れるって聞きますけれど、郵便馬車や駅馬車は揺れが激しいとも。でも、公爵家の馬車は殆ど揺れなかったですし、伯爵家の馬車もさほど揺れないので、今のところ平気みたいです」
もっとも、王都に行くときは、一週間乗りっぱなしなので、足腰が痛くなりますけど。
「ああ。もう少し、街道を整備して停車場や宿場町を作れば、休憩を挟んで、身体を動かせるのだけどね」
「そんな事してたら、一週間で着かないわ」
「それはそうだね。もっと速い乗り物があればいいんだけどね」
まるで幼児にするように、私の頭を撫でるアーベントシュティアン様の言葉に、不思議単語がまた、飛び出した。
「運河を作って、ゴンドラで下ったらどうかしら。揺れはマシなんじゃないかしら? 馬車も、もっとサスペションよくしたら違うのにね」
「サスペ? フロリスは、時々、賢いのかお猿さんなのか解らなくなるね」
苦笑いをされる。
お猿さんは余計だけども。私も、自分の発言なのに、サスペションって何? って思った。
年金受給者向けの安価民宿施設の事かしら? でも、馬車にはあまり関係なさそうだし、よく解んない。
「でも、そうか。運河はいいかも知れない。そうすれば、荷を運ぶのも楽になるかもしれないね。ふぅん、やはりフロリスは、面白いね」
船なら、天候条件さえよければ、風を受けて馬車より早く、休みなくずっと進み続けることが出来るし、馬車よりたくさん荷物が運べる。
今度、ルシーファに会った時、一緒に提案してみるか?と笑うアーベントシュティアン様は、いつものイジワルやニヤニヤ笑いとは違った、優しい目をしていた。ので、ずっと見ていられたので、馬車がうちの邸の敷地内に入ったのも、エントランスの馬車留めに停車しのも気づかなかった。
「フロリス? そんな奴の表情を間近で観て、腹黒が感染っても知らないぞ?」
アーベントシュティアン様に酔ってもいい?
意味わかんない。
でも、本当は、公爵家──それも王弟殿下の嫡男の、正面から眼を見つめるなんて、伯爵家の小猿令嬢がやっていいことじゃない。
好きなだけ観ていいと言われたから、馬車の中で他人がいないのをいいことに、お言葉に甘えることにした。
どれだけ観ても厭きない。つやつやサラサラの漆黒の髪も指通りも手触りも良さそうで触ってみたくなるし、窓からの光が差して、深い青紫の瞳にいろんな色を反射するのが、本当に、綺麗。キラキラ万華鏡のよう⋯⋯
? マンゲキョーって何? ホント、アーベントシュティアン様といると、頭の中に知らない言葉がよく浮かぶ。
とにかく、その満天の星の真ん中に私が映るのを間近で見られるのが、とても贅沢に思える。
「フロリスは、乗り物酔いには強いのか?」
「そうですねぇ⋯⋯ 辻馬車や乗り合い馬車は結構揺れるって聞きますけれど、郵便馬車や駅馬車は揺れが激しいとも。でも、公爵家の馬車は殆ど揺れなかったですし、伯爵家の馬車もさほど揺れないので、今のところ平気みたいです」
もっとも、王都に行くときは、一週間乗りっぱなしなので、足腰が痛くなりますけど。
「ああ。もう少し、街道を整備して停車場や宿場町を作れば、休憩を挟んで、身体を動かせるのだけどね」
「そんな事してたら、一週間で着かないわ」
「それはそうだね。もっと速い乗り物があればいいんだけどね」
まるで幼児にするように、私の頭を撫でるアーベントシュティアン様の言葉に、不思議単語がまた、飛び出した。
「運河を作って、ゴンドラで下ったらどうかしら。揺れはマシなんじゃないかしら? 馬車も、もっとサスペションよくしたら違うのにね」
「サスペ? フロリスは、時々、賢いのかお猿さんなのか解らなくなるね」
苦笑いをされる。
お猿さんは余計だけども。私も、自分の発言なのに、サスペションって何? って思った。
年金受給者向けの安価民宿施設の事かしら? でも、馬車にはあまり関係なさそうだし、よく解んない。
「でも、そうか。運河はいいかも知れない。そうすれば、荷を運ぶのも楽になるかもしれないね。ふぅん、やはりフロリスは、面白いね」
船なら、天候条件さえよければ、風を受けて馬車より早く、休みなくずっと進み続けることが出来るし、馬車よりたくさん荷物が運べる。
今度、ルシーファに会った時、一緒に提案してみるか?と笑うアーベントシュティアン様は、いつものイジワルやニヤニヤ笑いとは違った、優しい目をしていた。ので、ずっと見ていられたので、馬車がうちの邸の敷地内に入ったのも、エントランスの馬車留めに停車しのも気づかなかった。
「フロリス? そんな奴の表情を間近で観て、腹黒が感染っても知らないぞ?」
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