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ドジっ娘(死語)は嗜虐心と庇護欲を掻き立てる?
あれから⋯⋯
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十二歳の貴族子女の王都でのプレデビューお茶会以降、多くの子息は貴族学校か騎士鍛練施設(軍人さんの士官学校みたいなもの?)に入学して、嫡男は貴族紳士に、後を継げない次男以下は領地や王国を守る騎士になるべく、十八歳まであらゆる事を学ぶらしい。
令嬢も貴族子女の通う高等学校かそこへ入学するための予備教育学校(略してプレップスクールとも言うらしい)で基礎を学んで、女官や文官を目指す人は貴族学校に、お家のためにどこかへ縁づいて嫁ぐ令嬢達は淑女教養学校に通うか家庭教師をつけて深層の令嬢として、花嫁修業に励むらしい。
お兄さまもアーベントシュティアン様も、互いの領地が近く、ヴェスペリ公爵家の領地内にある予備教育学校で知り合ったけれど、今は王都の王立貴族学校の寄宿舎に入学して、長期休暇しか会えない。
グラディオーレ様も、女家庭教師をつけての淑女教育と、大学院修士課程を修了した学士から一般教養を学んでいる。
何を隠そう、私も、一緒だ。
家庭教師と家で淑女教育を受けるのは、それぞれの家庭で行う。王族公爵家と、辺境地の中流伯爵家では、礼儀作法やしきたりなどにもレベル差があるからだ。
でも、令嬢として、王国の貴族として、必要な一般教養と語学、興味のある教科の学習に関しては、公爵家の好意で、私が向こうに出向き、グラディオーレ様と一緒に学んでいる。
「フロリスちゃんが来てくれるようになって、ラディも勉強に身が入るようになったのよ。感謝しているの。今日も朝から疲れたでしょう? これも食べてね」
ヴェスペリ公爵家の奥方さまは、グラディオーレ様とよく似た面差しにアーベントシュティアン様と同じ暗青紫の瞳がキラキラとした、少女のような愛らしい方で、飴色の髪がふわふわと結い上げられていて、高位貴族の奥方とは思えないほど気さくな方だ。
いつも手作りのお菓子を、勉強の後のお茶に出してくれる。
「ラディと仲がいいし、お行儀もよくて可愛らしいし。ねぇ? ラディはいつかお嫁に行ってしまうけれど、あなたはこの家に残ってくださるかしら?」
は? 私、お勉強や淑女の嗜みとしての手習いにこちらへ来てますけど、ほぼ毎日通ってますけど、ここん家の子供じゃないですよ?
そう錯覚してか、こんな事まで仰ってくださるほど、可愛がってくれている。
後ろの壁際で控えている伯爵家の家庭教師と侍女も、横を向いてこっそり苦笑いだ。
つまり、それだけ、ここに入り浸っているってこと。
「母上、それは、私がフロリス嬢を娶ってこの家の未来の女主人として迎え入れろと言う事ですか?」
「あら、シュティアン。お帰りなさい。うふふ、いい考えでしょう?」
新学期までのひと月半もある長期休暇のため、王都から戻られたのだろう、外套をたたんで腕に掛けたアーベントシュティアン様が、開かれた扉に凭れるようにして立っていた。
十二歳の貴族子女の王都でのプレデビューお茶会以降、多くの子息は貴族学校か騎士鍛練施設(軍人さんの士官学校みたいなもの?)に入学して、嫡男は貴族紳士に、後を継げない次男以下は領地や王国を守る騎士になるべく、十八歳まであらゆる事を学ぶらしい。
令嬢も貴族子女の通う高等学校かそこへ入学するための予備教育学校(略してプレップスクールとも言うらしい)で基礎を学んで、女官や文官を目指す人は貴族学校に、お家のためにどこかへ縁づいて嫁ぐ令嬢達は淑女教養学校に通うか家庭教師をつけて深層の令嬢として、花嫁修業に励むらしい。
お兄さまもアーベントシュティアン様も、互いの領地が近く、ヴェスペリ公爵家の領地内にある予備教育学校で知り合ったけれど、今は王都の王立貴族学校の寄宿舎に入学して、長期休暇しか会えない。
グラディオーレ様も、女家庭教師をつけての淑女教育と、大学院修士課程を修了した学士から一般教養を学んでいる。
何を隠そう、私も、一緒だ。
家庭教師と家で淑女教育を受けるのは、それぞれの家庭で行う。王族公爵家と、辺境地の中流伯爵家では、礼儀作法やしきたりなどにもレベル差があるからだ。
でも、令嬢として、王国の貴族として、必要な一般教養と語学、興味のある教科の学習に関しては、公爵家の好意で、私が向こうに出向き、グラディオーレ様と一緒に学んでいる。
「フロリスちゃんが来てくれるようになって、ラディも勉強に身が入るようになったのよ。感謝しているの。今日も朝から疲れたでしょう? これも食べてね」
ヴェスペリ公爵家の奥方さまは、グラディオーレ様とよく似た面差しにアーベントシュティアン様と同じ暗青紫の瞳がキラキラとした、少女のような愛らしい方で、飴色の髪がふわふわと結い上げられていて、高位貴族の奥方とは思えないほど気さくな方だ。
いつも手作りのお菓子を、勉強の後のお茶に出してくれる。
「ラディと仲がいいし、お行儀もよくて可愛らしいし。ねぇ? ラディはいつかお嫁に行ってしまうけれど、あなたはこの家に残ってくださるかしら?」
は? 私、お勉強や淑女の嗜みとしての手習いにこちらへ来てますけど、ほぼ毎日通ってますけど、ここん家の子供じゃないですよ?
そう錯覚してか、こんな事まで仰ってくださるほど、可愛がってくれている。
後ろの壁際で控えている伯爵家の家庭教師と侍女も、横を向いてこっそり苦笑いだ。
つまり、それだけ、ここに入り浸っているってこと。
「母上、それは、私がフロリス嬢を娶ってこの家の未来の女主人として迎え入れろと言う事ですか?」
「あら、シュティアン。お帰りなさい。うふふ、いい考えでしょう?」
新学期までのひと月半もある長期休暇のため、王都から戻られたのだろう、外套をたたんで腕に掛けたアーベントシュティアン様が、開かれた扉に凭れるようにして立っていた。
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