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ドジっ娘(死語)は嗜虐心と庇護欲を掻き立てる?

きらきら王子ルシーファ殿下

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     🍪

 あむ。

 子供の小さな口には少々大きめのクッキーだったけど、サクサクで、ホロリと崩れ、口に入った分は咀嚼され、バニラ風味の甘さが口に広がり、アーモンドの芳ばしい香りが鼻を刺激して、幸せが胸に温かく染みていく。

「美味しい」
「良かった。もっと食べて。お茶も淹れさせる」

 メイドさんがお茶を淹れているのを見て、頷くと、ルシーファ殿下は湯殿へ向かった。

   ꙳꙳꙳

 お風呂上がりの色白さん──ルシーファ殿下は、キラキラ度が上がって、眩しかった。

 男性だから、湯上がりのほこほこ感がさっぱりするまで、シャツの前をお臍近くまで緩めていたのだ。
 もちろん、下品なほど広げている訳ではなく、動くと時々腹筋の辺りや鎖骨の辺りが覗く、というもの。
 見せつけている訳じゃないし、そもそも、十二歳の男の子の上半身など、色気もあったもんじゃない。普通なら。

 ただ、ルシーファ殿下は、色白さんで、お風呂上がりの上気した頰と唇の赤ら味と、つやつやのゆで玉子肌、キラキラのピンクダイヤモンドのサラサラ髪とミントグリーンの宝石のような瞳は、十二歳の男の子でも十分、美しくて眩かった。

 ここ! スチール画をスクショしちゃうところだよね。

 ん? スチール画って何? すくしょ?

 時々、頭の中に、不思議な単語が現れる。けど、知らない言葉なので気にしない。すぐ忘れちゃうだろうし?

「まだ、残ってる。もっと食べて」
「十分、頂きました。これ以上食べると、お夕食が食べられなくて、お母さまに叱られます」
「そう。⋯⋯あとひとつだけ。ん」

 ん、とか言って、小さなお菓子を摘まみ、私の唇に当てた。

 あっまぁ~い!! 美味しい!!

「初めて食べました。他のお菓子と違って可愛くない真っ茶色なのに、なんて美味しいの?」
「ショコラーデ。昔は、甘みを足さなくて、苦くて、滋養剤としての薬だったんだ」
「お薬? 私、病気じゃないよ?」
「うん。今は、たくさんの砂糖と酪を使ってお菓子として出まわってる。大丈夫だよ」

 なんなんだろうか、キラキラ殿下はやたらと私にあれこれと、食べさせようとしてくる。
 肥らせたいのか? 餌付けしてる?

「もっと食べていいのに」
「いえ、こんな高級品、食べ慣れてしまったら、食べられない毎日がツラくなっちゃうでしょ? お父さまにおねだりなんて出来ないわ」

 ショコラーデなんて、今まで見たことないわ。きっと、稀少なものか、高価な物なのよ。

「社交デビューまで定期的に、貴族子女の茶話会は開かれるから、参加してくれれば、用意させるけど」
「私の暮らす領地は、王城ここまで馬車で1週間くらいかかるのよ? 今回が初めてだし、たぶん、毎回は来ないわ」

 そんな、参加するのが当たり前みたいな表情かおされてもね? こちとら洗練されたヽヽヽヽヽご令嬢方に田舎猿って呼ばれるくらい、片田舎の住人なんですよ?




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