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ドジっ娘(死語)は嗜虐心と庇護欲を掻き立てる?
私の責任だから!
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😨
風に靡くのにサラサラと爽やかな音がしそうな手入れの効いたピンクブロンドの髪は、少しだけ段を入れてセミロング。
宝石のようなミントグリーンの瞳は、感情の色を乗せずに、私を睥睨していた。
何か言って。この空気耐えられない。
私はすぐに、土下座なり立ち上がって頭を下げるなりするべきだった。
でも、ミントグリーンの瞳の眼力に、硬直してしまい、詫びも言い訳も出て来ない。
高そうな白い編み上げブーツに細かく飛び散る赤茶の染み。
なにより申し訳ないのが、色白さんの真っ白な股間を染め抜く紅茶の色だった。
これ、今すぐ洗っても、もうとれないんじゃないかしら⋯⋯
いや、まだ間に合う?
私は、咄嗟に、手近なテーブルに置かれた、リネンナプキンをひっ摑み、水差しの水をジャブジャブに染みこませて、色白さんのトラウザーズを汚した紅茶を叩くように拭っていく。
ザワッ
背後の女の子達、エプロンドレス姿のメイド達がザワつく。
明らかに、誰もが動揺していた。
先ほど私に、謝ることも出来ないのかと詰ったオレンジのドレスの子も、小猿だと、躾がなってないと扱き下ろした赤紫のドレスの子もだ。
「良かった! 少し薄くなったわ。もう少し、ちゃんと洗えば落ちるかも」
「⋯⋯そう」
やはり、色白さんの眼に感情は感じられなかった。
紅茶をぶっかけられても、怒りも悲しみもしないなんて、落ち着いていると言うより、無関心なのかしら? 無頓着?
「脱いで」
「え?」
「今すぐ脱いで。洗ってくるわ。それに、そのままだと風邪ひいちゃうかも。着替えなきゃ。ごめんね、お茶かけちゃって。わざとじゃないのよ」
「⋯⋯⋯⋯」
ほら早く。と、手を出すと、僅かに動揺が見られた。この場で脱ぐのか? 今すぐ? といったところだろうか。
確かに、公衆の面前で「脱げ」はなかったかしら。
でも、男の子だし、パンツ一丁でも風邪さえひかなきゃ大丈夫よね? むしろ、濡れたズボンのままの方が、冷えて風邪ひいちゃうわ。
「殿下。こちらへ。すぐにお召し替えを」
ハッとした女官が、殿下にこの場を退出するよう促す。
メイド達や植え込み近くで待機している護衛騎士、各テーブルで様子を覗う色とりどりの子供達は、ひと言も発せないまま動けずにいた。
お仕着せのメイド達は、私から濡らしたナプキンを受け取ったり、転がった茶器を拾ったり、数人が後始末を始める。
地味めな色合いのシンプルなドレスの女官に促されて、色白さんが建物の方へ向かうのに、私も着いていく。
「お嬢さまはどうぞあちらでお待ちください」
目で、子供達が固まるテーブルの方を示唆されるけど、首を振った。
「私のせいで真っ白な衣装が汚れちゃったんだから、責任持って洗うべきだし、色白さんが風邪を引いてしまうかもしれないから気になるわ」
お前のせいなんだからあっち行ってろと、そう如実に目で語る女官を、色白さんが片手をあげるだけで押し留める。
「いや。構わない。⋯⋯ついて来て」
「うん」
ゆっくり歩いているようなのに足の速い色白さんの後を、小走りでついていく。
「あのままでは張り詰めた空気が変わらないし、彼女だけあの場に残しても居づらいだろう」
私には、色白さんがなんと言ったのか聴こえなかったけれど、女官はハッとして頭を下げた。
風に靡くのにサラサラと爽やかな音がしそうな手入れの効いたピンクブロンドの髪は、少しだけ段を入れてセミロング。
宝石のようなミントグリーンの瞳は、感情の色を乗せずに、私を睥睨していた。
何か言って。この空気耐えられない。
私はすぐに、土下座なり立ち上がって頭を下げるなりするべきだった。
でも、ミントグリーンの瞳の眼力に、硬直してしまい、詫びも言い訳も出て来ない。
高そうな白い編み上げブーツに細かく飛び散る赤茶の染み。
なにより申し訳ないのが、色白さんの真っ白な股間を染め抜く紅茶の色だった。
これ、今すぐ洗っても、もうとれないんじゃないかしら⋯⋯
いや、まだ間に合う?
私は、咄嗟に、手近なテーブルに置かれた、リネンナプキンをひっ摑み、水差しの水をジャブジャブに染みこませて、色白さんのトラウザーズを汚した紅茶を叩くように拭っていく。
ザワッ
背後の女の子達、エプロンドレス姿のメイド達がザワつく。
明らかに、誰もが動揺していた。
先ほど私に、謝ることも出来ないのかと詰ったオレンジのドレスの子も、小猿だと、躾がなってないと扱き下ろした赤紫のドレスの子もだ。
「良かった! 少し薄くなったわ。もう少し、ちゃんと洗えば落ちるかも」
「⋯⋯そう」
やはり、色白さんの眼に感情は感じられなかった。
紅茶をぶっかけられても、怒りも悲しみもしないなんて、落ち着いていると言うより、無関心なのかしら? 無頓着?
「脱いで」
「え?」
「今すぐ脱いで。洗ってくるわ。それに、そのままだと風邪ひいちゃうかも。着替えなきゃ。ごめんね、お茶かけちゃって。わざとじゃないのよ」
「⋯⋯⋯⋯」
ほら早く。と、手を出すと、僅かに動揺が見られた。この場で脱ぐのか? 今すぐ? といったところだろうか。
確かに、公衆の面前で「脱げ」はなかったかしら。
でも、男の子だし、パンツ一丁でも風邪さえひかなきゃ大丈夫よね? むしろ、濡れたズボンのままの方が、冷えて風邪ひいちゃうわ。
「殿下。こちらへ。すぐにお召し替えを」
ハッとした女官が、殿下にこの場を退出するよう促す。
メイド達や植え込み近くで待機している護衛騎士、各テーブルで様子を覗う色とりどりの子供達は、ひと言も発せないまま動けずにいた。
お仕着せのメイド達は、私から濡らしたナプキンを受け取ったり、転がった茶器を拾ったり、数人が後始末を始める。
地味めな色合いのシンプルなドレスの女官に促されて、色白さんが建物の方へ向かうのに、私も着いていく。
「お嬢さまはどうぞあちらでお待ちください」
目で、子供達が固まるテーブルの方を示唆されるけど、首を振った。
「私のせいで真っ白な衣装が汚れちゃったんだから、責任持って洗うべきだし、色白さんが風邪を引いてしまうかもしれないから気になるわ」
お前のせいなんだからあっち行ってろと、そう如実に目で語る女官を、色白さんが片手をあげるだけで押し留める。
「いや。構わない。⋯⋯ついて来て」
「うん」
ゆっくり歩いているようなのに足の速い色白さんの後を、小走りでついていく。
「あのままでは張り詰めた空気が変わらないし、彼女だけあの場に残しても居づらいだろう」
私には、色白さんがなんと言ったのか聴こえなかったけれど、女官はハッとして頭を下げた。
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