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ドジっ娘(死語)は嗜虐心と庇護欲を掻き立てる?

ウェッジウッド愛が溢れましてすみません

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 私は今、これ以上にないくらい、やらかしていた。

 ふかふかのよく手入れされた芝生の上で両手をつき、項垂れている。

 視線の先には、黒に近いダークブルー地、クリーム色の枝葉に小猿が遊ぶ柄が上品な、金縁のウェッジウッドのカップ&ソーサーが転がっている。

 ウェッジウッドと言えば、ワイルドストロベリーやフロレンティーンターコイズ、コロンビアセージグリーン、アレクサンドラが有名だけど、このコーヌコピアも洗練されたデザインが素敵よねぇ⋯⋯
 豊かさのシンボルとしてギリシャ神話に登場する、縁起の良い「コーヌコピア(豊穣の角、Horn of Plenty)」をモチーフにした、上品でオーセンティックなシリーズで、クリーム色とダークブルーの上品なカラーコンビネーションで、アクセントとなるデザインには、優雅なユニコーンやパイプを吹くサテュロス、愛嬌たっぷりな動物たちがフルーツや枝葉模様の間から姿をのぞかせた、ウィットとエレガンスが融合したデザインで、さすがウェッジウッドと言わざるを得ない高級感がえも言われぬときめきと優雅な気分を味わえ⋯⋯(ウェッジウッド愛がはみ出て長くなりそうなので割愛シマス)

 割れなくて良かった。これ、円安の今でも一万二千円はするよね⋯⋯ じゃなくて。

 もちろん、その中味は大半が、芝生が吸ってしまって残ってない。
 そう、大半が。幾分は、とんでもない所にぶっかけてしまった。


 地面に手をついた私の前に転がる高級茶器。茶器と言ってもこれ、コーヒーカップだよね? 広口で縁にしか柄のない白いティーカップよりも、真っ直ぐ円筒形で全面に柄があるコーヒーカップの方が、絵面的には高級茶器の雰囲気を出しやすいし、小っちゃい画面でもわかりやすいんだろうけど、紅茶を飲む時のアイテムじゃないやん。

 ん? 小っちゃい画面? 円安? 一万二千円?

 なんのこと?

 割れずに済んだ高級磁器を眺めながら小首を傾げていると、複数の人の不興を買ってしまったようだ。

「ちょっと貴女。いつまでそうしているつもり!? 殿下にお詫びも出来ないの?」
「これだから、田舎の小猿は躾がなってないというのよ。誰がこの場に呼んだのかしら?」

 甲高い声も苛ついた声も投げかけられるけれど、どれも少女や成人前の、女性のソレだった。

「⋯⋯辺境地育ちだろうとみやこびとだろうと、国中の十二歳の貴族子女を集める茶話会なのだから、分け隔てなくこの場に居るのは当然だ。誰が呼んだとか関係ない」 

 やや不機嫌、まだ声変わりし始めたくらいの、甘くも高くもある少しだけ掠れた声が、擁護してくれているのか、淡々と事実を述べているだけなのか、判断つきづらいけれど、それでも女性達の口を閉じさせるのには有効だった。

 ただ、私は震え上がった。

 芝生の上に転がる高級磁器のその先に、白い上質なブーツが見える。
 そのまま視線をあげると、白いトラウザーズにふんわり袖の白いドレスシャツ、ゆるめに巻かれた白いクラヴァット。
 その上には、ミントグリーンの瞳にピンクブロンドが眩い、色白さんのおきれーなお顔が乗っていた。





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