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🐾旅と商人と精霊使い🐾
👣1 初めての異国の街
しおりを挟む検問所を抜けて街に入ると、この先は隣国であり、僕も見たことない異文化の様式建築物が目を楽しませた。
風が強く乾燥した土地だからか、土壁や焼き煉瓦を組み上げた建物が多く、僕の住んでいた町のような板を打ち付けた木造家屋や、木の上のログハウスは見当たらなかった。
草葺き屋根もない。
「そう。それも旅の楽しみのひとつさ」
イヌ目の半人の旅商人は、ニカッと笑った。
ラルクと同じで、黒っぽい歯ぐきと尖った歯がちょっと怖い。
この国に来るのは3度目らしくて、あれこれ説明してくれる。
戦闘ではからっきし役に立たなかったけれど、適材適所というか、こういう場面では頼もしかった。
自然信仰の強い地域なので、ロスクラリスを連れた僕は、神にも等しき大精霊を従えた大精霊使いと見られ、すれ違う人達がロスクラリスを崇め手を合わせていくし、露天商の兎や狸、食堂の砂ねずみが声をかけてくる。
「大精霊さま、寄って行きなっせ」
「大きな精霊を連れたお方、精霊の喜ぶ精霊力の回復にいい甘い水がありますよ」
「精霊の御遣いさま、地精をたっぷり含んだ果物がありますよ」
獣相の少ない(本当はない)僕は、妖精か霊長類の半人だと思われているようで、誰も下等種扱いはしない。
〔甘い水とやらはインチキ⋯⋯というか、ただの回復用霊水だけど、あの、地精を含んだ果物は美味しそうだね〕
「ロスクラリス、物を食べられるの?」
この半年、ロスクラリスが食事を取るところを見たことはなかったけど。
〔霊体だから食事はしないけど、大気中の光気、周辺の魔素や地精は吸収出来るよ〕
つまり、僕があの果物を食べることで繋がっているロスクラリスも地精を吸収したり、魔法を使う時に集める光気や魔素の一部を吸収してチカラにしてるらしい。
「じゃあ、せっかくだから食べていく?」
パピルスさんも精霊の(という事になってる)ロスクラリスが美味しそうだという果物が気になったらしく、露店の隣の、天幕の下に用意された喫食コーナーで、地精を含んだという果物の数種盛りをもらうことにした。
味は、僕の住んでいた町で食べる物と変わらないけれどやや濃い気がする。
食感はこちらの方が張りがあるというか、歯ごたえもある。
「瑞々しくて、旨味も濃くて、いい果物だね、オヤジさん」
各地を行商して歩くパピルスさんからみても、美味しい果物らしい。
「そうだろう? 精霊さまもお気に召していただけるといいのだがね」
〔勿論美味しいよ。ボクには味覚は解らないけれど、マスター(人前では僕の事をそう呼ぶ事にしたらしい)を通じて、地精は吸収出来るよ。ありがとう〕
売り物の果物を褒めてもらったのが嬉しいのか、精霊信仰の強い地域ゆえの、ロスクラリスが喜ぶ姿が嬉しいのか、狸のオヤジさんは歯を見せてニカッと笑った。
ロスクラリスが嬉しそうだったので、パピルスさんが別の商店と商談をしている隙に追加で果物を買い込み、ポケットに保管した。
〔今の君の魔力なら、まだまだ収納できそうだね〕
街を出たらいつ手に入るか解らないので、ロスクラリスのためにも、地精が多く含まれている食べ物や飲み物を見つけては、ポケットに保管していく。
パピルスさんの目には、次々買っては口にしているように見えているだろうけど。
「果物が好きなんですか?」
ほら、やっぱり訊かれた。めちゃ食いしてるようにしか見えないよね。
〔マスターが食べた物に含まれる魔素や霊気、地精がボクの活力になるから、本人の身にはならないんだ。過食症って訳でもないから気にしないで〕
「そうなんですね。ロスクラリスさんは、今までに見た精霊の中でも特にチカラが大きいので、ほっそりしたウルトルさんがよく保つなと思っていたのですが、そういう補給の仕方があったんですね。納得です」
納得しちゃうんだ⋯⋯
〔まあね。やたらお菓子ばかり食べる魔法使いや、肉を常人の何倍も食べる精霊使いはよくいるから。勿論、ボクが君を通じて地精を吸収するのと同じだよ〕
魔道士の間では有名な話なんだとか。
僕は、魔法が使えることを殆ど知られていなかったし、魔法使いとは歴代のパーティメンバーしか話すことはなかったから、知らなかったけれど。
おやつやデザートをたくさん仕入れ、街の冒険者協会で目的地の村や周囲の情報を訊いてから宿をとり、明日に備えてまだ早いけど休むことにした。
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