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🐾暗い陽の差さない地の底で🐾
👻4 神さまの、光一閃
しおりを挟む「な、ななな、何あれ?」
〔見たままじゃない?〕
隠し部屋の扉を開けた僕が見たもの。
それは、通路いっぱいに集まった魔獣や妖魔などの魔物の大群だった。
〔祭壇に供物を捧げられた時に自動召喚される魔族の気や、斃された魔獣の血の臭いに集まってんだよね〕
「あ、あんなの、僕はどうやって外に出たら?」
〔奴らがここに興味を失って居なくなるまで待つか、頑張ってアイツらより強くなって掃討するか、地上へひとっ飛びの魔法を覚えるか、かな?〕
どれも、待つ以外に、現状すぐに実行可能な提案はなかった。
〔たぶん、今の君が外に出たら、ものの数分も保たないでアイツらの腹の中だよねぇ〕
「解ってるけど、想像したら怖くなるから言わないで」
〔たぶん、魔族の気に当てられて集まった妖魔や下位魔族は、その内すぐに居なくなるよ。問題は、血の臭いに興奮した魔獣達かな〕
血の臭いを薄くしたら、興味を失って居なくなるんじゃないのかと言うことだった。
〔そこで、ボクがいい魔法を教えてあげよう。名付けて洗浄一閃〕
所謂生活魔法の一つ、クリーンやウォッシュに似たもので、彼(?)のオリジナルなのだそうだ。
〔多くは、水や風、光などを利用した魔法でしょ? これは画期的だよ?〕
クリーンは、風や光の魔素を利用して汚れを吹き飛ばしたり、弱点を突いてバイ菌や汚れの存在を無くす魔法。
ウォッシュは、主に水、或いは精霊などの特殊素材を使って、洗い流す魔法。
更にリカバリーという、再生魔法で元の状態を復元する事で綺麗にする方法もある。⋯⋯僕には使えないけど。
〔いいかい? こうして⋯⋯〕
頭の中に魔法紋や術式、必要な種類の魔素や手順がインプットされていく。
目の前で、宙に浮いたままの神さまが前に手を突き出し〘洗浄一閃〙と唱えたら、眩しい光の束が手のひらから奥の壁に向かって、文字通り一閃した。
シュバッと光ってバシュシューッなんて音を立てて大放出され、目が痛いほどに室内が眩しく、光が消えた時には、光の束の通り道には、血の跡もドルガ達の足跡も、魔獣の残骸も綺麗になくなっていた。
〔どう? これなら、血の臭いも腐肉の臭いも消えてなくなるでしょう?〕
「⋯⋯そこだけ床がピカピカの研磨した石材みたいになってるね」
〔そりゃあ〘クリーンアップ〙だもの。ま、ちょっとやり過ぎちゃったかな?〕
確かに。
とりあえず、教えられた通りに、光で汚れや魔獣の残骸が放つ瘴気を灼き、その光ごと水の気を含む魔素で押し流す。
〔うん、うまくいったじゃん。一回目からこれなら、すぐにいっぱしの魔法使いにもなれるかもね?〕
霊魂状態で僕と同調しているからこその、頭の中に直接教え込まれ、神さまの魔法発動を追体験させられる事で、そのまま僕も使えるのだ。便利と言えば便利だし、正確に伝わるけど⋯⋯
「なんだか、気が遠くなるような⋯⋯?」
〔そりゃあ、水は岩肌に含まれる水分を使えるし、火も祭壇下の炉から出せる。でも、光は君が出した明光と火の照り返ししかない。それを魔法に使えるほど増幅するには、君の命の光を燃やしてるんだよ〕
その、消えてたはずの祭壇の火を再び点火したのも君の魔法だしね。疲れただろう?
疲れたなんてもんじゃない。
神さまの声は頭に直接響くから聴こえるけど、身体は重くてどんどん意識が⋯⋯
〔いいよ、しばらく寝てなよ。魔物たちが居なくなるまでもう少しかかるだろうし〕
倒れた床は柔らかく、必死になって瞼を開けると、見覚えのある毛布が僕を受け止めたようだった。
〔サービスだよ。ボクは今は君と繋がってるからね。君のポケットにあった寝具を出してあげたんだよ〕
記憶や意識を同調するだけじゃなくて、僕のポケットの中にまで手を出せるのか。
さすが、神さま⋯⋯だ、ね。
〔いつまでも神さまって呼ばれるのも、君や彼って他人行儀なのも寂しいから、起きたら、今生の名前をつけてもらおうかな?〕
名前? 根性の? どんな名前だよって思ったけど、僕の意識が保ったのはそこまでだった。
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