上 下
14 / 38
🐾暗い陽の差さない地の底で🐾

👻4 神さまの、光一閃

しおりを挟む


「な、ななな、何あれ?」
〔見たままじゃない?〕


 隠し部屋の扉を開けた僕が見たもの。

 それは、通路いっぱいに集まった魔獣や妖魔などの魔物の大群だった。



〔祭壇に供物を捧げられた時に自動召喚される魔族の気や、斃された魔獣の血の臭いに集まってんだよね〕

「あ、あんなの、僕はどうやって外に出たら?」

〔奴らがここに興味を失って居なくなるまで待つか、頑張ってアイツらより強くなって掃討するか、地上へひとっ飛びの魔法を覚えるか、かな?〕

 どれも、待つ以外に、現状すぐに実行可能な提案はなかった。

〔たぶん、今の君が外に出たら、ものの数分も保たないでアイツらの腹の中だよねぇ〕
「解ってるけど、想像したら怖くなるから言わないで」

〔たぶん、魔族の気に当てられて集まった妖魔や下位魔族は、その内すぐに居なくなるよ。問題は、血の臭いに興奮した魔獣達かな〕

 血の臭いを薄くしたら、興味を失って居なくなるんじゃないのかと言うことだった。

〔そこで、ボクがいい魔法を教えてあげよう。名付けて洗浄一閃クリーンアップ

 所謂いわゆる生活魔法の一つ、クリーンやウォッシュに似たもので、彼(?)のオリジナルなのだそうだ。

〔多くは、水や風、光などを利用した魔法でしょ? これは画期的だよ?〕

 クリーンは、風や光の魔素を利用して汚れを吹き飛ばしたり、弱点を突いてバイ菌や • • • • 汚れの • • • 存在を • • • 無くす • • • 魔法。
 ウォッシュは、主に水、或いは精霊などの特殊素材を使って、洗い流す • • • • 魔法。

 更にリカバリーという、再生魔法で元の状態を復元する事で綺麗にする方法もある。⋯⋯僕には使えないけど。

〔いいかい? こうして⋯⋯〕

 頭の中に魔法紋や術式、必要な種類の魔素や手順がインプットされていく。

 目の前で、宙に浮いたままの神さまが前に手を突き出し〘洗浄一閃クリーンアップ〙と唱えたら、眩しい光の束が手のひらから奥の壁に向かって、文字通り一閃した。

 シュバッと光ってバシュシューッなんて音を立てて大放出され、目が痛いほどに室内が眩しく、光が消えた時には、光の束の通り道には、血の跡もドルガ達の足跡も、魔獣の残骸も綺麗になくなっていた。

〔どう? これなら、血の臭いも腐肉の臭いも消えてなくなるでしょう?〕
「⋯⋯そこだけ床がピカピカの研磨した石材みたいになってるね」
〔そりゃあ〘クリーンアップ〙だもの。ま、ちょっとやり過ぎちゃったかな?〕

 確かに。

 とりあえず、教えられた通りに、光で汚れや魔獣の残骸が放つ瘴気を灼き、その光ごと水のを含む魔素で押し流す。

〔うん、うまくいったじゃん。一回目からこれなら、すぐにいっぱしの魔法使いにもなれるかもね?〕

 霊魂状態で僕と同調しているからこその、頭の中に直接教え込まれ、神さまの魔法発動を追体験させられる事で、そのまま僕も使えるのだ。便利と言えば便利だし、正確に伝わるけど⋯⋯

「なんだか、気が遠くなるような⋯⋯?」

〔そりゃあ、水は岩肌に含まれる水分を使えるし、火も祭壇下の炉から出せる。でも、光は君が出した明光ライティングと火の照り返ししかない。それを魔法に使えるほど増幅するには、君の命の光を燃やしてるんだよ〕

 その、消えてたはずの祭壇の火を再び点火したのも君の魔法だしね。疲れただろう?

 疲れたなんてもんじゃない。
 神さまの声は頭に直接響くから聴こえるけど、身体は重くてどんどん意識が⋯⋯

〔いいよ、しばらく寝てなよ。魔物たちが居なくなるまでもう少しかかるだろうし〕

 倒れた床は柔らかく、必死になって瞼を開けると、見覚えのある毛布が僕を受け止めたようだった。

〔サービスだよ。ボクは今は君と繋がってるからね。君のポケットにあった寝具を出してあげたんだよ〕

 記憶や意識を同調するだけじゃなくて、僕のポケットの中にまで手を出せるのか。
 さすが、神さま⋯⋯だ、ね。

〔いつまでも神さまって呼ばれるのも、君や彼って他人行儀なのも寂しいから、起きたら、今生の名前をつけてもらおうかな?〕

 名前? 根性の? どんな名前だよって思ったけど、僕の意識が保ったのはそこまでだった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴方の幸せは願えません

アズやっこ
恋愛
家に届いた招待状。 私の視線の先にいる貴方を私は見つめる。 白い服を着て扉を見つめる貴方。扉から白いドレスを纏った彼女が入ってきた。 幸せそうに微笑んで、私と同じように視線の先にいる貴方を見つめている。 今だけは私を見ないで。 そのまま彼女を見つめていて。 貴方の為に流す涙はこれが最後。 さよなら、愛していたわ。 でもさよなら…。 私は貴方の幸せを願えない…。  ❈ 作者独自の世界観です。

ピコっぴのひとりごと

ピコっぴ
エッセイ・ノンフィクション
日記のような、レポートのような? もしかしてエッセイ? ……違うか 思ったこと、あったことを、活動報告とは違うな~と思うけど書き込んでるものです。 非公開でメモ代わりに書いてた中から、記録がてら公開してみたり。 たぶん、他人様から見ても面白くないものです。 ので、活動報告やTwitterでは報告シマセン。 気がついた方が、なんとなく覗いて、なんや小説ちゃうんか、と、そっ閉じしてくれるとありがたいです。

婚約「解消」ではなく「破棄」ですか? いいでしょう、お受けしますよ?

ピコっぴ
恋愛
7歳の時から婚姻契約にある我が婚約者は、どんな努力をしても私に全く関心を見せなかった。 13歳の時、寄り添った夫婦になる事を諦めた。夜会のエスコートすらしてくれなくなったから。 16歳の現在、シャンパンゴールドの人形のような可愛らしい令嬢を伴って夜会に現れ、婚約破棄すると宣う婚約者。 そちらが歩み寄ろうともせず、無視を決め込んだ挙句に、王命での婚姻契約を一方的に「破棄」ですか? ただ素直に「解消」すればいいものを⋯⋯ 婚約者との関係を諦めていた私はともかく、まわりが怒り心頭、許してはくれないようです。 恋愛らしい恋愛小説が上手く書けず、試行錯誤中なのですが、一話あたり短めにしてあるので、サクッと読めるはず? デス🙇

【完結】宮廷占い師は常に狙われています! ~魔の手から逃げきってみせますよ~

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
宮廷占い師――他国にはない特殊な役職を代々引き継ぐ子爵令嬢リンネア。その的中率はほぼ100%を誇る。そのため国王陛下や宰相閣下の信頼も厚かった。同じ占い師であった母の跡を継いだリンネアは、常に狙われている。捕まえて利用しようとする者、邪魔だから排除しようと考える者……そして、彼女を穢そうとする者。乙女でなくては占えない。彼女は愛する人と結ばれるまで、お役目を果たすことが出来るのか!? ハッピーエンド確定 ※タロットカードはトートを参考にしていますが、100%一致しません。解釈違いのご指摘は無視させていただきます。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/03/29……完結 2023/12/23……エブリスタ、恋愛ファンタジー#トレンド 3位 2023/12/23……アルファポリス、女性向けHOT 71位 2023/12/22……連載開始

50代後半で北海道に移住したぜ日記

江戸川ばた散歩
エッセイ・ノンフィクション
まあ結局移住したので、その「生活」の日記です。

死んだ日の朝に巻き戻りしました  ら、溺愛生活がリスタート?

ピコっぴ
ファンタジー
婚約者に裏切られ、家族に見限られ、絶望の中、飛び込みをした⋯⋯ ら、泳げる者は入水自殺は無理なのだと判る まして、我が血族は精霊術で名を上げた名家 水霊が私を死なせなかったし、あまりの苦しさに藻搔いて、岸に辿り着いてしまった 結局、本当のところ、死にたい訳ではなかったのだ それがわかったので、なんとか生き直そうと思った矢先、事故で死んでしまった 愚かな自分に泣けてくるけど、その涙を流す身体ももう動かない 精霊の導きであの世へ⋯⋯ と、思っていたのに、目が覚めたら、投身自殺した当日の朝に戻っていた?

聖女も勇者もお断り🙅

ピコっぴ
ファンタジー
何しに喚ばれたんか知らんけど ( 'ω'o[お断りします]o 【萌々香の場合】 子供の頃から、なぜか水辺が苦手で酷いと卒倒することもあった私は、水濠で清水に飲み込まれ、異世界に召喚された 『聖女』として でも、無色の私は『月无』──憑き無しとして捨て置かれた 後から聖女さまと呼んでも、誰が助けてなんかやるものか ※ヒーローの本文内での確定がやや遅めです 表紙は自筆 富士通のAndroidで、SONYのアプリSketch にて☝左手中指を使用

婚約破棄します

アズやっこ
恋愛
私は第一王子の婚約者として10年この身を王家に捧げてきた。 厳しい王子妃教育もいつか殿下の隣に立つ為だと思えばこそ耐えられた。殿下の婚約者として恥じないようにといつも心掛けてきた。 だからこそ、私から婚約破棄を言わせていただきます。  ❈ 作者独自の世界観です。

処理中です...