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🐾暗い陽の差さない地の底で🐾

👻1 焰に焼かれて死んだ僕

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 ──冷たい⋯⋯雨?

 痺れるほど冷たい雫が、顔に、手に足に当たる。

 おかしいな。僕は、確か、ドルガに抱えられて、隠し部屋の中の祭壇に据えられたでっかい黄金の盃に乗せられて⋯⋯

 祭壇の下にあった炉から出たのだろう踊る焰に焼かれて──死んだはずだ。

 熱くて息苦しくて、痛くて。

 あんなのを体験したら、火に近づくことさえ恐ろしくなって、この先どう生きていけば。

 ああ、おかしいな。死んだのに『この先』だって。


〔おい〕


 目を開けるのが怖い。消し炭になった身体を見たくないし、何より全身重くて怠くて動きたくない。


〔なあってば〕


 そもそも、ここはどこ? 死後の世界だったりして。そりゃそうだよね、死んだんだもの。


〔おい!! 一人で完結してんなよ、さっきから呼んでんだろ〕

 誰?

〔誰でもいいだろ、さっさと目を覚ませ! 本当に死ぬ気か?〕

 本当にも何も、僕は燃えさかる焰に焼かれて⋯⋯

〔本当にそうか? 死んだ自分を確認したのか?〕

 死んだ自分なんて確認出来る訳が⋯⋯

〔いいから起きろよ〕

おぃう起きる?」

 うおっ!? ヘンな掠れた──でも確かに僕の声だ。

おぇがうぇう声が出る?」

〔そうだ。手足も動くはずだぞ? 起きろってば〕

 う、うん。

 僕はさっきから、誰と喋っているのだろう。
 痛みを予測して怯えながら、手合いに力を入れる。

「いっ! たた⋯⋯折れる」

 身を捻って横向きになり、左腕を床について上半身を起こす。

 節々が痛んだけど、思ったよりスムーズに起き上がれた。
 恐る恐る目を開くと⋯⋯

「何にも見えない」
〔そりゃ、明かりもつけてないし、窓もないからな〕

「君はどこに居るの?」
〔すぐ傍だよ〕

 手を伸ばし、辺りを探ろうとしてみるけど、何にも触れない。

〔そこには何にもねぇよ。お前は壁から離れた真ん中に寝転がってたからな〕

「そうなの? ここはどこ?」

〔とある神の祭壇の前さ〕

 て、ことは、僕が生贄にされた隠し部屋!?

〔まあな。生贄になんぞ、なってないがな〕

「へ?」

〔神は、生贄なんぞ求めてない。人間が勝手に捧げてくるだけで、あんなもん貰っても迷惑だっつぅの〕

「そ、そうなの」

 なんか、逆らわない方がいいみたい。

〔お前、魔法、使えるんだろ?〕
「え?」
〔仲間には秘密にしてたみたいだが、魔法、使えるんだろ?〕

 な、何でそれを⋯⋯

〔お前の人生を振り返った。なかなかの奴隷っぷりだな。逆らおうとか、対等に扱ってもらおうとか思わなかったのか?〕
「そりゃ、思ったさ。でも、力も体力も俊敏さも何もかも勝てないんだよ?」

〔魔法に長けた種族はいるだろうが、あの「仲間 • • 」程度なら、お前の方が魔法は強かっただろうに〕
「誰も教えてくれないから、魔力を持ってるだけの、ただの子供だよ」

〔ふむ〕

 そう言えば、姿が見えないし、近くに居ないのか触ることも出来ないだけじゃなくて、彼(?)は、口に出してない僕の考えも読んで答えてる?

〔そうだ。流れ込んで来るというか、聴こえるというか。そうだな、読んでるんじゃなくて、同調してるとでも言えばいいのか〕

「同調? これも魔法なの?」

〔ちょっと違うが、まあそうだな。よし。教えてやるから、明かりをつけてみろ〕

 言うが早いか、こちらが了承もしてない内に、頭の中に、明かりをつける魔法の起動方法が流れ込んでくる。

〘明光〙 ライティング 

 一本だけ立てた人差し指の先に、やや黄色味を帯びた明るい光が灯り、ぽわぽわと光っている。

〔初めてにしてはなかなか上手いじゃないか。そのままもう少し大きくして、天井に向かって投げろ〕

 言われるままに、灯りの大きさや強さを想像して、ぽーんと天井へ向かって投げる。

 僕の〘明光〙 ライティング で生まれた光は、天井に当たる直前で留まり、浮いた状態で固定された。

「え? 何これ」

 床に散らばる魔石や魔核と、灯りを反射して鱗が光る片腕。恐らくゲイルの物。

 あちこちに血塗れで動かなくなった魔獣の残骸と、壁や床には血糊が飛び散っていた──



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