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第3話 ユニークスキルは『守銭奴』です
45 乱れ飛ぶ手首
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人混みが多いと出て来るのが、アレ。
大騒ぎになるからやめて欲しい⋯⋯
そう。俺の重そうなお財布ちゃん。腰からぶら下げてる奴。革製の袋に小銭の束が入ってる訳だけど、そんなに魅力的に見えるのか。グッチの財布とかルイヴィトンのウォレットって訳じゃないのに、人を惹きつけるらしい。
やっぱりショルダーバッグに入れた方が平和かな。
雑貨や若者向けのファッションの店が並ぶ通りで三回、果物屋や軽食の屋台の並ぶ通りで五回。
なんの数かって?
スリやひったくりの手首が斬れ落ちた回数。
その度、人の悲鳴は上がるし辺りに血が飛ぶし。
殺伐としてんなぁ。せっかくの休みが。
他の人も俺と同じく腰に袋をつけてんのに、なんで俺ばっかり狙われるのよ?
「そりゃ、盗みやすそうに見えるんでしょうね?」
「田舎から出て来たお上りさんみたいに、辺りを見回すから、抜けたやつに見えるんじゃない? シャキッと歩きなよ」
「実際、重量もあるし、手触りズッシリ詰まってる感じしますもんね。盗っ人には解るんじゃないですか?
しかも、その革袋自体、空間拡張収納袋なんでしょ? その袋の中がカラでも、充分おつり来ますよ」
女神が俺のために用意した財布代わりの革袋。素材そのものは普通の革なんだけど、女神の魔法だか祝福だかがかかっていて、破れて穴空いたり傷ついたりしないし、中味は幾らでも入る⋯⋯かもしれない。女神の言によれば、中にはリヤカーいっぱいの小銭が入ってるらしい。
女神が俺に授けてくれた固有能力【守銭奴】の自衛能力がこれまた強力で、俺から財産を盗むと、その手首が突然切断されるのである。
ひったくり犯が手首から先ごと、俺の財布を落とすとする。まあ、自衛能力が発動したんだな。
が、そいつが落とした俺の財布を拾って持ち逃げしようとした孤児が走り出した途端、今度はその子の手首から先もちょん切れるのだ。
恐るべし、女神の祝福と自衛能力。
何が何でも、俺から離れない仕様なんや。凄ぇよな。ありがたいけどちょっと怖い。
で、エディさんとヨナスさんと通りを歩き始めて2時間足らずの間に、8回、ひったくりやスリのお手々が飛んだのである。
「まあ、ひったくりやスリの常習犯がたくさん捕まるし、俺は再生術の練習になっていいけどな」
エディさんは諦めムード。ヨナスさんはややげっそり気味。
「こんなに、スリやひったくりの常習犯が逮捕されるなんて⋯⋯」
今まで捕まらなかっただけで、居たという事実に打ちのめされているようだ。
警備隊の従騎士としては、ショックなのかな。
この街の出身者としてショックなのかな。ご両親は役所で働いてるって言ってたっけ。
「て言うか、みんな学習能力ないんか? 腕切り落とされてんの、さすがに数回続いたらこいつヤバい思うやろに」
「たぶん、オートスキルだと解ってないんじゃないかな? セイヤに見つからなければ持ち逃げ出来ると勘違いしてんだと」
「ああ。 俺が、盗られたー! 待てちくしょーって魔法使ってると思う訳? 残念だけど、俺が知らなくても反応するんやけどねぇ」
イケメンは屋台で買った飲み物をクイッといくのも絵になるな。
俺はステンレス制の二重構造保温マグポットに入れて貰ってるので、いつでも温かくて美味しい。
野菜と果物のスープみたいなもんだけど、喉にすりおろした物が引っかからないし飲みやすい。日本のコンビニやスーパーで売ってる量産品と違って添加物もないし、砂糖や調味料も入ってないのに、爽やかな甘みと旨味が超美味い。
っておばさんに伝えたら、そのまま宣伝文句に使わせてくれって、喜んでた。
添加物は最初通じなかったけど、保存が利くように混ぜる状態維持のための薬という説明をしたらなんとなく理解してもらえた。
ので、保存料という言葉を採用したみたいだった。ここは魔法があるし、だいたい近い物もあるみたいで、自然そのままで美味しいという意味だと解るみたい。
そして、通算九度目の腕が飛んで、エディさんに後で魔力を補填させてあげる約束をして、手をくっつけてもらう。
ヨナスさんが呼んで来た警邏の当番がスリの子供を連行していく。
体の小ささに対して血が出すぎたのと、自分の手首がなくなったというショックで、貧血症でふらふらなのを心配すると、エディさんが留置所までついて行って、途中倒れたら介抱すると請け負ってくれたので、その間ヨナスさんと通りの真ん中の広場にある噴水の縁に腰掛けて、通行人を眺めながら待つ。
エディさんが居なくなるのを待っていたかのように、いかにもごろつきな男達が6人、俺達を囲んだ。
人混みが多いと出て来るのが、アレ。
大騒ぎになるからやめて欲しい⋯⋯
そう。俺の重そうなお財布ちゃん。腰からぶら下げてる奴。革製の袋に小銭の束が入ってる訳だけど、そんなに魅力的に見えるのか。グッチの財布とかルイヴィトンのウォレットって訳じゃないのに、人を惹きつけるらしい。
やっぱりショルダーバッグに入れた方が平和かな。
雑貨や若者向けのファッションの店が並ぶ通りで三回、果物屋や軽食の屋台の並ぶ通りで五回。
なんの数かって?
スリやひったくりの手首が斬れ落ちた回数。
その度、人の悲鳴は上がるし辺りに血が飛ぶし。
殺伐としてんなぁ。せっかくの休みが。
他の人も俺と同じく腰に袋をつけてんのに、なんで俺ばっかり狙われるのよ?
「そりゃ、盗みやすそうに見えるんでしょうね?」
「田舎から出て来たお上りさんみたいに、辺りを見回すから、抜けたやつに見えるんじゃない? シャキッと歩きなよ」
「実際、重量もあるし、手触りズッシリ詰まってる感じしますもんね。盗っ人には解るんじゃないですか?
しかも、その革袋自体、空間拡張収納袋なんでしょ? その袋の中がカラでも、充分おつり来ますよ」
女神が俺のために用意した財布代わりの革袋。素材そのものは普通の革なんだけど、女神の魔法だか祝福だかがかかっていて、破れて穴空いたり傷ついたりしないし、中味は幾らでも入る⋯⋯かもしれない。女神の言によれば、中にはリヤカーいっぱいの小銭が入ってるらしい。
女神が俺に授けてくれた固有能力【守銭奴】の自衛能力がこれまた強力で、俺から財産を盗むと、その手首が突然切断されるのである。
ひったくり犯が手首から先ごと、俺の財布を落とすとする。まあ、自衛能力が発動したんだな。
が、そいつが落とした俺の財布を拾って持ち逃げしようとした孤児が走り出した途端、今度はその子の手首から先もちょん切れるのだ。
恐るべし、女神の祝福と自衛能力。
何が何でも、俺から離れない仕様なんや。凄ぇよな。ありがたいけどちょっと怖い。
で、エディさんとヨナスさんと通りを歩き始めて2時間足らずの間に、8回、ひったくりやスリのお手々が飛んだのである。
「まあ、ひったくりやスリの常習犯がたくさん捕まるし、俺は再生術の練習になっていいけどな」
エディさんは諦めムード。ヨナスさんはややげっそり気味。
「こんなに、スリやひったくりの常習犯が逮捕されるなんて⋯⋯」
今まで捕まらなかっただけで、居たという事実に打ちのめされているようだ。
警備隊の従騎士としては、ショックなのかな。
この街の出身者としてショックなのかな。ご両親は役所で働いてるって言ってたっけ。
「て言うか、みんな学習能力ないんか? 腕切り落とされてんの、さすがに数回続いたらこいつヤバい思うやろに」
「たぶん、オートスキルだと解ってないんじゃないかな? セイヤに見つからなければ持ち逃げ出来ると勘違いしてんだと」
「ああ。 俺が、盗られたー! 待てちくしょーって魔法使ってると思う訳? 残念だけど、俺が知らなくても反応するんやけどねぇ」
イケメンは屋台で買った飲み物をクイッといくのも絵になるな。
俺はステンレス制の二重構造保温マグポットに入れて貰ってるので、いつでも温かくて美味しい。
野菜と果物のスープみたいなもんだけど、喉にすりおろした物が引っかからないし飲みやすい。日本のコンビニやスーパーで売ってる量産品と違って添加物もないし、砂糖や調味料も入ってないのに、爽やかな甘みと旨味が超美味い。
っておばさんに伝えたら、そのまま宣伝文句に使わせてくれって、喜んでた。
添加物は最初通じなかったけど、保存が利くように混ぜる状態維持のための薬という説明をしたらなんとなく理解してもらえた。
ので、保存料という言葉を採用したみたいだった。ここは魔法があるし、だいたい近い物もあるみたいで、自然そのままで美味しいという意味だと解るみたい。
そして、通算九度目の腕が飛んで、エディさんに後で魔力を補填させてあげる約束をして、手をくっつけてもらう。
ヨナスさんが呼んで来た警邏の当番がスリの子供を連行していく。
体の小ささに対して血が出すぎたのと、自分の手首がなくなったというショックで、貧血症でふらふらなのを心配すると、エディさんが留置所までついて行って、途中倒れたら介抱すると請け負ってくれたので、その間ヨナスさんと通りの真ん中の広場にある噴水の縁に腰掛けて、通行人を眺めながら待つ。
エディさんが居なくなるのを待っていたかのように、いかにもごろつきな男達が6人、俺達を囲んだ。
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