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第3話 ユニークスキルは『守銭奴』です

44 ガールハントは品定めが大事らしい

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 おさげの女の子が二人とポニーテールの子。
 からし色やレンガ色の髪。
 お目々はパッチリ水色やマリンブルーの瞳。
 花柄のワンピースを腰の辺りで革ベルトで抑え、下には薄い生地のモンペみたいなのを穿いていた。

 他の人達も似たような感じなので、パンタロン姿やダボッとしたズボンを穿くのがこの地域の一般的な女の子の格好のようだ。

「スカートだけだと、転ぶと怪我するし、冷えるだろう?」

 シュカちゃんも、スカートの下はアラビアンな下穿きをはいてたよな。

「セイヤさんの住んでた所は、そんなに女の子達は開放的な服装だったのですか? この辺りじゃ、娼婦だってズボンは穿かなくても素肌は見せませんよ」
「開放的って言うか、階段をあがってて下に男がいたら、スカートの中を覗いたのなんのって喧嘩になるくらい、覗かれたくなけりゃそんな尻に張り付いたような短いスカートはくなって言いたくなるような女子が多かったなぁ」
「暗がりに引き込まれたり、攫われたりしませんか? 親がよく、そんな格好で外に出しますね」

 ヨナスさんにはカルチャーショックのようだ。

「まあ、性犯罪がないとは言いがたいかな。でも、流行りの格好を追っかけるのに、女子は必死なのさ。冷えよりもおしゃれなんだな。ミニスカートは、10年か20年くらいのサイクルで定期的に流行るみたいだよ」

 リバイバルの度に、前より短くなってる気がするけど。その内、男の腰パンみたいに、ケツがはみ出たスカートが流行るんじゃないかって心配で、恐ろしいよ。っても、もう、そんなブームが来るかどうか、見届けられないけど。

 見えないのがたまにチラッと見えるのがいいのに、あんな、いつも出してちゃ、ありがたみも色気もないよな。

「師匠が聞いてたら、発狂しそうです」

 確かに。ルーカス風紀委員長は怒り出すかもね。

 別に、エロい目的でナンパする訳じゃないので、おさげとポニーテールの女子三人組に声をかけてみようかな。

「ああ、あれはダメだよ」

 え? なんで? エディさんから待ったがかかる。
 おさげだけど、可愛い子なのに、可愛い子好きのエディさんが、ダメ出しした。なんでやねん。

「あの三人、どの子も大した手荷物がない」

 確かに、ポニーテールの子が小さなポシェットを斜めがけにしてるくらいで、おさげの二人はポーチも持ってない。

「買い物に来て休憩してる仲良し3人に見えるけど、バッグもないのに買い物中もないよね」

 先日もまわって気がついたけど、現代日本みたいに、レジ袋をくれるような所はない。ビニールがないからとかじゃなくて、そういう習慣がないのだ。
 買い物をする人達は、袋や鞄を持参するのだ。

「冷やかしだけのようにも見えるけど、あれは恐らく、男の声かけ待ち。奢らせる気満々だと思うね」
「え?」
「美味しいものを奢らせて、楽しいお喋りしたら、バイバイって感じ? 右のおさげの子は下手したら財布も持ってきてないかもね。
 セイヤがそれを楽しむだけでいいって言うのならいいけど、実のない話を聞かされて、高い食い物奢らされて終わりみたいなのじゃなくて、ちゃんとお友だちが欲しいなら、ああいう男待ちの子は声かけちゃダメだよ」

 おお。さすが、色男。詳しいな? 隣を見ると、ヨナスさんは何かメモをとっていた。

「じゃあ、あれ」

 今度は、日本のモールなんかにいそうな、ちょっとおしゃれな格好をした二十歳くらいの女性と女子高生くらいのきらきらペア。
 垂れ下がる大きなピアスやネックレス、爪も色がついてて、ばっちりメイクの綺麗なお姉さんは好きですかって感じ。

「あれは人妻。旦那がかなり金かけて磨いてるね。手を出したら酷い目に合わされるかも」

 おお。そんな事、一目でわかるの? あ、そうか。エディさんは、【鑑定】 アプレィズ でプライバシー侵害しない程度に、大まかなことは解るんだっけ。

「それもあるけど、あの肌の艶とか装飾品とか、かなり金かけてると思うから、家がお金持ちのお嬢さんでない限り、パトロンか旦那がいるって事。自分が育てた花を他人に摘み取られたら激怒するでしょ?」

 そういう経験あったのかな? 聞いてみたいけど訊けない。

「もし家が資産家だとか、旦那が金持ちって言うんじゃなければ、プロの男を食い潰す女だね」
「プロ?」
「色んな男に色目を使って、貢がせたり奉仕させたり。そうやって働かずに生きていく女」

 嫌なプロやな。職業愛人?

「あれもなかなか難しいみたいだよ。依存しすぎない程度に頼って、干からびない程度に搾り取って、男を常に惹きつけておかなけりゃならないし、美容や教養に手が抜けないよね」

 昔の芸者や花魁みたいなもんかな?
 ただ甘えてりゃいいってもんでもないんだな。

「じゃあ、どの子がいいのさ?」
「そうだな⋯⋯ て、だいたい、セイヤ、街に遊びに行こうって誘ってくれたのは、俺と遊びたいんじゃなくて、女の子が目当てだったの?」

 ぎく。実は女の子の釣り餌にする気だった、とは言えない。
 だって、ものすごく喜んでくれて、おしゃれして来てくれたんやもんな。気が引ける。

「エディさんには何度も命を助けてもらったし、これからも仲よくしたいなー、なんて⋯⋯」

 これはマジ。

 エディさんがいなかったら、俺はあの日に死んでた。第五隊と街に向かう途中で襲撃されたときも、あ、俺、死んだ?ってタイミングが十数回あった。
 それらは全て、エディさんが助けてくれたんだ。命の恩人だ。

 ちょっと下ネタでふざけたりするけど、やる時はやるって言うか、剣技は凄いし、回復魔法だって再生術という上級魔法が使える人はそう多くないそうだ。
 面倒見はいいし、強くてイケメン。

 そういう趣味はないけど、アニキって呼びたいくらい。

「うーん、兄貴って呼ばれるよりかは、今のエディの方がいいかな?」
「うん。だから、これからもずっとエディさんって呼ぶから、色々教えて欲しいし、仲よくしたい」
「んじゃ、今夜は一緒に風呂入って一晩語り合おうか」

 なんだろう。エディさんが言うと、18禁に聴こえる。
 男同士背を流し合って、一晩酒やジュースを片手に話し込むだけなのに、違う意味に聴こえるんだが。

「それは、エアハルトの普段の行いが悪いせいですね」

 え? ルーカス委員長がどこから? と、思ったら、ヨナスさんの口真似だった。

「師匠なら言いそうじゃないッスか?」
「俺、本人がいるのかと思った」
「君たち酷くない? 持ち上げて落とすの?」
「ごめんなさい。でも、一瞬は疑っちゃいますよ」
「本当にしてもいいんだけど。まだセイヤは未成年だしね」

 未成年じゃなかったらどうだと言うんだろう。
 やっぱり、こういう所は一緒にいて気が抜けないな。男相手に貞操の心配する日が来るとはなぁ。

 適当に街の中をぶらぶらして、言い物件が当たれば儲け物感覚で歩くことになった。




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