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第3話 ユニークスキルは『守銭奴』です
32 襲撃②
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攫われるな? あれが、シュカを攫うの? 人攫い?
「若い娘が攫われたら終わりだからな」
そこでふと思い出した。
俺の中ではゴブリンって、プレステやなんかのRPGゲームで、たいてい雑魚として、1~数匹で出て来るスライムと並ぶ弱い敵だ。
だけど、あるダークファンタジーでは、徒党を組んで襲って来て、個々のランクは低いのに集団では厄介な敵として描かれてた。
もしかして、あっちなの?
女の子さらって巣で繁殖しちゃったり、弱そうなのに知恵が回って、集団で組織的に襲って来たり、初心者には向いてない討伐対象。
「そうだ。少ない内に殲滅しないと手に負えなくなるぞ。それから、あの不衛生な爪で引っ掻かれたりするなよ? 長いリーチの利く武器を使え。シュカには近寄せるんじゃないぞ」
いや、俺の武器になるものは、サンマのナイフだけなんだが。
「俺、刺身包丁しか持ってません」
魚を捕る時に使った枝を構えてみる。
ぎゃぎゃぎゃっ キッキッキッ
醜鬼に笑われた気がした。アイツらは棍棒や、石を括り付けた鈍器を持っているのに、人間の俺は拾った枝だ。
先生は、こちらへ向かってくる数匹を相手にするので精一杯のようだし、レェーヴ君は自分に近寄せないよう振り回すだけ。
キルケはさすがに戦っていたが、一対一を崩されると押され気味だ。
街の外に警備隊がいる筈もないけど、誰が巡回に来てくれないか、助けを呼ぶ手段はないのか、考える。思いつきもしないけど。
何か、光るものが上空へと飛び上がり、街の方へ飛んでいった。
ラーガー先生が、精霊術の報せを飛ばしたのかな。
なら!
助けが来るまで、なんとしても保たせなきゃ。
天幕の内側で、震えてるシュカちゃん。初めての戦闘に、腰が抜けたのかもしれない。醜鬼と女の子は最悪の組み合わせだから怖いのかもしれない。
「シュカちゃん、何か、魔法撃てない? 火の玉とか、雷とか」
「み、みんなに誤爆しない?」
「してもしれてる程度で! キルケが反撃出来る隙を作るためにも」
「わ、わかった。何を撃とうかしら」
「火だ!! 一匹も討ち漏らす訳にはいかない! 多少、林に延焼しても構わん。城壁と魔法で守られてる街はともかく、こいつらを逃がせば、近隣の村が壊滅する可能性がある!!」
ラーガーさんの叫びに、シュカちゃんの喉がヒュッと鳴る。
壊滅するってなんだよ。こいつら、そんなに厄介なヤツらなのか?
親父や祖父さんに習った剣道の真似事で、近寄る醜鬼を打ち付けて近寄せない事は出来ても、斃すことは出来ない。
まだ、先生が2匹とキルケが一匹しか斃せてない。
気のせいか、増えて来たみたいだ。近くに巣があるのかもしれない。
竈を崩され、火が消えると、薄明かりに慣れていた人間の目には殆ど何も見えなくなる。
「うぉわ!?」
俺の腰に何か、飛びついてきた。何かって醜鬼だろう。動物園の飼育小屋みたいな臭いがクサイ!!
シュカちゃんの放った火が、崩れた竈の薪について、辺りが明るくなると、醜鬼と俺らの混戦模様が浮き彫りになる。
背後から上着を引っ張るやつ、腰紐を引くやつ。醜鬼が三匹集ってきた。
「おい待て、俺は男だぞ? ズボンを引っ張るな!! 俺とは繁殖できへんから!!」
ゥッキーィ!? キキキぎゃぎゃぎゃ!!
あ、らまあ。
脱がせた上着を投げ捨てた醜鬼と、ショルダーバッグを持ち逃げしようとした醜鬼が、手首が両手ともスッパリなくなって、血を噴き出しながら喚きまわる。
ズボンを脱がしにかかってた醜鬼はその様子を見て硬直してるので、蹴り飛ばす。
そうか。上着も鞄も、財布と同じ俺の財産と見做せば、自衛機能が発動するんや。
そっからは、しばらく面白怖かった。
俺のショルダーバッグを拾うやつが次々に腕を失くす。
腕を失くすと言うことは、戦闘力を失くすと言うこと。
俺のショルダーバッグを拾いあげようとした奴、ズボンを脱がそうとした奴、俺に集る奴が次々に腕をちょん切られ、そこをキルケがとどめを刺す。
「セイヤさん、凄いです」
不思議なことに、シュカちゃんを襲おうとしたやつも、途中から俺に軌道修正するのだ。
俺は女じゃないぞ!?
「女でも両性具有でもいいよ! そのままスパスパやっちゃって!!」
「え? ちょ、レェーヴ君、両性具有ってなんだよ! 俺は男だってば」
「きゃああ!!」
やはり本物の女の子がいいのか、何匹かがシュカちゃんに襲いかかる。
俺が間に入ってシュカちゃんを抱きかかえるように縦になると、俺のズボンを引きずり下ろしたやつが両手を失くし、喚きながら逃げて行くが、キルケに斬り捨てられる。
段々、ヤツらの脂で切れ味が悪くなっているようで、一撃では斃れなくなっていた。
「畜生!! 初心者向けのそんなに重くない手頃な値段のにしたら、脂で斬れねぇよ!!」
元々、多対一でやり合うようには設定されていないのだろう。折れないだけまだマシか。
それまでの子供みたいな小柄なヤツらばかりだったのに、これまでと違うひときわ大柄なやつが三匹出て来た。
一番大きな奴のひと声で、それまでラーガー先生やキルケに応戦していたヤツらが武器を捨て、逃げるのかと思いきや。
「逃がすな。シュカ! 火を放て!!」
そうは言われても、俺に被さられながら震えてるし、俺も醜鬼に身ぐるみはがされそうで、それどころじゃないのだ。
手をなくしても次々に俺らをひん剝こうとする醜鬼。
「だーかーらー、俺は男やって」
ここで裸にするのは諦めたのだろう。今度は複数で、シュカちゃんを抱きかかえる俺ごと、神輿のように担ぎ上げて、運び出した。
「ぅええぇぇえ!?」
攫われるな? あれが、シュカを攫うの? 人攫い?
「若い娘が攫われたら終わりだからな」
そこでふと思い出した。
俺の中ではゴブリンって、プレステやなんかのRPGゲームで、たいてい雑魚として、1~数匹で出て来るスライムと並ぶ弱い敵だ。
だけど、あるダークファンタジーでは、徒党を組んで襲って来て、個々のランクは低いのに集団では厄介な敵として描かれてた。
もしかして、あっちなの?
女の子さらって巣で繁殖しちゃったり、弱そうなのに知恵が回って、集団で組織的に襲って来たり、初心者には向いてない討伐対象。
「そうだ。少ない内に殲滅しないと手に負えなくなるぞ。それから、あの不衛生な爪で引っ掻かれたりするなよ? 長いリーチの利く武器を使え。シュカには近寄せるんじゃないぞ」
いや、俺の武器になるものは、サンマのナイフだけなんだが。
「俺、刺身包丁しか持ってません」
魚を捕る時に使った枝を構えてみる。
ぎゃぎゃぎゃっ キッキッキッ
醜鬼に笑われた気がした。アイツらは棍棒や、石を括り付けた鈍器を持っているのに、人間の俺は拾った枝だ。
先生は、こちらへ向かってくる数匹を相手にするので精一杯のようだし、レェーヴ君は自分に近寄せないよう振り回すだけ。
キルケはさすがに戦っていたが、一対一を崩されると押され気味だ。
街の外に警備隊がいる筈もないけど、誰が巡回に来てくれないか、助けを呼ぶ手段はないのか、考える。思いつきもしないけど。
何か、光るものが上空へと飛び上がり、街の方へ飛んでいった。
ラーガー先生が、精霊術の報せを飛ばしたのかな。
なら!
助けが来るまで、なんとしても保たせなきゃ。
天幕の内側で、震えてるシュカちゃん。初めての戦闘に、腰が抜けたのかもしれない。醜鬼と女の子は最悪の組み合わせだから怖いのかもしれない。
「シュカちゃん、何か、魔法撃てない? 火の玉とか、雷とか」
「み、みんなに誤爆しない?」
「してもしれてる程度で! キルケが反撃出来る隙を作るためにも」
「わ、わかった。何を撃とうかしら」
「火だ!! 一匹も討ち漏らす訳にはいかない! 多少、林に延焼しても構わん。城壁と魔法で守られてる街はともかく、こいつらを逃がせば、近隣の村が壊滅する可能性がある!!」
ラーガーさんの叫びに、シュカちゃんの喉がヒュッと鳴る。
壊滅するってなんだよ。こいつら、そんなに厄介なヤツらなのか?
親父や祖父さんに習った剣道の真似事で、近寄る醜鬼を打ち付けて近寄せない事は出来ても、斃すことは出来ない。
まだ、先生が2匹とキルケが一匹しか斃せてない。
気のせいか、増えて来たみたいだ。近くに巣があるのかもしれない。
竈を崩され、火が消えると、薄明かりに慣れていた人間の目には殆ど何も見えなくなる。
「うぉわ!?」
俺の腰に何か、飛びついてきた。何かって醜鬼だろう。動物園の飼育小屋みたいな臭いがクサイ!!
シュカちゃんの放った火が、崩れた竈の薪について、辺りが明るくなると、醜鬼と俺らの混戦模様が浮き彫りになる。
背後から上着を引っ張るやつ、腰紐を引くやつ。醜鬼が三匹集ってきた。
「おい待て、俺は男だぞ? ズボンを引っ張るな!! 俺とは繁殖できへんから!!」
ゥッキーィ!? キキキぎゃぎゃぎゃ!!
あ、らまあ。
脱がせた上着を投げ捨てた醜鬼と、ショルダーバッグを持ち逃げしようとした醜鬼が、手首が両手ともスッパリなくなって、血を噴き出しながら喚きまわる。
ズボンを脱がしにかかってた醜鬼はその様子を見て硬直してるので、蹴り飛ばす。
そうか。上着も鞄も、財布と同じ俺の財産と見做せば、自衛機能が発動するんや。
そっからは、しばらく面白怖かった。
俺のショルダーバッグを拾うやつが次々に腕を失くす。
腕を失くすと言うことは、戦闘力を失くすと言うこと。
俺のショルダーバッグを拾いあげようとした奴、ズボンを脱がそうとした奴、俺に集る奴が次々に腕をちょん切られ、そこをキルケがとどめを刺す。
「セイヤさん、凄いです」
不思議なことに、シュカちゃんを襲おうとしたやつも、途中から俺に軌道修正するのだ。
俺は女じゃないぞ!?
「女でも両性具有でもいいよ! そのままスパスパやっちゃって!!」
「え? ちょ、レェーヴ君、両性具有ってなんだよ! 俺は男だってば」
「きゃああ!!」
やはり本物の女の子がいいのか、何匹かがシュカちゃんに襲いかかる。
俺が間に入ってシュカちゃんを抱きかかえるように縦になると、俺のズボンを引きずり下ろしたやつが両手を失くし、喚きながら逃げて行くが、キルケに斬り捨てられる。
段々、ヤツらの脂で切れ味が悪くなっているようで、一撃では斃れなくなっていた。
「畜生!! 初心者向けのそんなに重くない手頃な値段のにしたら、脂で斬れねぇよ!!」
元々、多対一でやり合うようには設定されていないのだろう。折れないだけまだマシか。
それまでの子供みたいな小柄なヤツらばかりだったのに、これまでと違うひときわ大柄なやつが三匹出て来た。
一番大きな奴のひと声で、それまでラーガー先生やキルケに応戦していたヤツらが武器を捨て、逃げるのかと思いきや。
「逃がすな。シュカ! 火を放て!!」
そうは言われても、俺に被さられながら震えてるし、俺も醜鬼に身ぐるみはがされそうで、それどころじゃないのだ。
手をなくしても次々に俺らをひん剝こうとする醜鬼。
「だーかーらー、俺は男やって」
ここで裸にするのは諦めたのだろう。今度は複数で、シュカちゃんを抱きかかえる俺ごと、神輿のように担ぎ上げて、運び出した。
「ぅええぇぇえ!?」
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