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第3話 ユニークスキルは『守銭奴』です
25 ペットと風呂
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♨️
「ただいま~!! ぷるぷる、いい子にしてたか?」
トイレ壺の蓋は、いつも開けてある。中でふるふると揺れて返事をする。
「本当に、返事をしているように見えますね」
「でしょう? やっぱり、言葉か感情かを理解してますよね」
みんなは飼わないのかな。
「飼いませんよ、スライムなんて」
「うちの弟は、一度は飼おうとしましたけど、飼育環境や餌なんかに意欲を無くしたみたいで、結局飼うのを止めたみたいでしたよ」
「それが普通だと思いますけど」
スカベンジャースライムに限らなければいいんじゃないかな。
植物を食べる種類とか、昆虫や魚や鳥なんかの肉を裂いて与えたらいいやつとか。
見た目はコイツの方が可愛いけどな。
「そこまでしてスライム飼いたいとは思わないよ」
「あ、そ。じゃ、この街の人達は、何を飼うの? 犬? 猫? 小鳥、兔かネズミ?」
「セイヤの住んでた街では、ネズミを飼うんですか?」
「ドブネズミじゃなくて、こう、丸くてシマ模様とかブチの可愛いやつね。尻尾もふさふさの愛玩動物。亀やトカゲ、昆虫や魚も多いかな。最近では、庭の雑草を食べてもらうのにヤギ買う人も話題になってたし、ミニ豚もペットとして売ってたかな」
手を丸めて合わせ、くるっと丸みを見せながら、ハムスターを手の中に隠すような仕草を見せる。
俺は、なんも飼ってなかったけど。羽根や飼育小屋のワラや砂とか、目に見えなくても落ちてるフケや毛なんかが、母さんによくないだろうから、怖くて飼えなかった。
本当は、何か飼ってみたかったけどな。
「ヤギは家畜ですね。私達の認識は。ミルクやチーズのために。最近ではヤギよりも、毛皮や羊毛、食肉などの利用価値から羊の方が多くなってますけど。豚も主に食肉用の家畜ですね。革製品にも利用されますが」
まあそうだろうな。愛玩動物を飼うのは、見た目や手触りで癒されるためであったり、子供の代わりに可愛がるためで、生活に余裕がないと飼わないだろうしな。
女神は、圧倒的に多いのは農民だと言っていた。
警備隊の人達は、農民は年収は200万₲ほどだと言っていた。
屋台で惣菜パンや焼き肉の串を買ってみたけど、1₲1円で換算すれば、物価は日本の四分の一以下だ。
電気代やガス・水道代が要らないから200万そこそこでもやっていけるのかもしれない。
そこ行くと、生活魔法は便利そうでいいな。
「生活魔法と言えば、今夜は風呂のある日?」
「ああ、セイヤさんは生活魔法がまだ使えないんでしたっけ。そうですね。今夜はあると思います」
「⋯⋯エディさんか入って済んだら呼んで」
あの人、調子よく話しながら入って来て、あちこち眺めたり、流してやるとか言ってボディタッチして来そうで怖い。
「先に入らないんですか? 彼はまだ街にいますよ?」
「不思議な感知能力で帰って来て、闖入してきそう」
「ああ。勘はいい人ですから、有り得なくはないですね。でも、勤務時間内に戻っては来ないのでは」
そうかな。取り敢えず、さっきのどさくさで着替えを買いそびれたので、下着とタオルだけ持って、ルーカスさん達と階下の風呂に向かう。
⋯⋯待てよ? 掃除やトイレをスライムに任せてたけど、まさか、風呂までスライムプールとか言わんだろうな?
「そういう医療施設もありますが、普通に湯を張りますよ」
あるんかい。スライムプール。異世界怖ぇ。ドクターフィッシュのスライム版だと思うしかないな。
SFみたいに、光で老廃物を焼く風呂とか霧や風で汚れを吹き飛ばすとか、不思議風呂じゃなくてよかった。
それでも、掃除屋として、隅っこにスライムいるかも。
ルーカスさんは日誌をつけに戻っていったけれど、ヨナスさんが一緒に入ってくれる事に。脱衣室で籠に上着やなんかを入れていくと、他の警邏隊員達が数人入ってくる。
ヨナスさんといい、この人達といい、みんな細マッチョでいい身体してんなぁ。日頃の訓練で、誰でもあんな風になるのかな。俺も参加してみようかな。
「我々の中に、他人の持ち物に手を出す奴がいるとは思いませんが、一応忠告しておきます。
この、セイヤの持ち物に手を出すと、固有能力が発動して、手首が切断されますので、絶対に触らないように。先ほど捕らえられた罪人は、その被害者でもありますので、ただの脅しではありません。忠告はしましたよ?」
ヨナスさんの忠告は、服やバッグ、財布が血塗れになるのを防ぐためにも有り難いけれど、そういう心配があるのかと思うと、ちょっと寂しくもなる。
ここは、警備隊の中でも、市民を守る警邏隊の宿舎なんだ。その中に泥棒が居るとは思いたくない。
「それは、僕も同じですよ。でも、可能性はゼロではありません。そんなつもりはなくても、いざ物を目にして、出来心が芽生えないとは限りませんから。高い志を持った志願兵ばかりではなく、仕方なく義務で入隊した兵役の若者もいますからね」
そうだね。歩いてて、偶々金が落ちてたら、拾って隠匿しちゃうってのは誰でもあるだろうし。俺も、昨日自販機の釣銭の忘れ物の30円を自分の物にしようとして、追いかけてトラックとぶつかってここに来る事になったしな。
麻の服は皺になるかもと、丁寧にたたみ、いざパンツを下ろそうとした時。
「セイヤ!! この国の風呂は慣れないだろ? まだ魔法も使えない事だし、俺が身体洗ってあげるよぉ」
驚いた。マジで驚いた。
本当に、エディさんが飛び込んできたのだ。
ヨナスさんの指示で、半裸の警邏隊員達に抱えられて、外に出されるエディさん。
ヨナスさんも入隊して一年の新入りだけど、ルーカスさんの従騎士として就きながら資格を取って、中間管理職の下っ端の権利はあるそうだ。偉いなぁ。兵役任期が終わっても、このまま警備隊に残りたいと言ってたしな。
人生設計がしっかりしてるんだな。
エディさんが闖入して来るという騒動はあったけど、気を取り直して風呂に入る。
ここにはシャワーはなかった。手桶で掛け湯をするか、魔法で水を浴びるかだそうで。
当然、俺は手桶派。
隊員が複数人で入るための大浴場で、流し場も浴槽も広く、岩を並べた縁からゆっくり入って、二歩目で沈んだ。頭まで。
ビックリしたわ。まさか、あんな深いとは。
「セイヤ、ごめん、言うの忘れてた。あっちの、窓際が浅いんです。湯の色と光の屈折で深さが判りにくいですけど。セイヤの身長じゃ危険でした。すみません。慣れないセイヤのために一緒に入った意味がありませんでした」
凄く恐縮して謝り倒してくれる。
「い、いいよ、凄いビックリしたけど、泳げるから慌てなければ大丈夫だから」
窓際は、奥がより浅く、座っても半身浴レベルで、手前も一段あって底は座ったら首まで浸かる程度。
窓の外は庭で、植え込みの向こうで木刀を振る隊員が見えた。その向こうに夕陽も。
慌ただしい一日が、気持ちいい風呂と夕陽で締め括られる。
人の手首が落ちる騒動もあったけど、まあまあ、いい一日だったな。
その後、地を這うような男の悲鳴でみんなが脱衣場に出てみると、手首が切断された男が血を流しながら転げ回っているという騒ぎがあったけど。
そのおかげで、駆けつけたエディさんに舐めるような目で裸見られて泣きそうになったのも付け加えとく。
「ただいま~!! ぷるぷる、いい子にしてたか?」
トイレ壺の蓋は、いつも開けてある。中でふるふると揺れて返事をする。
「本当に、返事をしているように見えますね」
「でしょう? やっぱり、言葉か感情かを理解してますよね」
みんなは飼わないのかな。
「飼いませんよ、スライムなんて」
「うちの弟は、一度は飼おうとしましたけど、飼育環境や餌なんかに意欲を無くしたみたいで、結局飼うのを止めたみたいでしたよ」
「それが普通だと思いますけど」
スカベンジャースライムに限らなければいいんじゃないかな。
植物を食べる種類とか、昆虫や魚や鳥なんかの肉を裂いて与えたらいいやつとか。
見た目はコイツの方が可愛いけどな。
「そこまでしてスライム飼いたいとは思わないよ」
「あ、そ。じゃ、この街の人達は、何を飼うの? 犬? 猫? 小鳥、兔かネズミ?」
「セイヤの住んでた街では、ネズミを飼うんですか?」
「ドブネズミじゃなくて、こう、丸くてシマ模様とかブチの可愛いやつね。尻尾もふさふさの愛玩動物。亀やトカゲ、昆虫や魚も多いかな。最近では、庭の雑草を食べてもらうのにヤギ買う人も話題になってたし、ミニ豚もペットとして売ってたかな」
手を丸めて合わせ、くるっと丸みを見せながら、ハムスターを手の中に隠すような仕草を見せる。
俺は、なんも飼ってなかったけど。羽根や飼育小屋のワラや砂とか、目に見えなくても落ちてるフケや毛なんかが、母さんによくないだろうから、怖くて飼えなかった。
本当は、何か飼ってみたかったけどな。
「ヤギは家畜ですね。私達の認識は。ミルクやチーズのために。最近ではヤギよりも、毛皮や羊毛、食肉などの利用価値から羊の方が多くなってますけど。豚も主に食肉用の家畜ですね。革製品にも利用されますが」
まあそうだろうな。愛玩動物を飼うのは、見た目や手触りで癒されるためであったり、子供の代わりに可愛がるためで、生活に余裕がないと飼わないだろうしな。
女神は、圧倒的に多いのは農民だと言っていた。
警備隊の人達は、農民は年収は200万₲ほどだと言っていた。
屋台で惣菜パンや焼き肉の串を買ってみたけど、1₲1円で換算すれば、物価は日本の四分の一以下だ。
電気代やガス・水道代が要らないから200万そこそこでもやっていけるのかもしれない。
そこ行くと、生活魔法は便利そうでいいな。
「生活魔法と言えば、今夜は風呂のある日?」
「ああ、セイヤさんは生活魔法がまだ使えないんでしたっけ。そうですね。今夜はあると思います」
「⋯⋯エディさんか入って済んだら呼んで」
あの人、調子よく話しながら入って来て、あちこち眺めたり、流してやるとか言ってボディタッチして来そうで怖い。
「先に入らないんですか? 彼はまだ街にいますよ?」
「不思議な感知能力で帰って来て、闖入してきそう」
「ああ。勘はいい人ですから、有り得なくはないですね。でも、勤務時間内に戻っては来ないのでは」
そうかな。取り敢えず、さっきのどさくさで着替えを買いそびれたので、下着とタオルだけ持って、ルーカスさん達と階下の風呂に向かう。
⋯⋯待てよ? 掃除やトイレをスライムに任せてたけど、まさか、風呂までスライムプールとか言わんだろうな?
「そういう医療施設もありますが、普通に湯を張りますよ」
あるんかい。スライムプール。異世界怖ぇ。ドクターフィッシュのスライム版だと思うしかないな。
SFみたいに、光で老廃物を焼く風呂とか霧や風で汚れを吹き飛ばすとか、不思議風呂じゃなくてよかった。
それでも、掃除屋として、隅っこにスライムいるかも。
ルーカスさんは日誌をつけに戻っていったけれど、ヨナスさんが一緒に入ってくれる事に。脱衣室で籠に上着やなんかを入れていくと、他の警邏隊員達が数人入ってくる。
ヨナスさんといい、この人達といい、みんな細マッチョでいい身体してんなぁ。日頃の訓練で、誰でもあんな風になるのかな。俺も参加してみようかな。
「我々の中に、他人の持ち物に手を出す奴がいるとは思いませんが、一応忠告しておきます。
この、セイヤの持ち物に手を出すと、固有能力が発動して、手首が切断されますので、絶対に触らないように。先ほど捕らえられた罪人は、その被害者でもありますので、ただの脅しではありません。忠告はしましたよ?」
ヨナスさんの忠告は、服やバッグ、財布が血塗れになるのを防ぐためにも有り難いけれど、そういう心配があるのかと思うと、ちょっと寂しくもなる。
ここは、警備隊の中でも、市民を守る警邏隊の宿舎なんだ。その中に泥棒が居るとは思いたくない。
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そうだね。歩いてて、偶々金が落ちてたら、拾って隠匿しちゃうってのは誰でもあるだろうし。俺も、昨日自販機の釣銭の忘れ物の30円を自分の物にしようとして、追いかけてトラックとぶつかってここに来る事になったしな。
麻の服は皺になるかもと、丁寧にたたみ、いざパンツを下ろそうとした時。
「セイヤ!! この国の風呂は慣れないだろ? まだ魔法も使えない事だし、俺が身体洗ってあげるよぉ」
驚いた。マジで驚いた。
本当に、エディさんが飛び込んできたのだ。
ヨナスさんの指示で、半裸の警邏隊員達に抱えられて、外に出されるエディさん。
ヨナスさんも入隊して一年の新入りだけど、ルーカスさんの従騎士として就きながら資格を取って、中間管理職の下っ端の権利はあるそうだ。偉いなぁ。兵役任期が終わっても、このまま警備隊に残りたいと言ってたしな。
人生設計がしっかりしてるんだな。
エディさんが闖入して来るという騒動はあったけど、気を取り直して風呂に入る。
ここにはシャワーはなかった。手桶で掛け湯をするか、魔法で水を浴びるかだそうで。
当然、俺は手桶派。
隊員が複数人で入るための大浴場で、流し場も浴槽も広く、岩を並べた縁からゆっくり入って、二歩目で沈んだ。頭まで。
ビックリしたわ。まさか、あんな深いとは。
「セイヤ、ごめん、言うの忘れてた。あっちの、窓際が浅いんです。湯の色と光の屈折で深さが判りにくいですけど。セイヤの身長じゃ危険でした。すみません。慣れないセイヤのために一緒に入った意味がありませんでした」
凄く恐縮して謝り倒してくれる。
「い、いいよ、凄いビックリしたけど、泳げるから慌てなければ大丈夫だから」
窓際は、奥がより浅く、座っても半身浴レベルで、手前も一段あって底は座ったら首まで浸かる程度。
窓の外は庭で、植え込みの向こうで木刀を振る隊員が見えた。その向こうに夕陽も。
慌ただしい一日が、気持ちいい風呂と夕陽で締め括られる。
人の手首が落ちる騒動もあったけど、まあまあ、いい一日だったな。
その後、地を這うような男の悲鳴でみんなが脱衣場に出てみると、手首が切断された男が血を流しながら転げ回っているという騒ぎがあったけど。
そのおかげで、駆けつけたエディさんに舐めるような目で裸見られて泣きそうになったのも付け加えとく。
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