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第2話 驚きの新世界

13 初めてのモンスターに遭遇!!

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「僕、魔法を使った事がないのですが、どうやるんですか?」

 そもそもあの女神、俺をこの世界に適した身体に造り替えたり、加護を付与してくれてり、固有能力ユニークスキルを授けてくれたらしいけど、使い方や詳しい話は後まわしのまま、ここに着いてしもて、そのまんまやんけ。

「え? 今、魔法を使ったことがないと言いましたか?」
「ええ。生活魔法? 使ったことないので、出来ればお風呂入れないかなぁと」

 ルーカスさんは、数秒間俺を見ていたが、ゆっくりワーテルガーさんを振り返る。

「君は、魔法適性がないはずはないんだが」
「そうなんですか?」
「管理神の加護ギフトを持っていて、鑑定単眼鏡アプレィズモノクルで開示されているものを見る限りは能力値ステータスも、魔法適性が高いはずだ」

 そりゃそうか。可能な限り、ここで死ににくいように便宜を図ると言ってたもんな。女神さん。

「僕の住む街⋯⋯川西だけじゃなくて、兵庫県内でも日本人の殆どが、魔法は使えなかったので、使い方や種類は、全くピンときませんね」
「そうなのか。勿体ないな。魔法士を多く輩出する貴族家に生まれていたら、かなりいい人生を送れそうな資質を持っているのに」

 持っているのに? 使えないから? 今から教えてくれてもいいんだけど。いや、教えてくださいってお願いしてみるか。

「まあ、それは明日以降、追々でいいんじゃないですか? 今、教えてすぐクリーンが使える訳じゃないでしょう?」

 それはそうだけど。結局、風呂には入れなさそうだな。

「取り敢えず、今夜は、わたしがクリーンをかけてやろう。明日以降は、風呂のある宿か借家を照会してやってもいいし、自分でクリーンを覚えるのもいいだろう」

 そう言って、近づいて来たワーテルガーさん。
 こうしてみると、背、高いな。一九〇㎝はあるな。鎧を外しても尚ぶ厚い胸板、太い腕。でも、スッキリ見えるのは身長のせいかな。暑苦しくない程度のカッチョいいビルダー的な。

 俺の頭に手を乗せ、「行くぞ」の一言で、ワーテルガーさんの全身から淡く光るオーラ?が揺らめき立ち、温かいものが俺の全身に降りかかる。
 ちょっとだけチリッとしたけれど、あとはなんて事はなく、「終わったぞ」の一言で手が離れていく。

 まるで、シャワーを浴びた後のさっぱり感があるので、本当に、綺麗になったのだろう。

「それじゃ。また明日な」

 くぅ~、ホンマにカッコいいなぁ。俺もカッコいい大人になるぞ。

「ありがとうございます。おやすみなさい」

 二人が出て行った後、ブルッと震えが来て、何度も中断された小便を済ませることにした。

 衝立の向こうで、鎮座する、小さめの背もたれのない椅子くらいの大きさの壺。
 美術品みたいだけど、便器なんやな。
 壁にあるフックに、穴の空いた板が引っかかってるから、大便する時はこれを便座にするんやな。

 改めて、ご子息をズボンの前合わせの隙間からこんにちはさせる。
 はぁ~。用足しひとつでこんなに問題あるとは思わんかったなぁ。

 チャックもボタンもないズボンの前合わせ部分が心許ないが収納して、取り敢えず完了。ホッとしたヮ。

 壺の底で、ぷるぷるしたものが、レモンソース掛けのゼリーみたいになった。

 朝までにアレが吸い込んで、捨てやすくなるんかな。

 蓋をしようとした時。

 ぶるる

 やっぱり、中のぷるぷるが動いた気がする。

 気のせいじゃなかったのか? もう一度見ると、揺れて、伸び縮みしている。

 尿が少しづつ浸透していくにつれぷるぷるも尿の色に染まっていくのはともかく、段々揺れが激しくなってきた。

「なっ、なんや!? これ?」

 気になって、蓋して寝るなんてムリや。

 向こうの壁際にある暖炉の、炭興し用のゴトクに引っかけられた火かき棒を摑み出し、それを武器に、そっとぷるぷるを突いてみる。

 ブワッと伸びてい拡がり、火かき棒にとり餅のように纏わり付き、激しくブルブルした後、ペッと火かき棒を壺の外に吐き出した。

「わぁぁあ」

 反撃してきた!?

「今度はなんですか?」

 まだ遠くへ行っていなかったのか、ルーカスさんが飛び込んでくる。

 便壺の前で尻餅をついている俺を見て、訝しがるルーカスさん。

「つ、壺の中の水饅頭が襲って来た」
「スライムがですか?」
「スライム? これが?」

 スライムって、ゲームなんかで最弱のモンスターだよな?
 
 それが、なんで便壺の中に隠れてるんや!?




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