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第1話 女神のやらかしと落とし前

4 貨幣価値

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     💹

≪通貨も当然、この世界とあなたの世界では違いますので⋯⋯≫
「はっ!! 俺の貯金!!」

 将来、祖父じいさんの田舎の岡山にでも、自然が多いええ(良い)土地を買うて、母さんのために健康にいい暮らしやすい家を建てよう思て、お年玉も小遣いもバイト代も殆ど残して貯金してたのに!!

≪ですから、あなたの貯金に見合う金額分を、こちらの貨幣価値に換算して、お渡しします。大金ですので、保管のために、特殊性能をつけた袋に入れておきますから、お受け取りください≫

 受け取れと言われて本能的に両手を揃えて胸の前に差し出す。

 一瞬、ズシッと重みが来て、うおっ何十㎏なんや!? 人間より重ないか!? と腕が下がったが、すぐにスッと軽くなる。

 手のひらにあるのは、革製の巾着袋。手触りから、中味は金属──小銭が詰まってるように感じた。

≪そうです。この世界では、紙幣は使われません。通貨の殆どが硬貨です。高額になると、宝石に似た魔鉱石で扱われます≫

 紐を緩め、口を開いて中身を覗くと、長い紐に穴のある硬貨が数珠繋ぎに通されているのが数束。
 取り出してみると、江戸時代の一文銭か、もっと昔の和同開珎を、紐に通して束ねていた物によく似ていた。
 丸い硬貨に四角い穴なのも同じだ。まあ、和同開珎とは銘打たれてなかったけど。

 不思議なことに、その束は、出しても中に同じ物がまた存在してた。

≪勿論です。全額をこの世界の貨幣で持てば、リヤカーいっぱいになりますよ。人間に持てるはずがないでしょう? 必要に応じて取り出せるよう、中は空間拡張インベントリ機能を持たせてあります≫

 取り敢えず、銅貨(銅や鉛ではないらしい)が個人で使う最低通貨で、庶民も持ってる物。本体が丸いのが1ギルで四角いのが100ギル
 銀貨(素材は銀ではないらしい)は丸が100ギル銅貨10枚分で、四角が百枚分の価値で、多少は貯金のある庶民も、財布を軽くするために持ってる事もある物。
 金貨(金色の硬貨というだけで金ではないらしい)は、穴あきで丸いのが銀貨が10枚分の価値で、四角くアナがない物は銀貨百枚分の価値で庶民はほぼ見たことはないものらしい。
 1ギル1円と考えたら、
 丸い銅貨が1円、四角い銅貨が百円
 丸い銀貨が千円、四角い銀貨が一万円
 丸い金貨が十万円、四角い金貨が百万円?

 5円玉、50円玉や五百円玉はないんか。五千円札も。
 海外みたいに、25¢とセント か20ドル札もないんやな。

「この財布? 銀貨も金貨も入ってるで?」
≪あなたの所持金と貯金額を、この世界の貨幣価値に変換するとそうなります。他人には見せびらかさないことですね≫

 強盗や追い剥ぎに遭うと言うことやな。
 銀貨は財産の殆どを換金してある人や節制して貯め込んでる人は持っててもおかしくないけど、金貨は一般人はあまり持ってないらしい。例え店先で使っても、釣りがなく迷惑なだけとか。そら見せられんな。

≪重量も軽減措置をとってありますので、袋の中にある限り、取り出すまでは軽いでしょう?≫
「ああ。助かる。一束でこの重さやったら、大変なことになりそうやしな」

 大きな街に行けば銀行もあるらしいが、貴族や大商人御用達で、この世界の人は、資産運用や貯蓄利子で金を増やすという発想はあまりないらしい。
 庶民には、株式證券、約束手形なんかは縁がないそうで、利用しているのは大きな商売をしている人や貴族くらいだとか。

 見た目こそ普通のものだが、鞄にも服にも財布にも、防塵防水機能を付与してくれているとのことだったが、勿論、魔法レベルの低い一般人はあまり持っていないものだそうで。

「俺、怪しないか? 庶民の持ってない額の金を腰に提げて、魔力の低い人には使えない魔法を付与した服を着てるて」
≪旅商人や傭兵にはままある事です。道程の身の安全のため、財産を守るため、防御魔法のかかった着衣と重量軽減魔法のかかった袋を所持していることは。それらは高額なため、他の物が粗末だったりしますが≫

 そうか。最初に旅の必需品に金をかけるんやな。

 テントや焜炉コンロ、シュラフザックなんかに金をかけて、お手軽ゆるキャンプするヤツらみたいなもんか。

≪まあそんなような感じです≫

 なんか、投げやりな感じの返事が返ってきた。ちょっとちごたんかな。


 とにかく、ある程度金はあるみたいやし、抗菌作用のある素材に防塵防水魔法がかかった服も着さしてもろてるし、ファンタジー世界を満喫していきましょうかね? 

 一度、両腕を高く上げて伸びをし、林の向こうに山が見えてる方角を背にして、人が居そうな所を探して歩き出した。




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