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心を守ってくれた優しい人
🚫2 なんでもするから?
しおりを挟む揺れる景色の中で歪んだマクロンさんをよく見ようと、袖で目に溜まった涙を拭い、上体の一部を膝に乗せて、両手で頰を挟むようにして頭を固定する。
顔を近づけて、呼吸はしているのは確認出来た。
「⋯⋯う」
声が! 意識は浮上しそう。身体も、服に倒れた時の汚れ以外異常はないみたいだし。
「マクロンさん、大丈夫? 起きれる?」
「も⋯⋯か?」
「うん。うん。私だよ。ねえマクロンさん、直撃したみたいに見えたけど大丈夫なの? どこか痛いとか、苦しいとかない?」
頑張って笑いかけるけど、目の前で魔法攻撃を受けたのを見たショックと、いつも飄々と魔物や魔獣を避けてたマクロンさんの、初めての倒れた姿に、手が震えて涙が止まらない。
「そうだ、マナ、ヴィータ、マクロンさんのツラいところ、治してあげて?」
──大丈夫じゃない?
──そのまま放っておいても、すぐに起き上がれるよ
「みんな、冷たい!! どうしてそんな事言うの?」
──えー? だって
──ねぇ?
「モモ⋯⋯カ、も⋯⋯」
「なに? 何をして欲しい? どうしたら元気になれるの? お医者さんとか呼んで来る?」
ふるふるした弱々しい手を伸ばし、マクロンさんの大きな手が、そろりと私の頰に触れる。
「モモカ⋯⋯泣いて?」
「マクロンさんが倒れたのを見てびっくりしただけ。それよりも、マクロンさんは大丈夫なの?」
「⋯⋯あの、攻撃魔法を、無効化す、のに、ちょっ、魔りょ、使、い過ぎ、た、かな」
「マクロンさんが私に魔力や霊力を馴染ませたみたいに、私も分けてあげられたら、元気になれる?」
「そうだね。分けてくれる?」
「うん! うんうん。あげる、幾らでもあげるから、早くいつものマクロンさんに、元気になって」
首が取れるんじゃないかってくらいたくさん縦に振る。
でも、魔力操作は少し出来るようになったけれど、どうやれば、マクロンさんに馴染ませるように分け与えられるの?
「自分の中で流すのは出来るようになったんだけど、人に受け渡すのってどうやるの?」
新緑色の眼をこちらに向けて、口を少し開き、私の耳元に近づけようとするので、こちらから耳を傾ける。
「⋯⋯ぃ、キスしてくれる?」
「は、え!? キッ⋯⋯ええっ!?」
一気に顔に熱が上る。何言ってんの? こんな時に!?
焦る私を見て困ったように微笑むマクロンさん。
「手を繋い、で送れるなら、それでもいいよ? 以前してあげたように、抱き締めて密着しても、馴染ませられるなら、それでもいい。上手く出来ないなら、口移しが手っ取り早い」
ああ、そういう⋯⋯ でも、さすがに躊躇する。それで、本当に元気を分けてあげられるか解らないし、した事ないもんだから、想像するだけで焦る。
「あ、あのね、魔力の譲渡もそうだけど、キッ⋯⋯しゅもした事なくて、上手く出来るか自信ない⋯⋯」
さっきまで虚ろだったマクロンさんの緑の眼が、笑みに細められる。
さっきとは違う理由で震えながら、そろそろとマクロンさんに近づいていくと、私の頰に再びマクロンさんの手が添えられて。
さっきは冷たかったのに、温かい。少しは回復してるのかな。
「難しく考えないで、取り敢えずやってみ⋯⋯」
「こんの、恥知らずドラゴンがっ! 幼気で健気な乙女に、何させてるんですか、あなたは!!」
お顔がかなり接近した辺りで、マクロンさんの横っ面を何かが押しやり、首がゴキッとなった。
「え、マクロンさん、大丈夫!?」
「心配はありませんよ。これしきで死ぬような柔な身体はしていません、この方は」
私の膝に頭を乗せて横たわるマクロンさんの頭を押し退けて首が音がするまで仰け反らせたのは、先程丘の上で私の背後に突然転移して来た、イサナさんだった。
次話
🚫3 私の知るマクロンさんとそうじゃないマクロンさん
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