聖女も勇者もお断り🙅

ピコっぴ

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心を守ってくれた優しい人

🚫1 私の代わりに打たれた人

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「やめてーっ!!」

 私の叫びはマクロンさんを打ち貫く、風の刃と雷光を纏った火球が轟かせる音にかき消された。

 嘘! 嘘!! 嘘嘘嘘嘘嘘うそ!!

 マクロンさんが! そんな、有り得ないでしょ? どうしてここに居るの? どうして、私の代わりに攻撃されるの!?

「そりゃ、お嬢ちゃんを死なせちゃ使えないだろう? 親しい人が犠牲になるから、言うことをきかせられるんじゃないか。これで解っただろう? 大人しく⋯⋯」

 まだ、魔法士は何かを言っていたようだけど、聴いてなかった。

「マクロンさん!」
「はい?」

 走り出そうとしていた私の背後で若くやや高めな声がする。ちなみにマクロンさんやサヌルの声ではない。

 振り返ると、高めの身長、真っ白なローブと銀製品の装飾品に身を包んだ中性的な顔立ちの男性が立っていた。⋯⋯男性だよね?

「もちろん、男ですよ? 疑ってらっしゃる?」
「誰? ⋯⋯どっかで見たような⋯⋯」

 ていうか、どこから出て来た? さっきまでいなかったよね?

「急に現れたと思ってます? その通り。あなたに浸みている星竜の加護を目標に、転移して来たんですよ」
「嘘言えや、人間が、座標軸を固定した魔法円や公式咒紋も補助サポート術士もなしに単体で転移出来るかよ!」

 襲撃犯の魔法士──サヌルが怒鳴りつける。

「私をその辺の三流魔法士と一緒にしないでいただきたい」

「そんな事より!マクロンさんっ」
「はい、なんでしょう」

 いや、そうじゃなくて、あなた • • • じゃなくて • • • • • 城門近くで倒れた私のヽヽマクロンヽヽヽヽさんヽヽ、の、こ⋯⋯と⋯⋯?

「マクロンさん⋯⋯?」
「はい、なんですか?」
あなたも • • • • マクロンさん • • • • • • ?」
「はい。イサナ・シェル・マクロンと申します。今後もよろしく覚え置きくださいませ。竜妃さま」
「りゅうひ⋯⋯竜のお姫さま?」

 否定もせず肯定もせずにこやかに立つイサナさんが私のことを竜のお姫さまって呼ぶのは、星竜の加護を受けた特別な子供だったから?

 でも、今はそんな事どうでもいい!!


 襲撃犯の魔法士サヌルもイサナさんもその場に残して、倒れたまま動かないマクロンさんに駆け寄る。

 俯せてぴくりとも動かない。

「マクロンさん、マクロンさん!! 起きて! 生きてるよね? 私に衝撃緩和出来て魔素も分解吸収する防御魔法をかけるくらいだもの、自分だって使えるんでしょう?」

 頭を振らないようにそっと上半身を起こす。

 顔色は悪くないけど、白い。雷に打たれて風の刃に裂かれ、火球に灼かれ打ち据えられた筈だけど、焦げも切り傷もないから、防御系の魔法が効いていたはず。

 なのに、目を覚まさない!?

「ねぇ、起きて。ホントはなんともないんだよね? マクロンさん。起きてよ、なんでもするから」

 泣いてる場合じゃないし、普段滅多に泣かないから泣くつもりもなかったけど、囮様生活に疲れて怖くてツラかった時も泣かなかったのに、目を閉じて動かないマクロンさんが、よく見えない⋯⋯

 ポタッ

 涙が一粒、マクロンさんの頰に落ちた。



 次話
🚫2 なんでもするから?

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