聖女も勇者もお断り🙅

ピコっぴ

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自由民ギルド ロックウェル支部

⛔22 お出掛け(こっそり)

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 小鳥のドーンコーラスで目が覚める。

 日本のマンションで独り暮らししている時は、目覚ましか、近くの工事の音、車のクラクションなどで目が覚めた。
 両親と自宅にいた時は、少しだけ開けたカーテンの隙間から差す朝陽や、庭にやって来る雀やシジュウカラなどの鳴き声で目覚めてたっけ。

 両親が海外出張に行ってる間、また従兄いとこのお兄ちゃん夫婦が泊まりに来てくれていたけど、例の流行病で両親の帰国が困難となったため、正式にお兄ちゃん達が一緒に住むことになった。
 お義従姉さんは嫌いじゃないけど、新婚夫婦の近くに居るのがしんどくて、すぐ近くのマンスリーマンションに引っ越した。
 両親が帰ってくればいつでも戻れると思っていたし、誰にも干渉されず、新婚さんのウフフヤ~ンも見なくて済むので、気楽だった。

 それが、もう遠い日の事のように思える。
 この世界に召喚されて来て、まだひと月ちょっとなのに。
 そして、無能の巫女として、魔力頼りの囮にされていた環境から逃げ出して7日目の朝。

 まだ、薄暗い外を見て、決意する。


 ぴちょんやマナのおかげで手荷物はないし、身の回りのものもエコバッグに放り込んでおけば、劣化することなく持ち歩ける。

 ゆえに、この落人おちびと救済監理局の宿泊施設にも、何も置いておくことなくいつでもスッキリ綺麗な、ホテルの一室のようである。

 いつもの、駅前のファンションセンターミタムラのラフな恰好に着替え、寝間着変わりの長襦袢のようなローブはエコバッグにしまう。
 その際、ぴちょんやウィンのクリーニングも済ませてある。便利だね。いつもありがとう。

──こうやって、毎日のことなのに、都度感謝してくれるのって、モモカくらいだよね
──朝の祈り、とか眠る前の祈りとかで、まとめて感謝してくれる習慣の人は居るけどね
──都度感謝してくれるから、その度に魔力や澄んだ綺麗な霊気をもらえて、ボクらも綺麗になれるから嬉しいよ

 そうなの? 喜んでもらえてなにより。

 母方の祖母も父方の祖父母も、自然信仰の傾向があって、なんにでも感謝するクセがあった。忙しい両親に変わって面倒を見てくれていたので、私もその影響を少なからず受けていると思う。 

──いい事じゃん?
──なんにでも感謝できるって、心豊かに暮らせるよね

 祖父母を誉められているみたいで、嬉しい。

 職員食堂も受付も通らず、裏の、庭に面した水場へ行き、誰も見てないのを確認してから、みんな • • • を動員して、マクロン式(と精霊達は言うので)隠遁術を発動させる。

 こうすれば、周りからは見えなくなるし、気配は勿論、音も匂いも漏れないという。

 それでもなるべく音を立てないように気をつけて歩き、職員通用口から外に出る。
 偶々、通勤してきたサリーの横をすり抜けたので、誰もいないのに扉が開閉したとか言うホラーは起こらなかった。

 すれ違ったサリーも、あれ? 風? くらいのものである。

 そうして、私は南東の街道を独り、歩きだした。



 次話
⛔23 霧のかかる森

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