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今日から冒険者(仮)
🚯11 いいわけ?
しおりを挟む時間的には数分もなかったと思うけど、よほど苦しかったのだろう、肩で息をする贋マクロンさん。
その姿がブレて、予想通り、剣士のお姉さんに戻る。
「も、モモカ、試験だから殺す必要はないとか、言っ、てなかっ⋯⋯た?」
「私はそのつもりでしたけど、精霊が納得いかなかったようでして、ごめんなさい?」
謝る必要はあるのかないのか、判断がつかなかったけど、私の不殺の意志を反して、ぴちょんが攻撃してしまったのは確かなので、一応謝っておいた。
この親しい人に化けての精神攻撃、人によっては、トラウマになったり、殺人も辞さじの精神を生み出したり、あまりよくないんじゃないのかなぁ。
「いや、知人に化けて心を抉る攻撃を手段に選んだキミカも悪いだろう? 初心者のテストにそこまでやるか?」
あ、剣士さんのお名前、キミカさんって言うんだ。たぶん、最初に自己紹介されたはずだと思うけど、緊張してて頭に入ってなかった。
「そ、うだけど! あるのよ、魔族の精神攻撃に、愛する人とか、家族とか仲の良い友達の姿をして、反撃を躊躇わせるとか誘惑して闇落ちさせるとか。それに耐えられるかのテストと、今は無理でもいずれこういう事もあるわよーって、疑似体験させておこうかなって。まさか、こっちが安息の地に片足踏み込まされるとは思わなかったわ」
「お前こそ、初心者だと侮ったのが悪い。武器の扱いは才能と経験がものを言うが、魔法はセンスだ。魔力が高く内包魔力量が多ければ、例え初心者でも災害級の魔法を紡ぎ出す可能性はある。それを、トラウマに触れる可能性のある攻撃をした時点で、己に還ってくる覚悟をすべきだな」
何やらガヴィルさんもお怒りのようで。
趣旨としては、初心者に配慮のない手段を選んだことに対する憤りと、その手段を選んだ時点で、相手がどう反応しても受け止める覚悟が足りなかったってことかな?
「さっきの男性は、モモカの故郷の俳優なのだそうだ。この場で出て来るくらいだから、心の支えのような大切な存在なのだろう。そいつに凶悪な表情で攻撃されたら、柔な奴だとトラウマにもなりかねんぞ?」
「そんな奴は、魔物退治なんてクエストはこなせないわよ」
「それも一理あるが、やりようってものがあるだろう。相手によっては、入会試験で潰れるだろうが」
呆れ表情でキミカさんを見下ろすガヴィルさん。
「まあ一応、上には進言しておくわ」
肩で息をしながら、キミカさんは請け負った。
「本当はこの後、フロアボスと闘ってもらう予定だったけど、本当のダンジョン探索じゃないし、採集に関しては心構えと手順は上級者資格あげたいくらいだし、戦闘も魔法に限るみたいだけど文句つけようがないし、合格でいいわよね、ギルマス?」
キミカさんが振り返ると、岩場の蔭から、屈強そうな男性が姿を現した。
次話
🚯12 謝罪と激おこ精霊たち
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