聖女も勇者もお断り🙅

ピコっぴ

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今日から冒険者(仮)

🚯7 クエスト達成ですね?

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 ルゴの実は、太い木の幹や灌木に絡まるように伸びてつたのように張り付く蔓性の木で、草じゃなかった。

 胡椒や山椒のように密集して鈴なりに成っている。
 辛くて苦くて酸っぱいからか、鳥も啄まないし、蟲もついていない。
 蓼食う虫も好き好きとは言うけれど、これは好かれないらしい。

 熟したのを選り分けるのも面倒なので、精霊達に手伝ってもらって、房の全部の実が熟しているものを、陽の当たる木の上の方まで探してもらい、風の子に房の付け根から切ってもらう。

 おかげで、あっという間に籐籠いっぱいになった。

「これで、クエスト達成ですね!?」
「そうね。⋯⋯と、言いたいところだけれど、これは、初心者向けクエストであり、尚且つこのまま受注させてもいいか見極めるための試験でもあるのよ」

 剣士のお姉さんはニイッと、チェシャ猫のように微笑んで、一歩下がる。

 んん? もしかして?

「そうよ。初心者が、例え幻影でも怪我をするのだし、不測の事故に遭わないように監督官として随行するのも職務のひとつ」

「その実、試験管も兼ねてたって訳か?」

 ガヴィルさんは、ウェストのベルトに刺した魔石付きナイフに手を添えながら、私に近寄る。

「ここに下りてきた階段を見つけられるなら、自力で戻ってもらってもいいわ。見つけられるならね? ⋯⋯ああ、光や闇の精霊も憑いてるんだから見つけられるかもしれないわね」
「それじゃ、ある意味自力じゃないですよね? 私が、精霊魔術を使いこなしてる訳じゃないんだから」

 日本から、世界の殻を抜けてこの世界に降りてくる過程で、女神の祝福をもらって、精霊に好かれる体質になった。
 おかげで、自分で魔法の咒紋を覚えたり魔法陣を描いて発動させたり掌相を合わせて印を組む必要もなく、呪文を覚えて唱える必要すらなく、精霊達の好意で、私の望む結果を出してくれる。

 それは、きっと彼女達の合格基準には満たしていない。

 世界のことわりを構築維持し管理するシステムのひとつである精霊達の守護があるというのは、とても便利で都合よく最強に思えるけれど、精霊達が離れていったり、強制的に引き離されて干渉できない場に立たされた時に、自分では何も出来ない事になる。

 お手軽に最強チートなだけに、諸刃の剣でもあるのだ。

「それが解ってるなら上等よ。ここまでの採集作業も、乱獲するでなく次に繋げられる配慮、魔物を退治するのも草や木に影響の少ない術を選んで使っている環境保全の面でも、ベテラン級の考え方だわ。今すぐ上級者資格をあげたいくらいよ。あなたの自由民株は発行してすぐ高騰するわね」

 これぞ、副産物的な異世界知識チートと言えるかもしれない。
 尊敬される冒険者の理想像をライトファンタジー世界で読み込み、自分の中でこうあるべき姿がハッキリあったからこそ。
 後、環境問題で日々ニュースを賑わせている地球で育ったおかげもあるかも。

「いや、そんな環境で育っていても、己に活かせるか、そんな場面に遭遇した時に意識できるか、それらの知識をどう活かすかは、本人の資質にもよるだろう。それはモモカの善さだよ」

 ガヴィルさん、誉めて伸ばす教師ですか? ちょっと、いやかなり嬉しい。胸にジーンと来た。


「さ、お喋りはおしまい。最終試験は2つ。中ボスとラスボスを斃してちょうだい? 勿論、精霊達の守護を使って身を守っても、魔物を退治してもいいわ。それがあなたの精霊に特化した魔力の特性ですものね?」

 そう言って一歩後ろに下がった剣士のお姉さんは、木々の鬱蒼とした青黒さの蔭に消えてしまった。



 次話
🚯8 最終試験の準備
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