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【萌々香 Ⅰ】
🚱19 憑き無し
しおりを挟む水晶玉は光っている。でも、その中から蛍火のような精霊は出て来なかったし、女神の声も聴こえない。
──気にしない気にしない
いや、辛いとか悲しいとかはないけど、これでいいのかなって思ったり。
──別に、ニンゲン達の聖別の儀式なんか、僕らには関係ナイし、知られたくないんでしょ?
僕ら。この耳元で内緒話のように聴こえるのは、精霊の声だったの?
見守る人達もややざわつき始める。
「白い光は、無属性の生体術──身体強化、念動力や魔道具を使うのに長けた能力かと思われますが⋯⋯ 光が強く、潜在魔力も多そうですな。ですが、これは⋯⋯」
能力を知られたくないから、いいように使われたくないから、私的にはこれでいいんだけど、どうやら、喚び出された存在に精霊が憑かないのは、かなりイレギュラーな事なのね。
水晶玉の光が消える時、玉から温かな風が吹き、目深にかぶったままだったフードが背に落ちる。
愛唯が目を見張った。
「萌々香、あんたその髪⋯⋯」
僅かな色で真珠色の艶を放つ白銀に近い金髪が丸見えである。元々知っていた美土里はともかく、知らなかった愛唯は、目を見開いて驚いている。
「白い無色の髪──まさか月无?」
「精霊が⋯⋯」
「御遣い様が、憑き無しなどあり得るのか?」
ざわめきはどんどん拡がる。ひそひそ話でも20~30人が一度に話すとそれなりに騒々しい。
「あー、ぉほん!」
代表者っぽい男性が咳払いをすると、みんなピタッと黙った。
「魔力はお強いようですから、これから魔道具の扱いなどを追々訓練していけば良いでしょう」
私達の加護の息吹や固有能力については外で触れ回らないよう釘を刺され、この場は解散となる。
私達のというよりかは、私に精霊が憑かず、めぼしい能力がなかった事だろう。
──アイツら、目に見えないと解らないなんて馬鹿だよね
あちこちから、小さいクスクス笑う声がする。これも、他の人達には聴こえてないみたいだ。
さて、私の加護の息吹がどういったものなのか、固有能力はなんだったのか、知る機会を逃した訳だけど、この人達に使われる気はないので問題はない。と、この時は思っていた。
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