上 下
45 / 72
優しい大きな人達に、子供扱いされる私は中年女

ルーシェさんのご帰宅?

しおりを挟む

 最初は、ルーティーシアさんのお古のうち、シンプルなワンピースが主なレンタル衣装だったのだけど、最近気づいた。

 私のために、新調してるのだ。

 長い1枚布を飾りボタンで留めて、ベルトやサッシュでウエスト辺りを抑えるだけの簡単なヤツを、何着も。
 そりゃ、ルーティーシアさんのお古が着られればいいけれど、ドレッシー過ぎる。恥ずかしくて着られない。と、ゴネる事がどんだけ迷惑だったのか。
 お貴族様の衣装なら、総レースだったりウエディングドレスみたいだっても当たり前、恥ずかしくても我慢して着ないといけなかった。

 穀潰しの居候なんだから、恥ずかしいとか言ってないで、お風呂も寝間着もなんでも、与えられる物で我慢しなくちゃいけなかった。


 反省した私は、お夕食前のお着替えからは、ドレスでもレースやフリルがたっぷりでも、なるべくシンプルなのを選んで、出された服から選んで着替える事にした。

 反省して気落ちしてる私を不憫に思ったのか、お習い事は、より苦手なパッチワークキルト教室ではなくて、無心でサクサクいける刺繍になり、お昼ご飯には、デザートのタルトがゼリー寄せベリー盛り合わせの3種類と豪華なものだった。
 おやつで機嫌をとる辺り、まだまだ子供と思われてる模様。

 お習い事の間も、午後の絵本でまったりの時間も、ルイヴィークがピッタリ寄り添い付きだった。

 反省は引き続きしてるが、気落ちは浮上した。

 毛脚の長いふわふわ絨毯に直接腰を下ろし、ルイヴィークに凭れかかって絵本を写本していると、にこにこ顔のお母様が、サンルームに入ってきた。

「ヴァニラ。ウルフィグァン、ヴィッヒ、バル、クィルフシリアヴァルディツァイトイッヒンデル」
 わ、解らん。正しく聴き取れてるかも解らん。
 が、私に呼びかけた事、途中にルーシェさんのミドルネーム《クィルフ》が入っていた事は解った。

もう、4日会ってないのだ、そろそろお帰りになる頃かもしれない。

 雷獣討伐の後始末、とやらは無事に済んだのだろうか。
 クロちゃんのお仲間を、なるべく殺すことなく、元いた砂漠地帯に帰すと言ってたけど、上手くいったのだろうか。

「ルーシェさんがお帰りになるのですか?」
 勿論、通じない。が、ルーシェさんの名前は多少いい加減な発音でも解るはず。
 お母様は、満面の笑みで頷き、私の頭を撫でる。
 セリフなしの漫画で、私は子供じゃありませんって伝えられないかなぁ。やっぱりその方がいいような気もする……
 保護しなければならない年齢でもないとバレたら追い出されるかもしれないけどね。

 今写本している絵本は、イソップとかアンデルセンとかにある昔話みたいな感じの絵である。
 文字は解らないので、実話かフィクションかは解らない。
 でも、ま、文字を覚えるための訓練だからなんでもいいや。

 サンルームに陽が差さなくなり、夕陽になってくると、じんわりかいた汗を流して夕飯前のお着替えの時間である。一度、絵本と紙と画筆用の色棒を置き、お2階の自分に与えられたお部屋に戻る。

 メイドさんがちゃんとお湯を張って、踏み台も完備されていた。
 キトンみたいな楽ちんドレスを脱ぎ、湯に浸かる。

 日本みたいに外で洗わず、湯の中で天然ハーブの入浴剤に皮脂や汚れが溶け出し、髪と頭皮だけメイドさんに洗浄ウォッシュで洗って貰う。

 湯船からあがると、体はタオルドライ後バスローブをかけられ、髪はタオルに包まったまま、鏡の扉から寝室に入る。
 ドレッサーの前で、化粧水だの美容液だの刷り込まれ、最近は、同じ姿勢でお勉強したりお習い事したりするので、凝った肩や腰を、メイドさんの神の手でほぐされる。うは、ただで整骨院行ってるみたいだよ。

 本当に、お姫様待遇だよね。

 さて、反省した私は、並べられたイブニングドレスの中から、唯一肩や胸元、背中がそんなに出てない、若草色の脹ら脛までの長さのスカートがふんわりしたオーガンジードレスを選び、レースぴらぴらのショーツと共に身につける。
 メイドさん達が張り切って髪をハーフアップにしたり飾りをつけていく。

「え? なに? 今日は舞踏会でもあるの? 私は、参加しないよね?
 ねぇ? なんでこんなに飾りつけるの?」
 みんな、にこやかに作業していくが、誰も手を止めないし、説明もしてくれない。勿論、説明されても解らないけど。


 夕飯までまだ、時間があるのか、食堂には入らなかったので、ルイヴィークが足元に寝そべったまま、私はお行儀よくソファに座って、写本の続き。

 そのまま30分ほどすると、廊下が少しだけ賑やかな気がして、振り返ると、扉を家令のオジサンが開け、キラキラしい笑顔で、ルーシェさんが入ってきた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖女も勇者もお断り🙅

ピコっぴ
ファンタジー
何しに喚ばれたんか知らんけど ( 'ω'o[お断りします]o 【萌々香の場合】 子供の頃から、なぜか水辺が苦手で酷いと卒倒することもあった私は、水濠で清水に飲み込まれ、異世界に召喚された 『聖女』として でも、無色の私は『月无』──憑き無しとして捨て置かれた 後から聖女さまと呼んでも、誰が助けてなんかやるものか ※ヒーローの本文内での確定がやや遅めです 表紙は自筆 富士通のAndroidで、SONYのアプリSketch にて☝左手中指を使用

転生したら死にそうな孤児だった

佐々木鴻
ファンタジー
過去に四度生まれ変わり、そして五度目の人生に目覚めた少女はある日、生まれたばかりで捨てられたの赤子と出会う。 保護しますか? の選択肢に【はい】と【YES】しかない少女はその子を引き取り妹として育て始める。 やがて美しく育ったその子は、少女と強い因縁があった。 悲劇はありません。難しい人間関係や柵はめんどく(ゲフンゲフン)ありません。 世界は、意外と優しいのです。

空を飛んでも海を渡っても行き着けない、知らない世界から来た娘

ピコっぴ
恋愛
ルーシェンフェルド・クィルフ・エッシェンリール・アッカード=エリキシエルアルガッフェイル公爵は、慕ってくれるのは嬉しいが振り回されるのが難点の若い国王と、自称親友の幼馴染みで遠縁の宰相にイジられながら、国防の職務に、領地の管理に、毎日生真面目に取り組んでいる。 先祖返りの美貌と公爵位、魔道省の長という地位と領地の財産に群がる、肉食系適齢期貴族令嬢にはウンザリしていた。 ある日、月夜に領地への帰宅途中、領地の森の中で、国内では珍しい黒髪の少女を拾う。 同族の男に襲われていたのを助けたのだが、まったく言葉が通じない。 まだ、こんなに小さな少女を! 家長であり領主であり、国防の要職につく身ならではの庇護欲に、ついつい構い過ぎてしてまうが、控えようとしてもどうしても目が離せない。 よくよく調査してみると、渡界人だと判り、国王と国際協定委員会に報告しなければならないのにどうしても手放せず、生まれて初めて、協定違反と識りながら、隠し事をしてしまう。 さてさて、公爵さまの今後はどうなるの? 協定違反を犯しているとバレたら…… 『異世界ってやっぱり異国よりも言葉が通じないよね!?』のあちら側から見たお話です。 基本的に、本編がある程度進んだ後に、追い越さない程度の更新となります。

私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。
ファンタジー
今回は公爵令嬢に転生ですか。あ、でも子沢山の末っ子らしい。 ま、チートスキルがあるわけでもないし、普通の人生ですよって…え?ちょっと待って?番ですか?聖女ですか?花?なにそれ?……いやいやいや、記憶を『忘れない』で転生を繰り返してるだけの何の取り柄も無い私に、無理難題吹っかけないでくださいよ? 『忘れない』けど、思い出せない、このポンコツの私にどうしろと? ──3歳から始まる異世界見聞録。 龍にエルフに獣人に……その他もろもろ世界での目標は、成人まで生き延びる事。 出来れば長生きしたいんです。 ****** 3歳児から始るので、最初は恋愛的なものはありません。 70話くらいからちょこちょこと、それっぽくなる……と良いな。 表紙のキャラも70話以降での登場人物となります。 ****** 「R15」「残酷な描写あり」は保険です。 異世界→現代→異世界(今ココ)と転生してます。 小説家になろう。カクヨム。にも掲載しております。 挿絵というほどのものでは無いのですが、キャラのラフ画をいくつか載せていきたいと思っています。

彼氏が親友と浮気して結婚したいというので、得意の氷魔法で冷徹な復讐をすることにした。

和泉鷹央
ファンタジー
 幼い頃に住んでいたボルダスの街に戻って来たアルフリーダ。  王都の魔法学院を卒業した彼女は、二級魔導師の資格を持つ氷の魔女だった。  二級以上の魔導師は貴族の最下位である準士の資格を与えられ辺境では名士の扱いを受ける。  ボルダスを管理するラーケム伯と教会の牧師様の来訪を受けた時、アルフリーダは親友のエリダと再会した。  彼女の薦めで、隣の城塞都市カルムの領主であるセナス公爵の息子、騎士ラルクを推薦されたアルフリーダ。  半年後、二人は婚約をすることになるが恋人と親友はお酒の勢いで関係を持ったという。  自宅のベッドで過ごす二人を発見したアルフリーダは優しい微笑みと共に、二人を転送魔法で郊外の川に叩き込んだ。  数日後、謝罪もなく婚約破棄をしたいと申し出る二人に、アルフリーダはとある贈り物をすることにした。  他の投稿サイトにも掲載しています。

アラフォー王妃様に夫の愛は必要ない?

雪乃
恋愛
ノースウッド皇国の第一皇女であり才気溢れる聖魔導師のアレクサは39歳花?の独身アラフォー真っ盛りの筈なのに、気がつけば9歳も年下の隣国ブランカフォルト王国へ王妃として輿入れする羽目になってしまった。 夫となった国王は文武両道、眉目秀麗文句のつけようがないイケメン。 しかし彼にはたった1つ問題がある。 それは無類の女好き。 妃と名のつく女性こそはいないが、愛妾だけでも10人、街娘や一夜限りの相手となると星の数程と言われている。 また愛妾との間には4人2男2女の子供も儲けているとか……。 そんな下半身にだらしのない王の許へ嫁に来る姫は中々おらず、講和条約の条件だけで結婚が決まったのだが、予定はアレクサの末の妹姫19歳の筈なのに蓋を開ければ9歳も年上のアラフォー妻を迎えた事に夫は怒り初夜に彼女の許へ訪れなかった。 だがその事に安心したのは花嫁であるアレクサ。 元々結婚願望もなく生涯独身を貫こうとしていたのだから、彼女に興味を示さない夫と言う存在は彼女にとって都合が良かった。 兎に角既に世継ぎの王子もいるのだし、このまま夫と触れ合う事もなく何年かすれば愛妾の子を自身の養子にすればいいと高をくくっていたら……。 連載中のお話ですが、今回完結へ向けて加筆修正した上で再更新させて頂きます。

死霊王は異世界を蹂躙する~転移したあと処刑された俺、アンデッドとなり全てに復讐する~

未来人A
ファンタジー
主人公、田宮シンジは妹のアカネ、弟のアオバと共に異世界に転移した。 待っていたのは皇帝の命令で即刻処刑されるという、理不尽な仕打ち。 シンジはアンデッドを自分の配下にし、従わせることの出来る『死霊王』というスキルを死後開花させる。 アンデッドとなったシンジは自分とアカネ、アオバを殺した帝国へ復讐を誓う。 死霊王のスキルを駆使して徐々に配下を増やし、アンデッドの軍団を作り上げていく。

異世界でタロと一緒に冒険者生活を始めました

ももがぶ
ファンタジー
俺「佐々木光太」二十六歳はある日気付けばタロに導かれ異世界へ来てしまった。 会社から帰宅してタロと一緒に散歩していたハズが気が付けば異世界で魔法をぶっ放していた。 タロは喋るし、俺は十二歳になりましたと言われるし、これからどうなるんだろう。

処理中です...