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Ⅲ.女神の祝福を持つ少女たち

10.アリアンの光弾と浄化の炎──浄化と昇華

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≪アリアン、やる! シオ、守る・光投げる≫

 やる気満々で、両手を挙げる。右手と左手の間に光が集まり、最初は蛍火のような、それがあっという間にひと抱えほどの大きさになる。

「お、おお、純粋な光霊の集合体ですな」

 木霊さんと一部が繋がっているコールスロウズさんには、アリアンロッドの手に集まったのがただの光る魔力ではなく、世界の元素、光霊達だと解るらしい。
 その分、ロイスさん達よりも、感激度が大きい。

「さすが、名持ちの大精霊さまですね」

 メイベルさんも、アリアンロッドの光霊を集めるスピードに感心している。

「あ、アリアン、ちょっと大きすぎない?」
《大丈夫ヨ。ここから収束していくカラ》

 小妖精ピクシーサイズのサヴィアンヌがアリアンロッドに寄り添い、コツを教えている。

《その集めた光霊ヲ、もっと圧縮スルノ。集めた光霊はそのまま。ギューッとネ?》
≪ぎゅー?≫

 大きな蛍光灯が小さなLEDライトになるような感じで、縮みながらどんどん眩しさを増していく。

《コールスロウズとオークスが弱らせた闇落ちと、ソレに喰われてた死体。よーく狙ってネ?》

 元素の光霊を集めた魔力球に風霊が混じり、光を放つだけでなく、静電気だろうか、パリパリ放電しながら纏まっていく。

 アリアンロッドがはりきっている分、かなり魔力を吸われる……
 その代わり、霊力は、アリアンロッドの風霊、光霊、水霊としての霊気を使っているらしい。私からは、精神力を伴う魔力と、私を媒体として大気や大地から吸い上げるマナだけを流用していた。

 全身──特に頭部に、怠さと、貧血のような末端が冷たくなっていくような不安な感じを受ける。
 だんだん胸がキリキリ痛み苦しくなってきた時、
《アリアン、魔力使いすぎヨ。もっと細く細く、絹糸のような柔軟で強い、細く艶やかなイメージで、しなやかに引き出すノヨ》
≪き、絹糸? 細く強いジューナン……≫
 サヴィアンヌがアリアンロッドに、イメージする力が大事なのだろうが、やや曖昧な指導を行う。
 合成精霊の、生まれて意思を持つようになって数ヶ月のアリアンロッドに、理解できるのかしら。

≪イク! 外さない≫

 以前、鍛冶屋の前で聞いたような、ストロボをたくような音を立てて、アリアンロッドが投げつけた光の弾は、闇落ちの小動物と死体の上に弾けた。

「こ……れは、もしや……」

 コールスロウズさんのうわずった声と、メイベルさんの息をのむ気配が感じられる。

 魔力弾が放たれ弾けると、苦しさはなくなった。

 光霊は穢れを祓い、漂う瘴気を浄化していく。
 魔力弾から放たれていた静電気のような放電現象は、闇落ちの小動物と死体を焦がし、やがて燐光を放つ焰を立てて燃えだした。

 物理的な赤い火と、霊的な燐光を帯びた蛍光っぽい青緑の焰。

《前よりもはっきりと穢れてて、瘴気も発生していたケド、その分、霊気とマナを高くシテ、浄化力を高めたカラ、イケたようネ。
 ……シオリ、大丈夫? 顔色悪いワ。ウ~ン、次はもっと、魔力を吸われるのを抑えないとネ》

 サヴィアンヌは、私に話しかけておきながら、どこか独り言のように呟いた。

「大精霊様、妖精王様。誠に素晴らしい事です。穢れを祓うだけでなく、瘴気も浄化され、闇落ちは昇華されましたな」
「昇華?」

 本来は、固体が液体になるのをすっ飛ばして一気に気体になる事や、転じてある状態から更に高度な状態に変化する事をいう言葉だと思うけれど、ここでは、闇の侵食属性であった闇落ちの小動物が、光の精霊に浄化された事で、動物の聖霊に変わったのだという。

《ちょっとやり過ぎだったワネ、アリアン。聖霊を作るほど、霊気やマナをこめなくていいワヨ》
≪セーレー? 精霊とはチガウ?≫
《ちょっと違うワネ。森の精気や、人間や動物の霊魂や残留思念なんかが、女神や精霊の祝福で、聖属性の力のある霊魂になる事ヨ》
 アリアンは、聖霊と精霊の中間的な存在ネ?

 サヴィアンヌは笑いながら、骨まで焼失した闇落ちと、綺麗に浄化された人骨を確認しに行く。

《もっと精進スレバ、シオリフィオリーナも、巫女に負けナイ、イエ、巫女や聖女なんかよりもモット上のミコになれるかもネ?》




 


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