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誰の手を取ればいいの

17.謝罪と報告

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 ユーフェミアに帰宅を告げずに馬車留めまで来てしまったが、一応帰るだけだからファヴィアンを訪ねると言ってあったから諦める事にしたシスティアーナは、ファヴィアンに向き直る。

「ここまでお送りくださり、ありがとうございます」
「いや。当たり前の事だから」

 ニコリともしないが、目元が柔らかくなった気はする。これも通常運転だ。

「あの、わたくしをお探しだと伺ったのですが」
「ああ、あまりいい話でもないのだが」

と前置きをして、軽く頭を下げるファヴィアン。

「まず先に謝っておく。今日は助かった。本当に、殿下は無理をなさるから、その内倒れるのではないかと危惧していたのだ」
「いいえ。お役に立てて良かったですわ」
「それと、用件は、あまり人前で話すものでもないので、伝言もせず済まない。改まった事でもないのだが、一応断っておいた方がいいかと思ってな。
 オルギュスト──愚弟が迷惑を掛けた。諌められず軌道修正も出来ず、申し訳なかった」

 今頃? と思わなくもないが、人目を避けて改めて謝罪する場を設けなかったので仕方ない事として受け止め、顔を上げるように促す。

「もういいのです。寄り添える夫婦になることは諦めてましたから、婚約破棄だと言われても、自分でも驚くほど傷ついては居なかったのですから。どちらかと言えば、やっとかと。ですから、お気になさらず」
「済まない。それに関してなのだが、システィアーナ嬢から、愚弟に贈られた物が屋敷には遺されているのだが、アレが使うとも思えないし、処分して施設にでも寄付しようかと思って」
「まあ、態々わざわざ断りを入れに?」
「置いていても利用されず無意味になるので処分するのは仕方ないのだが、後から知ると気分を害す結果になりかねないと思い、先に断っておこうと思った」
「お気遣いありがとうございます。オルギュスト様への贈り物を他の方が使うものでもないでしょうし、使い途があるのなら喜んで。有効にご活用ください」
「恩に着る」

 律儀な方だと、改めて微笑み返し、侯爵家の馬車に乗り込む。その際添えられたファヴィアンの手は、少し冷たかった。

(緊張されてるのかしら? 怒ったりしませんのに)

 馬車が王城貴族用の正門から出て見えなくなるまで、ファヴィアンは見送っていた。





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